砲艦外交の復活:その4 |
さて、またまた昨日の続きを。なかなか終わりません。
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●新しい船が加わっていないあの北朝鮮でさえ、対艦ミサイルを装備したことによって火力は上がっており、沿岸部隊にサンオ型潜水艦の数を加えて拡大している。
●東アジアで唯一、過去二十年間、海軍力にほとんど変化がないのがフィリピン。
●このように各国で海軍の能力が上がってくるにしたがって、砲艦外交の使用頻度も上がってくることは確実だ。
●とくに中国は「アメリカに囲まれている」という恐怖感があるため、それを打破しようとして海軍の動きを活発化させているのだ。それに従って周辺国との摩擦が生じ、それがめぐりめぐって砲艦外交の循環を促進している。
●ところが東アジアの軍備増強は、紛争の頻度も一緒に上げているわけではなく、過去30年間の国家間での紛争は、比較的平和な状態が続いている。
●その理由は、彼らが外国との戦争をなるべく避け、経済発展に集中しようということになっているからだ。
●ところが彼らは実際の軍事行動をしない代わりに、砲艦外交を使うことによって、不満であることを他国にたいして意思表示するようになったのだ。
●よって、外交的には厳しい環境になることはこれからも予測できるのだが、実際の軍事衝突は避けようという機運は残っているのだ。
●この外交に海軍が使われるのには理由がある。それは陸軍のように部隊を現地に残すようなことがなく、船だけでどこにも出現して、その場をすぐに抜け出すこともできるからだ。つまり船を使ったほうが政治家にとっての選択肢が増えるからだ。
●また、海で起こったことはトンキン湾事件でもわかるように、メディアを扱うという面でも便利だ。なぜなら海の上というのは、何かことが起こったあとでもほとんど形跡が残らないからだ。
●まとめると、砲艦外交の増加は、そのまま軍事衝突の増加にはつながらない。なぜなら軍事衝突を避けたいがために、表現する手段として砲艦外交が使われるということだからだ。
●したがって、最近起こっているこの地域の紛争は、いずれもが「表現的」で「目的や狙いのあるもの」なのだ。
●ただし「天安」沈没事件は、このようなカテゴリーには当てはまらず、きわめて戦闘的な海軍力の使われ方だった。
●その他にも特徴として挙げられるのは、「非砲艦外交」という形で、軍以外の艦船による外交が盛んになっているという点だ。
●その一例が去年の5月から6月にかけて起こった、中国の調査船によってベトナムとフィリピンに雇われた船が敷いていたケーブルを切断して事件。
●砲艦外交というのは、他の脅しと同じように、使えば使うほど実際の効力が少なくなってきてしまうもの。
●結局東アジアでは1988年に中国とベトナムがスプラトリー諸島で実際に死者が出てからは本格的な衝突は起こっていない。
●ところが軍備を増強している周辺国が、段々と「武力を使わない」という最低限の規範をこわしていくことも考えられる。そこが一番問題であろう。
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以上です。かなりケースが紹介されており、訳しててもチェックするのが大変でした。
結論としては、砲艦外交は増えているが、実際の軍事衝突はまだ起こっていない。でもこれから心配だ、ということでしょうか。