戦略や地政学の視点から国際政治や社会の動きを分析中


by masa_the_man
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新しいスペースパワーの理論?

今日の甲州は朝から曇りでして、昼あたりから小雨が降ってきました。

さて、先日の学会の大会でスペースパワー論の発表について一言。

つい先日の大会の午前の発表で、スペースパワー論についてよくまとまった優秀な発表がありまして、そこで現代の(とくにアメリカの)スペースパワー論は、以下のように四学派に区別できるとの指摘がありましたので、まずはそれを列記しておきます。

1、聖域学派(the sanctuary school):米政府公式ドクトリン、宇宙の軍事化を警戒
2、生存性・脆弱性学派(the survivability/vulnerability school):宇宙システムへの依存を問題視
3、高地学派(the high ground school):軍備的に優位に立つことを推奨
4、コントロール学派(the control school):制宙権?

これはラプトンという人の分類をもとにしたものであり、発表者の方はこれをもとに分析を展開されており、とても参考になりました。

ところが私がこの発表の分類を見ていて、思い出したのはコースメイトの空軍大佐の新しいスペースパワー理論。というのは、この大佐の理論は上のどの学派にも当てはまらないからです。

私の周辺ではなぜかスペースパワー論をやっている人が多いということはこのブログを長年ごらんのみなさんにはすでにおなじみかと思われますが、とくに一昨年くらいからコースメイトとして一緒に学んでいる例の空軍大佐の考えについて、彼の発表や発言などを聞いていると、

5、宇宙共同開発派

ということになりそうです。どういうことかというと、彼はまずマハンの理論を土台にしつつ、宇宙はたった一国で管理するのではなく、共同開発していくことができる新たなフロンティアだ、という理論を展開しているわけです。

なぜそういう考え方になるのかというと、大佐は『進化する地政学』の中でジョン・スミダが書いている「マハンの“シーパワー論の真意”」にあるように、マハンは実はシーパワーというものを「海上貿易を推進する、国際的に共同管理するべきインフラ」のように考えていた節があり、スペース・パワーもそういった観点から考えるべきだ、ということらしいのです。

実際彼はスミダと何度か話をしたことがあるらしく、「マハンの名字の本当の呼び方はメイハンだ」ということを聞いたのも、マハン研究を徹底的にやったスミダからこの大佐が聞いたことなんですね。

まず大佐はゲーム理論における「長期的にゲームを行っていくと、互いに協力したほうが良い」ということが言えるという辺りから話をはじめます。

で、次に「マハンの本当のシーパワー論」を持ち出して、結論としてスペースパワーには国際共同開発をしてインフラを充実させることが大切だ、という話をするのです。

そういう意味で、日本がJAXAなどを通じて積極的に国際的な宇宙開発を進めているのは彼の中でとても嬉しいことらしく、彼はしきりに私に向って「日本はいい仕事しているなぁ」と言ってきます。

そうなると単なるリベラルかと思いきや、実際に話を聞いてみるとかなりリアリスト。とくに「宇宙のゴミ」を排出している中国に対してはかなり警戒している様子が。

こうなると本当に彼の理論が「スペース・パワー理論」なのかはわからなくなってきますが、軍人による意外と楽観的な理論、という意味ではけっこう興味深いかと。
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Commented by 大阪人K at 2010-04-27 21:47 x
空軍大佐の狙っているところは

・アメリカが宇宙で他国を圧倒することが、もはや出来なくなっている現実を受け入れている。

・日本、欧州、中国のような後発国を宇宙においてコントロールするには、国際共同という枠組みに組み込んでしまう方がいい。先発国のロシアは慢性的に金がないから、金を出すことで枠組みに入れてしまうことは可能だろう。
100%コントロールすることは出来ないにしても、まったくの野放図よりは、アメリカの影響力を発揮することができる。

・宇宙にアクセスできる国だけ組んで、アクセスできない国に対してヘゲモニーを確保しよう。

こんな感じでしょうか。


高地学派とコントロール学派の違いが今ひとつ分かりにくいのです。どっちも宇宙において優位に立つという点については、同じように思えるのですが、どうなんでしょうか。
Commented by 上山祐幸 at 2010-04-27 21:52 x
こんばんは。

宇宙共同開発ですか…

海底とは違い、宇宙(ドールマンのアストロポリティクスで言うところの地球-月空間でも)は広大で、とても開発は一国の手には余るように見えます。それなら国際共同開発の枠組みを作った上でイニシアチブをとっていけば、少なくとも他国にコントロールされずに、開発できると思います。

国際共同開発にも、やはり地上における力関係が反映されると思いますので、楽観は禁物ではないかと考えます。

僕は、宇宙時代は大航海時代のように、各国は宇宙探検、宇宙の最適航路の発見や、スペースコロニーや月基地の建造などについて熾烈な競争に入るのではないかと考え、またそれらに使用される戦術、宇宙船や兵器などは、競争に適合して最適化されるのではないかと考えています。

僕みたいな考えは、どの派に位置しているのでしょうか。高地学派かコントロール学派のどちらかだと、個人的に考えています。

あと、コリン・グレイ教授のモダン・ストラテジーも原書で買いました。まだ少ししか読んでませんが、英語には慣れてないので楽しく勉強しながら読んでます。
Commented by nanashi at 2010-04-27 23:01 x
宇宙はシーパワーの延長にはないでしょう
流通のコストが高すぎますから
HTVでおだてられて担がれたらとんでもない費用を負担することになるので目的を明確にして関わることが大事だと思います。
宇宙に金を掛けるくらいなら、海の鉱物や地中の地熱を獲得する技術に金を掛けた方がいい。その方が行き先のある橋を作ることになるから。
宇宙はやはり偵察とか通信とかそういうことでしょう。
何も無い。
大きな光ファーバーとか電線などのアナロジーで考えたほうがいいです。
そうすると、ルーターとか中継器や暗号化の問題が重要でしょう
Commented by その筋の人 at 2010-04-28 02:01 x
>「宇宙のゴミ」

そう言えばこの件ですが、中国のドッキング実験の失敗が原因との仮説がありますね。随分前に弊ブログで取り上げた記憶があるので探して見ます。

>彼はしきりに私に向って「日本はいい仕事しているなぁ」と言ってきます。

その大佐は、エントリーに国籍が書かれていないので解りませんが、イギリスの方でしょうか?ならば良いのですが、アメリカ人ならば青筋を立てながら「オイオイ」と言いたいですね。
それにしてもこの大佐は、「おおすみ」の技術的特長とそれ以降の開発経緯を知らないのでしょうね。知っていればそういう事は口が裂けてもいえない筈ですが…。
Commented by 焔剣 at 2010-04-28 02:20 x
>こうなると本当に彼の理論が「スペース・パワー理論」なのかはわからなくなってきますが~

宇宙利用における、グローバルスタンダードの提唱でしょうか。

デブリを撒き散らすことに対する懸念などはまあ、「町内会の会長さん」としては当然の反応ですな(笑
Commented at 2010-04-28 08:14 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by sdi at 2010-04-28 13:58 x
宇宙共同開発派と聖域学派の違いというのが今ひとつピンときません。
まあ、「悪の論理」的に考えると前者が「争奪の元になるくらいなら皆で資源を分け合おう」(ex.欧州鉄鋼石炭共同体、ふるーーー)ですね。
後者が「争奪の元になるくらいなら現状で凍結」(ex.南極条約)どちらも、まずまずの成果を収めた手法ではありますが、日本にとってとどちらがお得かとなると、共同開発のほうでしょうか。聖域化の路線を仮に日本が支持したとしても取り決めに加わらない国が出てくるのは目に見えています。そんな国に「宇宙の聖域化」を強制的に守らせるのは困難でしょう。それくらいなら「共同開発」という美名の下に彼らにもメリットがある形で仲間に誘い込みControlするほうがまだしも見込みがあります。かの空軍大佐がJAXAを賞賛するのも、「仲間に引き入れてControlしたい」のかもしれません。一部から「変態的」と言われるほどある意味突き抜けた技術者集団ですしね。

Commented by masa_the_man at 2010-04-28 21:33
大阪人K さんへ

>国際共同という枠組みに組み込んでしまう方がいい。

まあこれでしょうな。彼は共同作業によってみんながこのシステムを受け入れるようになる、という考えがあるみたいですが。

>野放図よりは、アメリカの影響力を発揮することができる。

これですな。

>アクセスできない国に対してヘゲモニーを確保

まあ自動的にそうなりますからね。

>高地学派とコントロール学派の違いが今ひとつ分かりにくい

私もです(苦笑)基本はまあ一緒かと。純粋な戦術面でいけば高地学派、マハンのようなシステムまで狙うのでしたらコントロール派かと。コメントありがとうございました
Commented by masa_the_man at 2010-04-28 21:35
上山さんへ

>とても開発は一国の手には余るように見えます。それなら国際共同開発の枠組みを作った上でイニシアチブ

これですな。

>国際共同開発にも、やはり地上における力関係が反映

まさにその通りです。

>競争に適合して最適化されるのではないかと考えています。

基本は高地学派に近いでしょうか。

>モダン・ストラテジーも原書で買いました

この本もいつか訳さないと・・・論文書き終わったら来年あたりからはじめます。コメントありがとうございました
Commented by masa_the_man at 2010-04-28 21:46
nanashi さんへ

>流通のコストが高すぎますから

これはありますね。

>宇宙に金を掛けるくらいなら、海の鉱物や地中の地熱を獲得する技術に金を掛けた方がいい。

そのために衛星の技術(スペースパワー)が重要になるというのも、ある意味で皮肉ですが。

>そうすると、ルーターとか中継器や暗号化の問題が重要でしょう

中継地としての考え方ですから。まあそれは一つあるかも知れませんが、問題は「みんなが宇宙を目指している」という事実なんですよね。コメントありがとうございました
Commented by masa_the_man at 2010-04-28 21:47
その筋の人 さんへ

>アメリカ人ならば青筋を立てながら「オイオイ」と言いたい

アメリカ人です(笑

>知っていればそういう事は口が裂けてもいえない筈

知らないと思います(苦笑)コメントありがとうございました
Commented by masa_the_man at 2010-04-28 21:48
焔剣 さんへ

>宇宙利用における、グローバルスタンダードの提唱

そういうことでしょうね。

>「町内会の会長さん」としては当然の反応

しかも一番衛星を飛ばしている自分が一番被害を受けやすいとなればなおさらです。コメントありがとうございました
Commented by masa_the_man at 2010-04-28 21:50
waterloo さんへ

>もう少し詳しく

武装化はいけないが、偵察化はオッケーという立場みたいです。

>責任は放棄するでしょうね。

それを無理矢理引き込みたいんでしょうなぁ。まあ無理かもしれませんが。コメントありがとうございました
Commented by masa_the_man at 2010-04-28 21:52
sdiさんへ

>どちらがお得かとなると、共同開発のほうでしょうか

すでに巻き込まれている、とも見れますからね。

>取り決めに加わらない国が出てくるのは目に見えています

ですねぇ

>空軍大佐がJAXAを賞賛するのも、「仲間に引き入れてControlしたい」のかもしれません

そういうことです。

>一部から「変態的」と言われるほどある意味突き抜けた技術者集団ですしね。

そうなんですか。あと大阪のある大学の名前を出しておりましたっけ。コメントありがとうございました
Commented at 2010-04-29 07:40 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by miyosi at 2010-04-29 11:02 x
お久しぶりです、以前講演会に伺ったJAXAの下請けの下請けをしているものです。
宇宙開発ですが、リモートセンシングについては「開発」から「利用」にシフトしつつあります。ただし利用するにあたって国際協力は必須です。
例えば先日のハイチの大地震の際、日本の人工衛星の画像がいちはやく災害地に届いたのですが、このときはアメリカのデータ中継衛星の協力が必須でした。
また、複数の衛星の複数のセンサのデータを組み合わせて詳細なデータを作成することもしています。(A-Trainのことですが、同一の軌道をほぼ同じ時間に観測するのが味噌です)
最後に、今後世界で水資源をめぐって争いが起こる、とかいわれていますが、地球の水循環のデータをとるには地球全体を定期的に観測する必要があります。また、陸域のみならず海域のデータをとる必要もあるので、こういった分野には人工衛星での観測が必須になります。
実は10年前から日本とアメリカの共同開発した人工衛星が熱帯域の降雨観測をしておりまして、これで得られた知見をもとに全球観測を行う衛星が数年後に打ち上げられる予定となっています。こうゆうのも「パワー」なのかもしれませんね。
Commented by masa_the_man at 2010-04-29 22:36
waterloo さんへ

>ありがとうございます

お役に立てれば幸いです。コメントありがとうございました
Commented by masa_the_man at 2010-04-29 22:38
miyosi さんへ

>下請けの下請けをしているものです。

おおっ、これはありがたい!

>利用するにあたって国際協力は必須です。

なるほど。

>こういった分野には人工衛星での観測が必須になります。

そうなると完全に「協力」が必要になるわけで。

>こうゆうのも「パワー」なのかもしれませんね。

知りませんでした。宇宙では日米関係が緊密というのはこういう実績があるからですな。コメントありがとうございました
Commented by nanashi at 2010-04-29 23:28 x
アメリカは人間を送らず、上半身のロボットや無人シャトルを宇宙に送って、機器のメンテをさせるつもりなのでは?
地球周囲の宇宙を電磁波信号の媒体と考えて、宇宙関連投資の目的を その維持コストの最小化に変えたのでは?
Commented by masa_the_man at 2010-05-01 01:07
nanashi さんへ

>ロボットや無人シャトルを宇宙に送って、機器のメンテをさせるつもりなのでは?

まあそれはひとつあるでしょうねぇ。「リモコン」好きですから。

>宇宙関連投資の目的を その維持コストの最小化に変えたのでは?

ひとつの例として、衛星で太陽光を集めて地上に送る、というのがありますね。コメントありがとうございました
Commented by maitake at 2014-08-21 11:54 x
興味深くよませていただきました。
この空軍大佐(当時)は、この新しい考え方(宇宙共同開発派)について、論文を発表していたりしますか?ご存じであれば、ご教示いただけませんか?
Commented at 2014-08-22 10:23 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
by masa_the_man | 2010-04-27 12:16 | 日記 | Comments(22)