2011年 09月 12日
ミアシャイマーの「オフショア・バランシング」論 |
今日の甲州は快晴になって暑かったのですが、さすがに朝晩はかなり過ごしやすいです。
さて、「エアシー・バトル」との絡みもあって気になる「オフショア・バランシング」ですが、以前掲載したミアシャイマーの記事(原文は2008年当時のもの)が完成しましたので、残りの部分と合わせて全編ポイントフォームで要約をここに載せておきます。
25日の講演会はこの辺もからんで話ができればと思いますので、ご参加を予定されているかたは、ちょっと長くなりますが、ご参考までにぜひ。
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軍靴を陸から引き上げろ
重大な地域での最適な戦略は、部隊を撤退させてバランス・オブ・パワーの政治に戻ることだ
By ジョン・ミアシャイマー
●大統領は変わったが、アメリカはまだ中東でトラブルにはまっている。オバマはイラクからの撤退を公約にかかげていたが、それが終わる兆候は見えないし、アメリカにとってのテロ問題は悪化している。
●また、ガザ地区ではハマスが支配し、イランは核抑止の獲得に向けて動いており、アメリカやその同盟国たちもそれを阻止することはできないでいる。
●そしてアメリカの中東でのイメージは、過去最悪になっているのだ。
●これらの結果は、そのすべてが、ブッシュ政権が中東地域を米軍の力を使ってイラク政府(やシリアやイランなど)を民主化させて友好的な政権につくりかえようとした誤った政策のおかげだ。そして当然のように、思ったとおりにはことはうまく運ばなかった。
●よってオバマ大統領は、この重大な地域に対して新しい戦略で臨まなくてはならない
●幸運なことに、アメリカには過去にも効果を発揮したことがある戦略が残されている。それが「オフショア・バランシング」だ。冷戦時代はこのおかげでワシントン政府はイランとイラクを封じ込め、ソ連が石油の豊かなこのペルシャ湾地域に直接介入してこようとするのを抑止したのだ。
●対中東戦略としては「オフショア・バランシング」というのはブッシュの(アラブの春を目指した)中東政策よりは野心的なものではないが、それでもアメリカの国益を守るという意味でははるかに効果的である。
●実際にはどうするのかというと、アメリカはオフショア・バランサーとして中東の外に軍事力(特に陸軍と空軍)を配備するのだ。だから「沖合」という意味の「オフショア」という形容詞がつく。
●一方の「バランシング」の意味は、イランやイラク、サウジアラビアなどの地域の国家にお互いを抑止させるということだ。
●ワシントン政府は外交的には関与を続けるのだが、紛争などが起こった時に必要とあらば弱い国側を応援するのだ。
●また、空・海軍を使うことによってアメリカが引き続きコミットメントを行っていることを示しつつ、一九九〇年のイラクによるクウェート侵攻のような、不測の事態にはすぐに対応できるような能力を維持するのだ。
●ところがここで重要なのは、アメリカが中東に軍隊を派遣するのは、地域のバランス・オブ・パワーがかなり崩れてきて、その中のたった一国がその地域全体を支配する恐れが出てきた場合だけなのだ。
●それ以外の場合は、アメリカは兵士やパイロットたちを「水平線の向こう側」、つまりその地域の海の外側か、アメリカ本土の基地においておく、ということだ。
●このアプローチは、ブッシュの高慢なレトリックを聴き続けた後だと皮肉に聞こえるかもしれない。なぜならこれだと民主制や人権擁護の推進にはあまり効果を発揮しなそうな感じだからだ。
●ところがブッシュ自身もこれらの約束を果たせなかった点では一緒であり、国家がどの政治システムを選ぶのはかはワシントンではなく、各国家の責任なのだ。
●よって、国益を目指すためのアメリカの戦略を現実的な理解を土台にして、アメリカが達成できないことを明確に認識するのは、実は全く「皮肉的」なことではないのだ。
●さらに言えば、オフショア・バランシングというのは全く新しい戦略というわけではない。アメリカは冷戦期のほとんどを通じて、この大戦略を中東で実行して成功させていたのだ。
●しかもアメリカはこの地域に軍隊を駐留させようとしてはいないし、ここの国々を無理やり民主制度に作り変えようともしていない。
●その代わりにワシントン政府はその地域の様々な同盟国を――陸軍と海兵隊が5師団、戦術戦闘航空団三つ、そして三つの空母打撃群で構成される緊急展開部隊(RDF)のような形で――支援して、もしソ連、イラン、イラクがバランスを崩そうとしてきた場合には抑止したり直接介入したりしようとしているのだ。
●アメリカは一九八〇年代にイラン革命軍を封じ込めるためにイラクを支援していたが、イラクが一九九〇年にクウェートに侵攻してバグダット政府に有利なバランスをつくろうとすると、アメリカはRDFを中心とした多国籍同盟を結成してサダム・フセインの軍隊をつぶしている。
●オフショア・バランシングは、今日において以下の点において、特に魅力的なものとなっている。
●第一に、アメリカがイラクのような、大規模で犠牲が高くつく戦争に巻き込まれるチャンスを(完全に消滅させるわけではないが)減少させてくれる、という点だ。
●アメリカは自国の軍隊をつかってわざわざ中東をコントロールする必要はないのであり、必要なのはただ他の国がそうするのを防ぐことだけなのだ。
●この狙いがあるため、オフショア・バランシングというのは軍隊を使ってこの地域の政治を変えることは拒否し、その代わりに地元の同盟国たちに危険な隣国を封じ込める役割を果たしてもらうのだ。
●アメリカはオフショア・バランサーとして国力を節約しておくことができるのであり、介入は最後の手段としてとっておくことができるのだ。そしていざ介入しても、それをすぐ終了させて沖合に撤兵する。
●比較安上がりなこのアプローチは、現在アメリカがおかれた状況を考えると、とくに魅力的なものであることがおわかりいただけると思う。
●アメリカの債務棚上げ措置は財政にとってかなりの高くついたのであり、今後経済の状況が本当に改善するかどうかというのは明らかではない。このような状況下で、アメリカは中東、もしくはその他の地域で、いつまでも戦争を続けられるわけがないのだ。
●ワシントン政府は(二〇〇八年末の時点で)すでにイラク戦争に6千億ドル(50兆円)つかっており、紛争が終わるまでにこの総額は1兆ドル(80兆円)以上になりそうなのだ。
●しかもイランと戦争がはじまれば、その経済的負担がさらに増すことは想像に難くない。
●もちろんオフショア・バランシングは「タダ」というわけではなく、アメリカはある程度の外征部隊を維持して迅速に派兵できるようにしておかなければならないのだ。しかしこれは、今までの戦略よりもかなり安上がりになることは間違いない。
●第二に、オフショア・バランシングはアメリカのテロ問題を改善してくれる。
●20世紀の教訓は、ナショナリズムやその他の地元のアイデンティティというものがまだ根強く残っており、外国による占領は地元からの強烈な反発を生み出す、ということだ。このような不満は、アメリカにたいするテロや大規模な暴動となって顕在化することになる。
●レーガン政権が一九八二年のイスラエルのレバノン侵攻の後にベイルートに米軍を派遣した後、地元のテロリストたちは、一九八三年四月にアメリカ大使館、そして同年十月には米海兵隊の宿舎に対して自爆テロを行って三〇〇人以上殺害して対抗したのである。
●できるかぎり米軍を外に引いておくことは、米軍をアラブの土地に恒久的に駐留させることによって発生する怒りを最小限に抑えることになるのだ。
●第三に、オフショア・バランシングはイランとシリアが感じている「アメリカに政権交代させられてしまう!」という恐怖――これこそが彼らが大量破壊兵器をもとうとしている理由だが――をやわらげることになる。
●テヘラン政府に核武装をあきらめさせるためには、ワシントン政府がイラン側の正統的な安全保障の懸念を解決してやり、あからさまな挑発を抑えるべきなのだ。米軍をその周辺から撤退させることは、それに向けた「はじめの一歩」になるはずだ。
●アメリカは中東から完全に撤退することはできないが、オフショア・バランシングはアメリカがそこで戦争に巻き込まれる危険度を下げてくれるのだ。
● いままでの戦略では、潜在的な的をまとめて敵にして一致団結してアメリカに向かってくるようにしていたのだが、オフショア・バランシングでは反対に地域の国々にアメリカに有利になるように競争するよう支援するのであり、これによって分断統治の戦略を促進するのだ。
●この戦略を対中東向けに採用する第四の理由は、それ以外の戦略は効果がないからだ。
●たとえば、一九九〇年代初期のクリントン政権は「二重の封じ込め」を追求していたが、これはイラクとイランの両者を使って互いを牽制させるのではなく、アメリカが自ら両国を封じ込めようするものであった。
●ところがこの政策だと、両国ともアメリカのことを憎い敵国と見なすようになってしまう。また、この政策ではアメリカがクウェートやサウジ・アラビアに大規模な数の兵力を派遣する必要が出てくるのだ。
●そしてこの政策こそが、地元地域での不満を起こし、オサマ・ビン・ラディンがアメリカに宣戦布告することにつながり、一九九六年のコバールタワーズの爆破事件や二〇〇〇年の駆逐艦コールへの攻撃、そして最終的に9・11事件へとつながったのだ。
●9・11事件の直後に、ブッシュ政権は中東の「二重の封じ込め」を放棄して、地域の変換へと動き出している。たしかにバグダットが陥落した時にはブッシュの成功は約束されていたように見えた。ところが占領政策はすぐに悪化し、この地域におけるアメリカの地位はどんどん落ち始めたのだ。
●オバマ大統領がアメリカを泥沼から救い出すには、過去に成功していた対中東戦略に戻るべきなのだ。具体的にいえば、オフショア・バランシングという戦略はイラク戦争をなるべく早く収束させて、この地域全体の犠牲者の数を減らすことを意味する。
●イランに対して予防戦争をちらつかせて脅す――このアプローチではテヘラン政府の核兵器獲得への欲望や、アハマディネジャド大統領の人気を高めてしまうことになる――代わりに、オバマ新政権はイランに安全を約束して、その見返りに核濃縮計画に検証可能な制限をするような交渉をすべきなのだ。
●アメリカはシリアのアサド政権への狙いをはずし、イスラエルとシリアの両国に和平条約を交わすように圧力をかけるべきである。
●もちろんこの戦略はアメリカが中東で直面する問題をすべて解決してくるようなものではない。それでも将来のイラクのような大災害の発生の確率を下げてテロ問題をかなり緩和してくれるのであり、ワシントン政府の核拡散防止の展望を最大化してくれるのだ。
●またこれは人的にも財源的にもかなり負担を軽減してくれるものだ。
●もちろん国際政治においては「絶対安全な戦略」というものはないのだが、それでもオフショア・バランシングはわれわれが実行できる最も安全に近い戦略であろう。
===
この論文の要点についてはのちほどまた。
さて、「エアシー・バトル」との絡みもあって気になる「オフショア・バランシング」ですが、以前掲載したミアシャイマーの記事(原文は2008年当時のもの)が完成しましたので、残りの部分と合わせて全編ポイントフォームで要約をここに載せておきます。
25日の講演会はこの辺もからんで話ができればと思いますので、ご参加を予定されているかたは、ちょっと長くなりますが、ご参考までにぜひ。
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軍靴を陸から引き上げろ
重大な地域での最適な戦略は、部隊を撤退させてバランス・オブ・パワーの政治に戻ることだ
By ジョン・ミアシャイマー
●大統領は変わったが、アメリカはまだ中東でトラブルにはまっている。オバマはイラクからの撤退を公約にかかげていたが、それが終わる兆候は見えないし、アメリカにとってのテロ問題は悪化している。
●また、ガザ地区ではハマスが支配し、イランは核抑止の獲得に向けて動いており、アメリカやその同盟国たちもそれを阻止することはできないでいる。
●そしてアメリカの中東でのイメージは、過去最悪になっているのだ。
●これらの結果は、そのすべてが、ブッシュ政権が中東地域を米軍の力を使ってイラク政府(やシリアやイランなど)を民主化させて友好的な政権につくりかえようとした誤った政策のおかげだ。そして当然のように、思ったとおりにはことはうまく運ばなかった。
●よってオバマ大統領は、この重大な地域に対して新しい戦略で臨まなくてはならない
●幸運なことに、アメリカには過去にも効果を発揮したことがある戦略が残されている。それが「オフショア・バランシング」だ。冷戦時代はこのおかげでワシントン政府はイランとイラクを封じ込め、ソ連が石油の豊かなこのペルシャ湾地域に直接介入してこようとするのを抑止したのだ。
●対中東戦略としては「オフショア・バランシング」というのはブッシュの(アラブの春を目指した)中東政策よりは野心的なものではないが、それでもアメリカの国益を守るという意味でははるかに効果的である。
●実際にはどうするのかというと、アメリカはオフショア・バランサーとして中東の外に軍事力(特に陸軍と空軍)を配備するのだ。だから「沖合」という意味の「オフショア」という形容詞がつく。
●一方の「バランシング」の意味は、イランやイラク、サウジアラビアなどの地域の国家にお互いを抑止させるということだ。
●ワシントン政府は外交的には関与を続けるのだが、紛争などが起こった時に必要とあらば弱い国側を応援するのだ。
●また、空・海軍を使うことによってアメリカが引き続きコミットメントを行っていることを示しつつ、一九九〇年のイラクによるクウェート侵攻のような、不測の事態にはすぐに対応できるような能力を維持するのだ。
●ところがここで重要なのは、アメリカが中東に軍隊を派遣するのは、地域のバランス・オブ・パワーがかなり崩れてきて、その中のたった一国がその地域全体を支配する恐れが出てきた場合だけなのだ。
●それ以外の場合は、アメリカは兵士やパイロットたちを「水平線の向こう側」、つまりその地域の海の外側か、アメリカ本土の基地においておく、ということだ。
●このアプローチは、ブッシュの高慢なレトリックを聴き続けた後だと皮肉に聞こえるかもしれない。なぜならこれだと民主制や人権擁護の推進にはあまり効果を発揮しなそうな感じだからだ。
●ところがブッシュ自身もこれらの約束を果たせなかった点では一緒であり、国家がどの政治システムを選ぶのはかはワシントンではなく、各国家の責任なのだ。
●よって、国益を目指すためのアメリカの戦略を現実的な理解を土台にして、アメリカが達成できないことを明確に認識するのは、実は全く「皮肉的」なことではないのだ。
●さらに言えば、オフショア・バランシングというのは全く新しい戦略というわけではない。アメリカは冷戦期のほとんどを通じて、この大戦略を中東で実行して成功させていたのだ。
●しかもアメリカはこの地域に軍隊を駐留させようとしてはいないし、ここの国々を無理やり民主制度に作り変えようともしていない。
●その代わりにワシントン政府はその地域の様々な同盟国を――陸軍と海兵隊が5師団、戦術戦闘航空団三つ、そして三つの空母打撃群で構成される緊急展開部隊(RDF)のような形で――支援して、もしソ連、イラン、イラクがバランスを崩そうとしてきた場合には抑止したり直接介入したりしようとしているのだ。
●アメリカは一九八〇年代にイラン革命軍を封じ込めるためにイラクを支援していたが、イラクが一九九〇年にクウェートに侵攻してバグダット政府に有利なバランスをつくろうとすると、アメリカはRDFを中心とした多国籍同盟を結成してサダム・フセインの軍隊をつぶしている。
●オフショア・バランシングは、今日において以下の点において、特に魅力的なものとなっている。
●第一に、アメリカがイラクのような、大規模で犠牲が高くつく戦争に巻き込まれるチャンスを(完全に消滅させるわけではないが)減少させてくれる、という点だ。
●アメリカは自国の軍隊をつかってわざわざ中東をコントロールする必要はないのであり、必要なのはただ他の国がそうするのを防ぐことだけなのだ。
●この狙いがあるため、オフショア・バランシングというのは軍隊を使ってこの地域の政治を変えることは拒否し、その代わりに地元の同盟国たちに危険な隣国を封じ込める役割を果たしてもらうのだ。
●アメリカはオフショア・バランサーとして国力を節約しておくことができるのであり、介入は最後の手段としてとっておくことができるのだ。そしていざ介入しても、それをすぐ終了させて沖合に撤兵する。
●比較安上がりなこのアプローチは、現在アメリカがおかれた状況を考えると、とくに魅力的なものであることがおわかりいただけると思う。
●アメリカの債務棚上げ措置は財政にとってかなりの高くついたのであり、今後経済の状況が本当に改善するかどうかというのは明らかではない。このような状況下で、アメリカは中東、もしくはその他の地域で、いつまでも戦争を続けられるわけがないのだ。
●ワシントン政府は(二〇〇八年末の時点で)すでにイラク戦争に6千億ドル(50兆円)つかっており、紛争が終わるまでにこの総額は1兆ドル(80兆円)以上になりそうなのだ。
●しかもイランと戦争がはじまれば、その経済的負担がさらに増すことは想像に難くない。
●もちろんオフショア・バランシングは「タダ」というわけではなく、アメリカはある程度の外征部隊を維持して迅速に派兵できるようにしておかなければならないのだ。しかしこれは、今までの戦略よりもかなり安上がりになることは間違いない。
●第二に、オフショア・バランシングはアメリカのテロ問題を改善してくれる。
●20世紀の教訓は、ナショナリズムやその他の地元のアイデンティティというものがまだ根強く残っており、外国による占領は地元からの強烈な反発を生み出す、ということだ。このような不満は、アメリカにたいするテロや大規模な暴動となって顕在化することになる。
●レーガン政権が一九八二年のイスラエルのレバノン侵攻の後にベイルートに米軍を派遣した後、地元のテロリストたちは、一九八三年四月にアメリカ大使館、そして同年十月には米海兵隊の宿舎に対して自爆テロを行って三〇〇人以上殺害して対抗したのである。
●できるかぎり米軍を外に引いておくことは、米軍をアラブの土地に恒久的に駐留させることによって発生する怒りを最小限に抑えることになるのだ。
●第三に、オフショア・バランシングはイランとシリアが感じている「アメリカに政権交代させられてしまう!」という恐怖――これこそが彼らが大量破壊兵器をもとうとしている理由だが――をやわらげることになる。
●テヘラン政府に核武装をあきらめさせるためには、ワシントン政府がイラン側の正統的な安全保障の懸念を解決してやり、あからさまな挑発を抑えるべきなのだ。米軍をその周辺から撤退させることは、それに向けた「はじめの一歩」になるはずだ。
●アメリカは中東から完全に撤退することはできないが、オフショア・バランシングはアメリカがそこで戦争に巻き込まれる危険度を下げてくれるのだ。
● いままでの戦略では、潜在的な的をまとめて敵にして一致団結してアメリカに向かってくるようにしていたのだが、オフショア・バランシングでは反対に地域の国々にアメリカに有利になるように競争するよう支援するのであり、これによって分断統治の戦略を促進するのだ。
●この戦略を対中東向けに採用する第四の理由は、それ以外の戦略は効果がないからだ。
●たとえば、一九九〇年代初期のクリントン政権は「二重の封じ込め」を追求していたが、これはイラクとイランの両者を使って互いを牽制させるのではなく、アメリカが自ら両国を封じ込めようするものであった。
●ところがこの政策だと、両国ともアメリカのことを憎い敵国と見なすようになってしまう。また、この政策ではアメリカがクウェートやサウジ・アラビアに大規模な数の兵力を派遣する必要が出てくるのだ。
●そしてこの政策こそが、地元地域での不満を起こし、オサマ・ビン・ラディンがアメリカに宣戦布告することにつながり、一九九六年のコバールタワーズの爆破事件や二〇〇〇年の駆逐艦コールへの攻撃、そして最終的に9・11事件へとつながったのだ。
●9・11事件の直後に、ブッシュ政権は中東の「二重の封じ込め」を放棄して、地域の変換へと動き出している。たしかにバグダットが陥落した時にはブッシュの成功は約束されていたように見えた。ところが占領政策はすぐに悪化し、この地域におけるアメリカの地位はどんどん落ち始めたのだ。
●オバマ大統領がアメリカを泥沼から救い出すには、過去に成功していた対中東戦略に戻るべきなのだ。具体的にいえば、オフショア・バランシングという戦略はイラク戦争をなるべく早く収束させて、この地域全体の犠牲者の数を減らすことを意味する。
●イランに対して予防戦争をちらつかせて脅す――このアプローチではテヘラン政府の核兵器獲得への欲望や、アハマディネジャド大統領の人気を高めてしまうことになる――代わりに、オバマ新政権はイランに安全を約束して、その見返りに核濃縮計画に検証可能な制限をするような交渉をすべきなのだ。
●アメリカはシリアのアサド政権への狙いをはずし、イスラエルとシリアの両国に和平条約を交わすように圧力をかけるべきである。
●もちろんこの戦略はアメリカが中東で直面する問題をすべて解決してくるようなものではない。それでも将来のイラクのような大災害の発生の確率を下げてテロ問題をかなり緩和してくれるのであり、ワシントン政府の核拡散防止の展望を最大化してくれるのだ。
●またこれは人的にも財源的にもかなり負担を軽減してくれるものだ。
●もちろん国際政治においては「絶対安全な戦略」というものはないのだが、それでもオフショア・バランシングはわれわれが実行できる最も安全に近い戦略であろう。
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この論文の要点についてはのちほどまた。
by masa_the_man
| 2011-09-12 22:59
| 日記

