戦略や地政学の視点から国際政治や社会の動きを分析中


by masa_the_man
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28

進化心理学による「人類は戦争が好き?」論

昨日の山田氏の発表に触発されたというわけではないのですが、最近とても面白い記事を見つけましたのでその要約を。

====

●元アナーキストのカナダ人のP氏、彼は若かりし頃、両親に「警察はいらない、政府機関が逆に社会問題の元凶だ」と主張。

●ところが彼の住んでいた平和なモントリオールで、一九六九年一〇月一七日に暴動や放火や盗みや殺人が大量に発生。原因は警察や消防員をはじめとする公務員がストに入ったから。

●これをきっかけに、P氏は人間の性質そのものに興味をいだき、まずは言語、そして次に進化心理学(evolutionary psychology)を提唱するようになった。

●彼の主張は、人間の精神面での機能(感情、ものごとの決定判断、そして画像認識など)というのは自然淘汰によってつくられてきたものだ、というもの。

●彼は「若い頃から教育すれば人間はいくらでもつくりかえられる」とする社会エンジニアなどには真っ向から反対。理由は進化のプロセスの中でわれわれの心の中に残るものを無視しているから。

●彼の新刊本では、人間の最も根源的な性質である「暴力」について議論。

●この本の中で、彼は数千年間を経て人間の暴力の頻度(殺人件数、戦争の犠牲者数など)は劇的に落ちたと指摘している。

●一般的な進化心理学の原理からすれば、人間の本質にはすでに古代からの暴力の傾向が備わっていることになるために逆に反証になるのでは、と思える。

●ところがP氏は「人間の脳は環境によってかなり広範囲に反応を変えることができる」と論じている。

●きっかけは彼自身の元々の専門である言語だ。不規則動詞の研究をしている際に、彼は人間の脳の中に言語について二つの機能を発見した。単語帳のような記憶装置の部分と、要素をいろいろと構成して意味をつくりあげる部分である。

●彼はここから「言語には生物学的なルーツがある」と確信。結論としては、「言語は自然淘汰の際につくりあげられてきたものである」となる。

●この主張が認められ、彼は学者としても成功したが、最新刊では暴力の発生率を歴史ごとに図式化して並べており、たとえば一四〇〇年頃のイギリスでは、殺人発生率が現在のそれよりも100倍多かったという。

●彼は二〇〇六年に「あなたが人類の未来に楽観的な理由は?」というテーマでエッセイを書くように頼まれたときに「暴力の低下です」と論じたら注目を浴びた。

●それに賛同する研究結果が世界中から集まるようになり、彼はこれについて本をかかねばならないと思ったらしい。その結果が今回の新刊だ。

●人間の暴力が減り始めたのは、数千年前に最初に国家が誕生した時からだという。それ以来、その率は落ち続けているというのが事実らしい。

●もちろん20世紀には両大戦で大量の人が死んだが、それでも彼は自身の議論の反証にはならないという。その二つの戦いは例外的な事件だから、というのが彼の弁。

●人間の暴力が減ってきたのは「歴史」と人間の「進化する心」が相乗効果を上げているからだとか。

●「人間の本質というのは複雑ですね。暴力に向かう傾向もありながら、共感や協力、自制への傾向もあります」とはP氏の談。

●そしてどの傾向が強まるのかは、実はその時々の「社会環境」によって決定されるのであり、古代の社会では国家がなかったために暴力の傾向が強かったが、文明が台頭してきて社会のルールも変わってくると、暴力が減少しはじめたのだ。

●さらに携帯のようなコミュニケーション機器が人々の間に広まると、悪いアイディアが攻撃されて駆逐される速度がはやまることになる。

●もちろん暴力が減少しつつあるのは事実だが、それが増加する可能性があることも否定できないという。しかし減少している原因を理解できれば、人類は平和を推進できるという。

●最近の本では「“平和のためには正義を求めよ”というのは間違いだ」と論じるものがあるが、これはP氏は正しいと考える。しかし彼の場合は「平和を求めるなら平和になれ」のほうが良いという。

●もしかすると一番正しいのは「平和を求めるのなら心理学を理解せよ」ということになるのかもしれない。
Commented at 2011-12-12 08:32 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by elmoiy at 2011-12-12 10:16 x
ttp://www.ted.com/talks/lang/ja/steven_pinker_on_the_myth_of_violence.html
スティーブン・ピンカー: 暴力にまつわる社会的通念(動画)

こちらの動画も参考になるかと。
Commented by 山田洋行 at 2011-12-13 05:29 x
進化心理学の本も読んだりしておりますが、進化心理学の言うことも正しく(つまり人間は本来暴力が好きだ)、また同時に脳の可塑性を考えれば環境によって我々は「暴力との決別」は可能かなと思っております。私が言うのもアレですが。
Commented by エキゼエル at 2011-12-13 08:54 x
ほんの著者名は忘れましたが、「Darwinian Politics」というとても面白い本もありますので、ご紹介させて頂きます。この記事と同じように進化心理学的に見た政治というテーマで書かれていますので、是非ご一読を。
Commented by at 2011-12-16 08:50 x
進化心理学または社会生物学的に見れば、闘争を好む集団も忌避する集団も淘汰されそうです。適度な闘争力をもった個人ないし集団が、結局生き残るのではないでしょうか。
Commented by 中山太郎 at 2011-12-16 12:09 x
奥山さんの英国留学日記は、是非まとめて、皆様へ広く広報願います。とても、前向きの素晴らしい者ですから。
Commented by キモオタ親父 at 2014-04-22 09:47 x
戦争は政治と暴力の延長であり、政治も暴力も「適応行動」の一種なので、残念ながら戦争も適応行動の一種と信じています。
人間は暴力や戦争が「好き」なのではなく、適応のために時としてそれを洗濯するしかないのでしょう。
「生きることは戦うこと」は心理です。戦うか、淘汰されて滅ぶしかないのが、生物でしょう
by masa_the_man | 2011-12-12 00:31 | 日記 | Comments(7)