戦略や地政学の視点から国際政治や社会の動きを分析中


by masa_the_man
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大英帝国の終焉とアメリカ帝国の終わり

今日の横浜北部は昼まで日が照ってましたが、午後からやはり曇ってきました。しかし上着が不要になりましたねぇ。

さて、久しぶりに「アメリカ衰退論」についての議論を。

この著者は最近話題の『帝国の亡霊』という本を書いた、アフリカ系(二世)のイギリスの現役の国会議員という珍しい立場の人です。

その本は以下の通りです。

Ghosts of Empire: Britain's Legacies in the Modern World
by Kwasi Kwarteng

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おそらくこの話題の本の中の議論をもとにした記事でしょうが、論より証拠、まずはこの意見記事を読んでみて下さい。

===

大英帝国の終焉とアメリカ帝国の終わり

●「アラブの春」やイランの核武装への動き、それにシリアで続く内戦などの最近の出来事が示しているのは、アメリカの「世界の警察官」としての役割が(終わったわけではないが)弱まっている、ということだ。

●その証拠に、オバマ大統領自身は去年のスピーチで「アメリカは、世界の抑圧が行われている場所の全てに介入できるというわけではない」と認めている。

●私に言わせれば、現在のアメリカの立場はイギリスが1945年に直面していた状況とそっくりだ。

●過剰債務がありながら、国民保険のような社会システムを確立しようと躍起になっているため、帝国を維持することができなくなっていた点だ。

●一世代前に世界の海を支配していたイギリスはこの時にはすでに疲弊しており、帝国を維持しようという気も失せていたのだが、現在のアメリカもまさにそのような自信を失っているのだ。

●アメリカ人は常に自分たちのグローバル覇権については、あまりハッキリした考えは持っていなかったのである。

●現在のアメリカの撤退への動きは、伝統的な孤立主義の考え方が動機になっているのではなく、むしろ現実的な必要に迫られてのものだ。

●第二次大戦後のイギリスのように、アメリカも自身の「帝国」(そもそもやる気もなかったのにかかわらず)を維持するだけの金融面での力を持っていないのであり、

●赤字と借金は、他のいかなるイデオロギーよりも「帝国の夢」を覚めさせるのに効果的だったのだ。

●私の両親はイギリスの国力が衰退していた時期にアフリカの黄金海岸(現在はガーナ)で育ち、しかも私は現在イギリスの国会議員の一員であるので、この帝国の衰退という現象については一言いえる資格があると言えるだろう。

●ガーナ建国は1957年であり、これはスエズ危機の翌年のことなのだ。

●第二次大戦は大英帝国の終焉であったと解釈されているように、将来の歴史家たちは、2008年の金融危機がアメリカ帝国の終焉の始まりだと見るようになるかもしれない。

●しかも米軍の撤退(とくに中東からのもの)は、世界全体を不安定かつ不確実にする可能性があるのだ。

●もちろんアメリカは「歴史の終わり」という矛盾したタイトルの記事が書かれた1989年当時より、その国力がはるかに小さくなっている。

●アメリカはそもそもそれほど帝国に熱心でなかったと見られていた。たしかに日本やイギリスやドイツ(そして最近にはサウジアラビア)には基地をもっているが、それでも海外の土地を直接的かつ永続的に統治しようとはしておらず、むしろそれは「ソフト帝国主義」と呼べるようなものだった。

●冷戦期を通じてアメリカは自国のことを歴史上に見られなかった「自由世界のリーダー」という道徳面での大胆な意識を持っており、直接的な統治ではなく、同盟国に軍事力をたより、社会・経済面で支援をするようなことを行っていた。

●アメリカがイラクやアフガニスタンやリビアのように、軍事的に他国を直接統治したのはここ10年間だけだ。

●もちろん「世界の警察官」というのは「帝国」でなければ務まらないものだが、アメリカ国民自身はこれをあまり認めようとはしていない。アメリカ人の心の中には、「自分たちはイギリスのような帝国ではない」という嫌悪感があるのだ。

●ところがネオコンたちはアメリカに「イギリスのような帝国主義を実行しろ!」と言い続けてきたのである。

●たしかに建国以来のアメリカの対外政策にあるのは、「複雑な国際政治に関わり合いたくない」という意識だ。

●アメリカの歴史の中で最もよく引用される警句は、ジョージ・ワシントン初代大統領の「外国でのやっかいに巻き込まれるな」というものだ。実際のワシントンの退任演説にはこの言葉はまったく出てこないのだが、それでも彼の後輩たちはこの警句に注意を払っていた。

●たとえばウィルソン大統領は民族自決を訴え、ヴェトナム戦争はアメリカ国民に自分たちの国力には限界があることを教えたのだ。

●ところが今日のネオコンたちは、国民に非常に魅力的に聞こえる主張をくり返している。「歴史の終わり」というメッセージはリベラルな資本主義と民主制の圧倒的な存在をたたえた23年前のものなのだが、そこから時代はオバマ大統領によるアメリカの能力の限界を認める弱々しい宣言までつながっているのだ。

●アメリカの帝国主義者的な行動に終止符を打ったのは金融危機と負債であり、たとえ経済がこれから復活したとしても再び2003年のイラク侵攻のような行動をするとは思えない。

●大英帝国の歴史からわかるのは、いかなる形の帝国主義も間違ったものである、ということだ。

●第一に、帝国には莫大なコストがかかる。しかも中国やその他の新興国の勃興は、アメリカが彼らと比べて相対的に国力を落としているということを意味するのだ。

●そしてアメリカの国力はたしかに1945年や1989年の頃と比べれば低い。この事実だけで、アメリカはこれから多極的な行動しかできなくなることがわかるのだ。

●第二に、イギリスが思い知らされたように、帝国の維持のためには多くの計算やあまりにも多くの知識(と経験も)が必要とされるのだ。

●アメリカはこのような教訓を、イラクとアフガニスタンで得たはずである。

====

ハーヴァード大学教授のファーガソンとはちょっと違った角度からアメリカの帝国(の終わり)を論じているという意味で非常に興味深いかと。

ただし当時のイギリスと現在のアメリカがどこまで比較できるのかについては少々議論の余地はありますが・・・。
Commented by 太郎 at 2012-04-19 10:46 x
”Ghosts of Empire"面白そうですね。早速、手に入れます。
いつも、興味深い紹介感謝します。
とりあえず、一言コメント。
1.「アラブの春」が持て囃されたが、倒された独裁政治のほうがどんなに居心地が良かったか、今人々は臍をかんでいます。(知人のエジプト人)
2.オバマのスピーチ「米は、全てに介入できるわけではない」
共和党の今回の候補者たちは、もっと自国第一主義へ。
Japan Times の最近のRobert Dujarric氏が、論説を載せております。(日付が、今すぐ出ませんが最近です。)
3.中国は今、前近代のどろどろした権力闘争の真っ最中。G2などというおだてに乗らないよう、気をつけるのが一番。(中国の知人)
奥山先生のような、真に賢い才能はないが,年を取った分、世界を長く見てきました。国際情勢のキーワードは、"CHAOS""UNPREDICTABLE"で、それを乗り切るためには、知的興味を絶やさないこと。そのためには、奥山先生のゼミへの参加を、元気な方にはお奨めします。(私は脱落しましたが。)
by masa_the_man | 2012-04-18 21:57 | 日記 | Comments(1)