「創造性」はどう発揮されるのか? |
Imagine: How Creativity Works
by Jonah Lehrer

「創造性」はどう発揮されるのか?
by ジョナー・レーラ―
●マンガに出てくるような、電球がついた瞬間の「ヒラメキ」というのは人間の頭の中でどのように生まれるのだろうか?革命的な発明を生み出す「きっかけ」のようなものはあるのだろうか?
●ジャーナリストである著者がこの本の中で使う古典的なケースは以下の通り。
●ナイキのキャッチコピーである"Just Do It"は、広告会社の創設者であるダン・ウィーデンが、死刑囚となったゲイリー・ギルモアが、死刑執行の直前に「さあ、やろうぜ」(Let's do it!)と言って執行人たちをいらつかせたというエピソードを、たまたま仕事仲間がその話を書いたノーマン・メイラーの本について語っていたときに思い出したことによって思いついたもの。
●ポストイットは、3Mのエンジニアであったアーサー・フライが教会で賛美歌を歌うときに、歌詞を書いた本から栞が落ちてしまうことが不満だと感じていた時に発明。ちょうどその頃に開発中の紙用の弱い粘着力の糊を、栞の代わりに使うことを思いついたという。
●世界的に有名なバービー人形は、マテル社の創設者であるルース・ハンドラー女史がスイスへ旅行中に、タバコ屋に飾ってあったブロンドの人形を見て思いついたためだと言われている。
●彼女はドイツ語がしゃべれなかったためにわからなかったのだが、この人形はどうやら男性向けの卑猥な想像力をかき立てるセックスシンボルとして売られていたものであり、彼女はその代わりにそれを女の子向けの人形にして世界的大ヒット。
●著者によれば、一八世紀の社会学者であるデヴィッド・ヒュームは発明というのは往々にして「組み替え」であり、ある分野のものを全く別の分野のものと組み合わせることによって生まれるものであると論じていたという。
●その証拠に、ヨハネス・グーテンベルグはぶどう搾り機の知識を印刷機につかって人間の知識を広めることに貢献し、ライト兄弟は自転車屋だったのであり、その技術を最初の飛行機につかった。マジックテープの開発者は、イガイガのついた植物の実が自分の犬の毛にくっついていたのを見て思いついたという。
●これらのケースからわかるように、著者が指摘するのは、「劇的に新しいコンセプトというのは、単に古くからあるコンセプトを新たに組み合わせたもの」ということ。
●InnoCentiveというサイトで示されているのは、科学で難問とされていた問題の解決は、その分野では主流のところにいなかった人々によって行われてきたという。
●著者によれば、「分子生物学の学者は自分の分野に革命を起こしたわけではなく、化学者が新発見をした。また化学者が分子生物学の問題を解いている」ということ。
●つまり本当の創造性というのは、取り組んでいる専門の問題から一歩引いてアウトサイダーとしての視点をもち、やや別の角度から見ることによって生まれるらしいのだ。
●だからこそ創造性を発揮するには頻繁に旅行して思考を解き放つことが効くわけであり、(社会のルールをまだ学びきっていない)若者が年長者たちよりも創造的であることが多いのだ。
●本書の後半では、「グループではイノベーションはどのように発揮されるのか」という問題について論じている。
●著者によれば、ブロードウェイのミュージカルを調査したある研究で出ているのが「コラボレーター同士の人間関係が、舞台を成功させる上で最も重要な要素である」ということ。
●ジョブスが創設したコンピューターアニメの会社であるピクサーもその典型的な例だ。この会社では郵便受けやカフェテリアなどが会社の中央にまとめられ、人間が日常的によく出会うように工夫されていた。「最高の出会いは会社の廊下や駐車場でしたよ」とはこの会社で働いていたプロデューサーの弁。
●著者は創造性を発揮させるための「環境」の重要性についても言及している。つまり、想像力は都会のような様々な文化が地理的に近いところで互いに混じり合ったところで発生する、ということだ。
●そしてこの都市生活の「近さ」は、インターネット上における「近さ」と同じ意味で創造性の発揮に貢献するという。
●著者は結論として、「自分の好きなことだけ集めてリンクするだけでなく、われわれはいつもと違ったアイディアや人に積極的に出会わなければならない。ネットは可能性にあふれたスゴい存在だが、今われわれがやらなければならないのは、それを現実化することである」とまとめている。
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結論はまあ当たり前というか、昔から言われていたことの言い直しという部分もありますが、使われている例がけっこう面白いですね。
本文も280ページほどなので、もしかしたら日本でも翻訳されるかも?