カーナビは使うな!:テクノロジーの落とし穴 |
さて、テクノロジーと社会について、シンガポールの新聞の記者が面白いことを書いていたので要約します。
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カーナビは使うな!――GPS機器はわれわれをダメにする
Byウィリアム・チョオン
●車に乗る人、ジャングルの中をハイキングをする人、そしてミサイルを正確に打ち込む軍など、GPS関連機器というのは現在の人間にとって欠かせないものになりつつある。
●たしかにGPSで動くカーナビというのは、とくに初めての土地に来た人にとって神からの贈り物というべきものであろう。行き先を入力すれば、そこまで正確に案内してくれるからだ。
●TomTomというサイトでは、映画「スターウォーズ」に出てくるヨーダの声で案内してくれるカーナビを売っているほどだ(「君は間違った道を選んだ・・・ダークサイドの方に」という声が出る)。
●ところがGPS関連機器にはまったく問題がないわけではない。
●今年(二〇一二年)の二月はじめに、アメリカの高速道路安全局は、ドライバーたちにたいして、カーナビのような機器を備えた車は運転の注意の妨げになるという警告を発表している。
●また、GPSは人間が古くから持っていた常識感覚を狂わせることがわかっている。
●たとえば二〇〇八年にある団体の旅行者たちが、何台かの車で大量に迷子になったという事件があったが、これはカーナビを信頼しすぎて舗装されていな道を進んでしまい、最終的に崖のそばで車が動かなくなってしまったというものだ。
●私も同じような経験をしたことがある。私は徴兵経験があるために方向感覚には自信があったのだが、親戚とニュージーランドを車三台で旅行中にカーナビを使ってしまい、舗装されていない道を案内されて迷子になってしまったことがある。
●方向感覚というのは、人間のその他の「感覚」やスキルと同じように、使わなければ弱まって行くものなのだ。
●たとえば一九九〇年代にイギリスのタクシーの運転手について行われた調査では、ロンドンの複雑な道を覚えているかれらの脳の「海馬」と呼ばれる部位が、他の人々よりも大きくなっていることが判明している。
●この調査研究を行った神経科学者は、このタクシー運転手たちがカーナビを使い始めることを心配していた。なぜなら使い始めてしまうと脳神経的に「大きな影響を与えることになる」からだ。
●もちろんだからといって、私はGPS関連機器の使用をやめるべきだと言いたいわけではない。
●しかし私はそれでも「地図を使った時間のかかる、方向感覚を鍛える作業を続けるべきだ」と言いたいのである。
●ドイツのある心理学者によれば、人間にとって方向感覚に頼ってナビゲーションするためのスキルというのは、頭を使う複雑なプロセスなのだ。そしてこれを使っていないと、われわれはその感覚を失ってしまうことになり、それを取り戻すにはかなりの時間がかかるようになる、というのだ。
●さらに重要なのは、地図を使って目的まで行くという古いやり方は、実は創造性が重視される現代の社会経済状態にとって決定的に重要となる「抽象的な考え方」(abstract thinking)を身につけるのに最適の行為なのだ。
●地図の歴史学者であるアーサー・ロビンソンによれば、地図を読んで現地まで行くという行為には「現実を縮小して分析的な空間を進む」という意味で非常に「抽象的な考え方」を獲得するのに都合が良いという。
●これらはすべて何を意味しているのだろうか?
●その答えは、われわれの脳のためには、GPS関連機器の使用をやめて、旧来の地図を使うようなやりかたを続けるべきだ、ということだ。
●あるシンガポール人がマレーシアの山でハイキングをしていた時に、地図とコンパスを持っていたのに遭難したことがある。
●その時の地元の救助隊は何も持たず、ジャングルの中の木の生え方や、コケが生えている場所を見ただけで方角を知って救助に向かったのだ。
●人間のナビゲーションスキルについて書いたある著者によれば、これはロールス・ロイスを買えるだけの財力をつけた人間は、それを買える頃になると運転手にその車のキーを預けて運転を楽しまなくなってしまうというパラドックスと一緒だとしている。
●つまり、人間の楽しみは知らない土地を注意しながら進むことにあるのに、それをすべてGPSに任せてしまうのはもったいないのでは、ということだ。
●マーク・トウェインは、自分が何度もミシシッピー川を航行している内にこの土地を知り尽くしてしまったたためにその川の魅力が半減したと記している。
●これと同じで、ある場所に行く方法を解明するテクノロジーを獲得することはたしかに便利なことではあるが、それでも自分の持っている自然な感覚を使うほうがまだマシだ、ということなのだ。
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テクノロジーは便利にする代わりに、人間の一部の能力を失わせてしまう、ということですね。

