戦略や地政学の視点から国際政治や社会の動きを分析中


by masa_the_man
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地政学はグローバルである

今日の横浜は曇りがちでしたが、とりあえず晴れを感じられる日本らしい天気でした。まだ11月とは思えない陽気です。

さて久々にブログの更新を。

実は10月中頃から東京で参加したセミナーや引越しなどの話がからんで猛烈に忙しくなっており、今日になってようやくブログを書く時間がとれました。

久しぶりに切り貯めていた新聞の記事に目をやりますと、なんと日本の「地政学オンチぶり」を発揮するような記事があったので、それについて一言いわねばと思い、ここに記しておきます。

これは二週間ほど前の日本のある外交の専門家が書いていた記事なんですが、彼は久々にワシントンを訪問して「中東と東アジアの安全保障問題が直結しているという仮説を思いつきました、ハレルヤ!」ということを述べておりました。

ところが私の講演会に参加いただいたり、訳書などをすでにお読みになった方々には、このような「二大(というか三大)戦略地域」におけるバランス・オブ・パワーが相互関連している、ということはすでに常識・前提のレベルであり、この記事を書いた著者が思いついたような「仮説」でもなんでもないわけです。

古典地政学において最初にこのような「一地域のバランス・オブ・パワーが他の地域のそれに影響を与える」ということを述べたのはあの「シーパワー派」のアルフレッド・セイヤー・マハンですが、彼の場合はイギリスとロシアがユーラシア大陸の支配をめぐっていわゆる「グレート・ゲーム」を展開している状況を踏まえて、「ユーラシア大陸の両側でパワーのせめぎあいが起こっている」という地政学的状況を分析しておりました。

そして次が「地政学の祖」であり、「ランドパワー派」のハルフォード・マッキンダーなのですが、彼の場合は自分の理論を(当時アメリカで盛り上がっていた)「大戦略の理論である」と述べつつ、マハンに習う(?)ような形で、ユーラシア大陸の別々の地域のバランス・オブ・パワーが互いに影響しあうということを主張。

そして「リムランド派」のスパイクマンですが、彼の場合も当然のようにマッキンダーの世界観に従ってユーラシア大陸を世界の中心におき、第二次大戦の戦略的状況から大陸両端のバランスの変化が今後の世界情勢を決定的にすると断言。

戦後のアメリカのリアリストたちはこのような地政学観を潜在的に受け継ぎながら、二〇世紀後半に(アメリカにとっての)「世界三大戦略地域」として、欧州、中東、東アジアを挙げておりまして、この三つの地域のそれぞれのバランス・オブ・パワーがアメリカの今後の世界覇権に大きな影響を与えると予測。

このように、ユーラシア大陸の周辺の戦略的地域のそれぞれの状況が、別の地域の情勢に影響を与えるというのは(古典)地政学をちょっと勉強したことがある人にとっては常識のようなものなのですが、日本の外交の専門家と言われる人でさえこのような前提を知らない(しかも新聞で堂々と書いてしまうのは)というのはちょっといかがなものかと。

そろそろ来日すると噂のジェレミー・ブラックというエクセター大学の教授は、最近の『地政学』という本の中で、「(古典)地政学のいくつかの理論の有用な共通点は、それらの視点がグローバルであることだ」という簡潔かつ鋭い分析をしておりましたが、欧州、中東、東アジアの三大地域の他に、現在は本ブログでも何度か取り上げた北極海という「第四の戦略地域」が近年では加わり、地政学の知識が必要とされる時代が来ております。

ということで、「地政学の知識は日本にもっと必要です」と久々のエントリーを安易にまとめてみます(苦笑
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by masa_the_man | 2011-11-06 01:29 | 日記 | Comments(0)