バングラデシュ報告:その3 |
ロンドン大学のC教授が午後から別の大学で講演をするというので、午前中はホテルの部屋で締め切りが迫っている翻訳をやり、昼から教授とホテル近くのレストランで一緒に食事をすませ、その後で中心部にあるNGOが設立した新しい大学に行きました。
教授の講演のテーマは一日目の講演と同じ「グローバル化と弱小国家」ということで、20世紀からわれわれを動かしてきた思想が、①リベラリズム、②マルキシズム、③イスラム主義、の三つであり、現在はモイジのいう「感情」、もしくはタイムゾーン(前近代、近代、ポスト近代)にわけて考えると面白い、というもの。
そのような講義とは関係なく、教授とランチの時間に話していて興味深かったのは、現代の人間はその定義から考えるとすでにサイボーグである、ということ。
たとえば人間は16世紀から時計という「メカ」をつかって時間を知るようになった時点ですでにサイボーグ化(メカと人間の融合化)している、ということになります。これは動物たちのように、メカに頼らずに時間の概念を知るような存在とは決定的に違います。
それよりも興味深かったのは、教授の講義のあとの雑談の時間で、私が会ったバングラデシュの少数民族の地域出身の若い研究者でした。
彼は南東部のミャンマーとの国境近くの州出身で、顔も完全に他の(インド人っぽい)バングラデシュ人よりはむしろチベットとかタイの人に近い顔をしておりました。
彼の住む地域は宗教も仏教だし、使っている言葉も違う(ベンガル語は彼にとって母国語ではない)。そういう意味で、ダッカにいるバングラデシュ人たちとはアイデンティティーが違うと自分でも感じているとのことです。
そこで私は「あそこはたしか独立運動がさかんで、テロなんかも起こっているんですよねぇ」と聞くと、その彼はなんと、「ええ、いまダッカの大学で研究者やってなかったら、私は独立運動やってテロでも起こしてますよ!」と笑顔で答えてくれたのです(笑
町の喧騒やカオス的な状態なんかを見てても思うのですが、日本はかなり恵まれているなぁと感じるばかりです。