戦略や地政学の視点から国際政治や社会の動きを分析中


by masa_the_man
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『自主防衛を急げ!』by 伊藤貫&日下公人

今日の甲州は朝から雨の予報だったのですが、午前中にちょっと小雨がぱらついたくらいで、あとはなんとか降らずに済みました。

さて、久々に本の書評のようなものを。
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『自主防衛を急げ! 』
伊藤貫 & 日下公人(著)

私の率直な感想は、

「これほどまでアメリカのIR系のリアリストたちの学者たちの名前が出てきた本は聞いたことないなぁ」

というものでした。数ページごとにケナン、モーゲンソー、キッシンジャー、ウォルツ、ミアシャイマー、ウォルトなどの名前が頻発する一般書(しかも対談本)なんて日本じゃ読めるわけがないと思っていたんですが、驚くべきことに今月に入ってからすごい新刊が出ました。

内容は英語の副題(?)からもわかる通り、「独立した核抑止を目指せ」というものです。

まず特色としては終始議論を主導する伊藤氏が、日本の国防議論の派閥を以下の四派、つまり

1.護憲左翼派 (リベラル)
2.親米保守派(コラボレーショニスト)
3.真正保守派(民族派) 
4.勢力均衡派(リアリスト) 

にわけ、そこから日本にはいかに4のリアリスト外交を、核保有によって目指さなければならないのかを論じるという内容。

ちなみに本書で狙いを定めている敵は、2の「親米保守派」。私が伊藤氏に直接聞いた時には、彼は3の「真正保守派」には半分賛成する、とおっしゃってました。

個人的には以前からアメリカ側の「二重の封じ込め」が気になっていたことや、地政学における「大戦略」(グランド・ストラテジー)について関心があったことから、この本は非常に参考になりました。

ちなみに私は自著でも日本の将来の大戦略としては、地政学的に考えて三つしかないと書いておりますが、それを参考までに書き出しますと、

1,米国の属国
2,日本の自主独立
3,中国の属国

ということになります。そして本書は明確に2の「日本の自主独立」を提案しているわけですね。

ちなみに伊藤氏は核戦略では一番列度の低いとされている「ミニマム・ディターレンス」を提唱しております。つまり「最小限の核弾頭による核武装でよい」ということです。

知的興奮度の高い、純粋なリアリズムの理論をベースにしたら「ごく当たり前」の、しかし日本では全く浸透していない、国際関係ではごく普通のパラダイムや観点から書かれた良書です。

けっこう分厚いですが、もう五刷りだとか。これだけ売れる理由はよくわかります。

本書でリアリズムやアメリカの大戦略に関心が出てきた方は、拙訳の

●ミアシャイマー著『大国政治の悲劇』
●ウォルト著『米国世界戦略の核心』
●スパイクマン著『平和の地政学』

の他に、私が現在仕上げている最中の、夏頃出版予定の(本書にも何度か名前が出てきた)リアリスト学者の訳本をお読み下さい。
Commented by at 2011-05-27 23:27 x
方向性としては好きですが、日本が核兵器を保有すると、米中を日本非核化で結託させてしまいませんか?つまり両方敵にする状況。
資源はどうするか、市場はどうするか、エネルギーはどうするか。
米中(その配下)による日本封じ込めに日本が耐えられるのか。
Commented by masaya at 2011-05-28 00:01 x
私も日米安保が無くなったときに、本当に核武装が必要かは疑問に思っています。奥山さんが以前の本で主張していたように「すんどめ核武装」で十分じゃないかと思います。ただ他の核保有国に対して日本に対して核による脅迫をおこなえば、日本の非核政策を再考すると宣言しておくことも不可欠だと私は考えます。
Commented by sdi at 2011-05-28 00:25 x
>ちなみに本書で狙いを定めている敵は、2の「親米保守派」。
私のようなチキンな保守派がふるぼっこにされる本ということですね(笑)
言うはたやすく論としては美しいけど、それは同時に二河白道の道を進む険しさから逃げずに立ち向かう覚悟を必要とする。
Commented by 愚人 at 2011-05-28 13:15 x
伊藤氏の著作を見ると感情が先走っているように感じますが、主張としては同意できます。
リアリズム理論の基本だからなんでしょうが。
いずれにしてもリアリズム系の人たちにはもっと頑張って欲しいなと。
Commented by えんき at 2011-05-28 13:18 x
正直申し上げまして、私は核武装反対の立場です。戦略家方の多くは、これからもMAD(相互確証破壊)は世界平和を構築すると表明されているのですが、今までとは生存環境が異変を来たすこれからの世界に於いて、果たしてMADが今まで通り成り立つのかに大いなる疑問があります。はっきり申し上げまして、これからの世界では核戦争は不可避だと認識すべきです。

特に、内部が複雑怪奇であろう人民解放軍(7軍閥が発祥の軍)と北京政府・地方政府とがどこまでも一体である可能性など無いのであって、中国大陸からの核攻撃は必ず起こる、起こらざるを得ないと想定すべきなのが、日本の安全保障のあり方でしょう。

しからば如何なる安全保障の手段が我が日本にはあるのだろうか?まず中国等の核ミサイルのプルトニウムをニュートリノビームにより組成改変し、不発弾化しておくことでしょう。またアンドリュー・マーシャルがアジア2025で提案し現在開発中のPGS(即応グローバルストライク)を日本も独自開発すべきでしょう。JAXAが開発しているラムジェットや惑星探査機はやぶさカプセルの高速地球帰還のノウハウ、準天頂衛星による独自GPSシステムがあるのだから、やる気になればすぐ出来るはずです。
Commented by 大阪人K at 2011-05-28 21:43 x
何で核兵器に拘るのだろうかという疑問が私にはあります。ぶっちゃけ、核兵器よりもっと使いやすいものを開発すればいいだけのような気がしてなりません。

核戦争こそ物量戦である以上、結局は核兵器を一杯持っている方が勝利を収めるでしょう。(果たして、それが意味のある勝利かというと疑問ですが・・・)

それだけの核兵器を揃えて、運用する資源が日本にあるのかという問題が浮上して来ます。通常戦争に使えないICBMや戦略原子力潜水艦に資源を割くほどの余裕があるかのどうかを考えなくてはならないでしょう。

また、核兵器を持てば自主独立というのも無理があるか思う次第です。現に核兵器の所有国であるイギリスは日本以上にアメリカ(かつてのイギリスの植民地)に付き従っている有様を見れば、核兵器で自主独立というのも無理があるでしょう。
また、フランスはイギリスほどではないにしても、通貨の面で自主独立を自ら放棄している始末。(通貨の自主独立の放棄は、経済政策の自主独立の放棄とほぼ同義でしょう。)
Commented by 大阪人K at 2011-05-28 21:43 x
(先ほどの続き)
そう考えると核兵器に拘る理由がありません。それより、もっと使いやすくて効果的な物(兵器とは限らない)を開発に資源を回した方が国益に適うと思う次第です。

ps
安藤さんを大きく外したのは、我ながらまだまだ修行が足りないことを実感。浅田さんの仕事運の強さには少し驚きです。
Commented by 池沼・高橋和司 at 2011-05-29 14:01 x
私はやはり博士のおっしゃる「寸止め」方式を支持したいですが、Twitterの@itokenstein氏のtweetを見ると、どうも原子力工学の劣化が「最高学府」でも著しいということなので、そこまで開発を進めることができるだろうか。

ところでその伊藤貫氏はこの→ http://p.tl/veX2 のtweetにあるような安全保障語りの軍事知らずということはないだろうか。ネオリアの学者の名前をすらすら言えるということは、その可能性は低くないかもしれない。

まぁ本を実際に読んでみれば分かることなのだろう。けれどもハードカバー買う余裕ないしな。

P.S. 何かこのコメント、池沼が書いただけあって昔よくコメントを残していった某氏みたいに話の説明が足らないような気がする。博士、うっとうしいコメントだと思ったらいつでも削除して下さい。
Commented by 中川信博 at 2011-06-04 07:43 x
ご無沙汰してます。先日のオフ会から帰られるところをお見掛けしました。お元気そうで何よりです。

さて当該書籍拝読致しました。私伊藤さん、日下さん大ファンでメートルをあげながら拝読致しました。そこで感想を一言。

伊藤さんはアメリカで孤軍奮闘する愛国者にしか思えない。
Commented by CatShitOne at 2011-06-08 01:36 x
日本の戦略思想はペリーの黒船ショックのトラウマで歪んでおり、例えば戦前の海軍は決戦主義が主流であり、海軍とはそもそも富を生み出す通商を行う商船の保護が目的であるという肝心な点がお留守になっていました。

日本の核武装を主張する方々は「国家の自立」を考えておられる方が多いようですが、「国家の実利」はどう実現するつもりなのでしょう。「国家の自立」が実現すれば自動的に「国家の実利」も実現する?まさかね。

世の中には手術は成功したが患者は死亡したということがあり得ます。それでは意味がない。

非常に差別的な言い方になりますが、戦後日本の平和主義とは「汚れ仕事はアメリカのニガーやウェットバックやチカノやプア・ホワイトの兄ちゃんにやらせて、自分たちは黙々とお金儲けに勤しむ」だったのではないでしょうか。そして日本国民の大多数はそれを支持した(なんて差別的な国民というなかれ)。
Commented by CatShitOne at 2011-06-08 01:39 x
(続き)
しかし世界第二位の経済大国(私は現在の中国はバブルだと思っているので)という図体になってしまっては最早アメリカのズボンの影に隠れてはいられない。かといって、それなら高々日本と同じ程度の規模の中国のズボンの影に隠れるなどますますできない(今の日本が属国になりたいと申し出たら、中国はふざけるなと思うでしょう。例え近未来に中国が現在の2~3倍の経済規模になったとしても現在の日米関係くらいの開きでしかない)

なので、結果としてはイヤイヤながらの自主独立路線ということですかね。そしてこれは今までより出費は多くリターンは少ないという事になりそうです。日本の国防議論が進まない訳だw
Commented by 川弟子 at 2013-06-26 19:52 x
核兵器は使用するための兵器ではない。
しかし核兵器を所有することにはそれなりの意味がある。

まず、核兵器所有により独自政策の立案が可能であることを内外に示すことができる。このことにより国内では新しい政策の立案が容易になる。更に対外的には、日本は外圧に屈する国ではないことを示すことができる。
by masa_the_man | 2011-05-27 23:13 | おススメの本 | Comments(12)