戦略や地政学の視点から国際政治や社会の動きを分析中


by masa_the_man
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北海道の陸自の存在意義

今日の甲州は朝から雨模様でして、午後にはかなり激しく降りました。気温も意外と低くて、明け方には寒くて目が覚めてしまったほど。

さて、北海道での演習見学について少し。

すでにお知らせしたように、数日前に陸自が北海道で行った実働演習である「玄武2010」を見学してきました。

初となる北海道上陸はたった二日間だけだったのですが、見学自体はかなり充実しており、なかなか勉強になりました。

もちろん演習自体は「戦略の階層」でいうところの「戦術レベル」から「作戦レベル」くらいまでのものだったわけですが、「大戦略レベル」が一番気になる私としては、どうしても「ポスト冷戦時代になぜ大規模な対着上陸演習をやる必要があるのか」というところに行きがちです。

また、ある人物から、今年の大綱の基礎となる「防衛力懇談会2010」(新たな時代の安全保障と防衛力に関する懇談会)が出した報告書が、「基盤的防衛力」という概念を「もはや時代遅れである」と指摘したことを、北海道に大規模な部隊を置いている陸自幹部側がどう思っているのか探ってきて欲しい、と頼まれていたことも気になっておりました。

ということで、演習のブリーフィングの時にそのような話も少し聞こうと思っていたのですが、残念ながらほとんどそのような「大戦略レベル」のことを聞けるような質問コーナーがなかったために、私はアテンドをしてくれた人物にそのことを直撃。

するとその方は、大きくいえば以下のようなポイントで正当化できると教えてくれまして、

●北海道は陸自にとって地元との関係が最も良い場所

●訓練環境が抜群(駐屯地と演習場が隣接)

●最新の武器や編成などを試す絶好の環境にある

●能力やノウハウを維持する、自衛隊にとっての「道場」的な役割

●機甲師団や特科団の充実

●「フォースプロバイダー」として、別の地域に派遣するための能力や部隊を温存する場

という答えが返ってきました。

たしかに批判的な観点から見ると、いまや脅威は南西方面なので、そっちに全部部隊は移したら?という突っ込みができるわけですが、これは本ブログでも少し触れた、米陸軍の「保守派」と「十字軍派」の対立と似たようなことが言えるような。

米陸軍の場合は、これからの戦争はCOIN(対テロ戦)にすべてをかけて、「戦車のような冷戦時代の遺物はもういらない!」という立場の「十字軍派(クルセーダーズ)」と、「いやいや、いつ大国政治の時代に戻るかわからないんだから、とりあえず戦車などの能力は残しておくべきだ!」という「保守派」の装備・編成についての議論があったわけですが、今回の陸自はこの「保守派」に近い議論をしているわけです。

たしかにロシアからの大規模侵攻という事態がほとんど想定できないというのは理解ができないわけですが、戦略の三大原則は「柔軟」「選択肢を残す」「冷静」の三つですから、これに従えば

「とりあえずノウハウが消えない程度の機能/設備は残しておけ」

ということになるんでしょうか。

それにしても現場に行ってよくわかったのは、演習場の広さと充実度です。初の捕虜一時収容所にはロシア語で書かれていたものがあって納得できましたが、中国語や朝鮮語も欲しかったような気が。

とにかく彼らの「世界観」がよくわかった貴重な体験でして、ワイリーの解説(とくに第五章のもの)の正確さがあらためて実感できた次第です。

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Commented by fsmism at 2010-09-17 16:22
山田です。

案内してくれた方が自衛隊の代表ではないのは承知してますが、彼の答えは「ポスト冷戦時代になぜ大規模な対着上陸演習をやる必要があるのか」という疑問には答えているとは思えず、説得力に欠けます。

「とりあえずノウハウが消えない程度の機能/設備は残しておけ」という原則に、"大規模な戦車戦のノウハウ"も含めているということでしょうか。

軍隊はそこに駐屯すると生活が発生しますから、長年生活してきた快適な場所を離れるのを隊員が拒むのは理解できます。しかし、そろそろ大規模な部隊を解体し必要な部隊と設備だけ残して、予算と人員とモノを他所にまわしてみては? と妄想します。
Commented at 2010-09-18 00:28 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by 通りすがりさん at 2010-09-18 01:41 x
なぜ今時大規模着上陸演習をやるのかというと、大規模着上陸侵攻対処シナリオであれば、軍隊の行動におけるすべての要素を訓練に織り込めるからでしょう。

なぜ今時北海道なのかは、単に北海道に訓練場が多いからで、軍隊なんて必要なときに必要な場所に必要なだけ居ればよいのであって、南西諸島対処する部隊は南西諸島に最初から居なければいけないというわけではありません。普段は北で訓練し、有事には南方展開すれば良いというのが自衛隊の考えではないでしょうか。
Commented by Oink at 2010-09-18 02:00 x
アメリカが、竹島での韓国との紛争や尖閣諸島での中国との衝突のたびに、「日本は適切な行動をした」と発言しています。
アメリカは東アジアで地上戦闘はできない。

核の拡散と高性能化、そして中国海軍の増強によってアメリカと(民主的なアメリカの同盟国?)手に余るアジアが出来つつあると感じています。

それにしても、前原外相と岡田幹事長が、次期総理候補?で菅改造内閣の目玉何だと思いますが、与えられた仕事に対しいろいろな面で向いていない気がするのです。
Commented by 共和党支持者 at 2010-09-18 10:22 x
いつも楽しく観ております。
とても魅力的な記事でした。
また遊びにきます。
ありがとうございます。
Commented by WIZARD03 at 2010-09-18 19:34 x
北海道の陸自の存在意義とは、来るべき北方四島奪還作戦実施の前線基地/実働部隊として最適だからです。
と、口に出して言える人材の欠乏が日本の最大の弱点ですね。
Commented at 2010-09-19 21:55 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented at 2010-09-19 21:55 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented at 2010-09-19 22:02 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by Oink at 2010-09-19 22:35 x
ツイッターの方で地政学を言い訳に沖縄の在日米軍基地を正当化するなと言う記事を紹介されていましたが、沖縄が中立化、あるいは中国よりになると、台湾、韓国への影響がどうなるか、わからないですし、最悪日本と日本国民の世界観が変わり?(変わらせないか?)不安定化すると思うのですけどね。

岡田前外相と前原外相、菅直人政権には世界観があるんでしょうか?
by masa_the_man | 2010-09-17 01:34 | 日記 | Comments(10)