2010年 10月 29日
クラウゼヴィッツの弱点 |
今日の甲州は朝からずっと雨でした。気温の低さも驚きです。
時間がないのですが、ちょっとメモ代わりにここに記しておきます。
あるクラウゼヴィッツ主義者の本から拾ってきた「クラウゼヴィッツの弱点」を10点ほど。
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1、「大戦略」ではない:『戦争論』では軍事のことについて集中して論じられているが、非軍事の分野のことについては(政治の重要性について論じているにもかかわらず)ほとんど何も語っていない。
2、ロジスティクスをほとんど論じていない:もちろん『戦争論』の第五巻の14章・15章などには少しは記述があるが、「戦争の理論」を論じている割には全体的には驚くほど少ない。後の二つの大戦でも明らかになったように、これはドイツ(プロシア)の伝統?
3、軍隊の組織の仕方などについて:クラウゼヴィッツはすでに組織化された軍隊を想定していて、「どのような軍隊を作ればいいのか」ということについては何も語らず。
4、シーパワー:『戦争論』の中にはシーパワーについてたった二カ所しか触れられていない。これは彼がプロシアという陸の国の軍師だったことにもよるのだろうが、それにしても少ない。ましてやエアパワーやスペースパワーなどはもっての他。
5、テクノロジー:産業革命の起こる前という時代背景のせいかも知れないが、クラウゼヴィッツはテクノロジーやその変化が戦略/戦術に及ぼす効果のことについては何も語らず。しかしそれがかえって『戦争論』の時代を越えた普遍性につながったというメリットも。
6、インテリジェンス:ナポレオンとは対照的に、クラウゼヴィッツはインテリジェンスについてはあまり評価しておらず、むしろ情報というのは軍隊を混乱させるものと考えているようなフシも。ロジスティクス軽視と同様、これもドイツの伝統?
7、摩擦:『戦争論』の中でも最も優秀な概念であるが、これについてクラウゼヴィッツ自身はほとんど議論を展開させていない。
8、政治の「論理」と戦争「文法」:『戦争論』では、たしかに戦闘そのもののスタイル(文法)よりも政治(というか政策)の「論理」の優位が繰り返し説明されているが、この二つが一致しなかった場合にはどうするのかについては何も論じていない。
9、政治家たちの軍事知識について:たしかにクラウゼヴィッツは政治家に軍事知識が必要であることを強調しているが、もしこの政治家たちにその知識が決定的に欠けていた場合にはどうすればいいのか?最近の歴史を見ても、この欠如は(とくに日本の政治家の場合は)明らかだ。『戦争論』はこれについて単なる「べき論」でしかない。
10、道徳/倫理面:『戦争論』ではとくに近年重要性が高まっている戦争における倫理・道徳面については何も語っていない。もちろんクラウゼヴィッツにとって戦争は「起こって当然のもの」だったわけだが、これはまだ戦争がそれほど危険視されていた時代に書かれたわけではなかったために、当然ながら時代の制約を受けたものであると言える。
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クラウゼヴィッツ派の学者にとっても、このような点はたしかに「弱点」として映るのかも知れません。
しかし結局のところは「これらの弱点を踏まえても、クラウゼヴィッツの理論の有用性というのは現在の紛争を考える上ではあまりあるヒント与えてくれる」、ということになるんですが(笑
時間がないのですが、ちょっとメモ代わりにここに記しておきます。
あるクラウゼヴィッツ主義者の本から拾ってきた「クラウゼヴィッツの弱点」を10点ほど。
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1、「大戦略」ではない:『戦争論』では軍事のことについて集中して論じられているが、非軍事の分野のことについては(政治の重要性について論じているにもかかわらず)ほとんど何も語っていない。
2、ロジスティクスをほとんど論じていない:もちろん『戦争論』の第五巻の14章・15章などには少しは記述があるが、「戦争の理論」を論じている割には全体的には驚くほど少ない。後の二つの大戦でも明らかになったように、これはドイツ(プロシア)の伝統?
3、軍隊の組織の仕方などについて:クラウゼヴィッツはすでに組織化された軍隊を想定していて、「どのような軍隊を作ればいいのか」ということについては何も語らず。
4、シーパワー:『戦争論』の中にはシーパワーについてたった二カ所しか触れられていない。これは彼がプロシアという陸の国の軍師だったことにもよるのだろうが、それにしても少ない。ましてやエアパワーやスペースパワーなどはもっての他。
5、テクノロジー:産業革命の起こる前という時代背景のせいかも知れないが、クラウゼヴィッツはテクノロジーやその変化が戦略/戦術に及ぼす効果のことについては何も語らず。しかしそれがかえって『戦争論』の時代を越えた普遍性につながったというメリットも。
6、インテリジェンス:ナポレオンとは対照的に、クラウゼヴィッツはインテリジェンスについてはあまり評価しておらず、むしろ情報というのは軍隊を混乱させるものと考えているようなフシも。ロジスティクス軽視と同様、これもドイツの伝統?
7、摩擦:『戦争論』の中でも最も優秀な概念であるが、これについてクラウゼヴィッツ自身はほとんど議論を展開させていない。
8、政治の「論理」と戦争「文法」:『戦争論』では、たしかに戦闘そのもののスタイル(文法)よりも政治(というか政策)の「論理」の優位が繰り返し説明されているが、この二つが一致しなかった場合にはどうするのかについては何も論じていない。
9、政治家たちの軍事知識について:たしかにクラウゼヴィッツは政治家に軍事知識が必要であることを強調しているが、もしこの政治家たちにその知識が決定的に欠けていた場合にはどうすればいいのか?最近の歴史を見ても、この欠如は(とくに日本の政治家の場合は)明らかだ。『戦争論』はこれについて単なる「べき論」でしかない。
10、道徳/倫理面:『戦争論』ではとくに近年重要性が高まっている戦争における倫理・道徳面については何も語っていない。もちろんクラウゼヴィッツにとって戦争は「起こって当然のもの」だったわけだが、これはまだ戦争がそれほど危険視されていた時代に書かれたわけではなかったために、当然ながら時代の制約を受けたものであると言える。
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クラウゼヴィッツ派の学者にとっても、このような点はたしかに「弱点」として映るのかも知れません。
しかし結局のところは「これらの弱点を踏まえても、クラウゼヴィッツの理論の有用性というのは現在の紛争を考える上ではあまりあるヒント与えてくれる」、ということになるんですが(笑
by masa_the_man
| 2010-10-29 00:55
| 日記