戦略や地政学の視点から国際政治や社会の動きを分析中


by masa_the_man
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28

マンデルソンの「中国さん、リードしてください」論

今日の甲州は完全に冬に逆戻りでして、甲府駅前の武田信玄公の像の横にある桜の花が寒そうでした。

さて、ちょっと前のものですが、イギリス労働党の重鎮であるマンデルソンの中国待望論をもう一度。

彼がイギリスのビジネス・ロビーの筆頭格であることを考慮しつつお読み下さい。

=====

We Want China to Lead

By PETER MANDELSON



●数ヶ月前、私は北京の共産党中央学院でスピーチを行ったが、そこで私は次世代の中国のリーダーたちは中国史上で最も国際主義的にならねばならないと言った。

●その後にコペンハーゲンでのサミットが開催され、ヨーロッパやアメリカの多くの人々は国際的な政治への参加にあまり乗り気ではない中国を目撃することになった。

●コペンハーゲンでますます明らかになったのは、われわれの中国に対する期待と、中国側の自らの役割と責任の分析にミスマッチがあるということだ。欧米諸国はもっとやる気のあるパートナーを望んでいるのだが、中国側はそのような期待に対して疑念をもつことが多く、自分にできる範囲のことだけに固執しがちだ。では欧米と中国の双方はどれだけ現実的なのだろうか?

●中国の世代交代は進んでおり、若い世代の中には過去二十年間の中国の勃興しかしらない人々もおり、いかなる経済の統制に対しても反発を感じるひともいるくらいだ。

●経済問題に関していえば、彼らの中で崩壊しはじめた西側の金融システムを信じているものはおらず、彼らが海外からの期待よりも国内の動向に注視するようになることは無理もない。

●過去二十年のうちに中国はアメリカとドイツを抜いて世界最大の輸出国となったのであり、もうすぐ日本を抜いて世界第二位の経済大国になる。また、中国は世界最大の海外の為替準備金を持っており、世界最大の二酸化炭素排出国だ。

●欧米諸国のリーダーたちはこの状態に焦りを感じている。しかしヨーロッパの人々が往々にして見逃しているのは、中国側のかかえる大きな問題に対処する必要から生まれた慎重な態度だ。彼らは中国側のリーダーたちよりも表向きは中国の圧倒的な勃興に自信を持っているようなのだ。

●中国のリーダーたちは自国に大いなる自信を持っているが、同時に彼らが直面している問題についてはかなり現実的な考えをもっている。彼らは現在のような長期的には輸出主導のモデルは続けられないことをわかっているし、国内需要の弱さや政府主導の融資は大規模の景気刺激策が実行されているいま、より多様で耐久性のあるものに変更する必要があると感じているのだ。

●ところがヨーロッパ側は年率10パーセントという成長率(世界不況でやや減ったとはいえ)を世界経済の秩序における巨大な地殻変動であるように見ている。

●ところが中国のリーダーたちはそれを農業社会から完全に工業的な社会へと二・三世代(しかも彼らは急速に高齢化している)の間に安定的に移行させるために仕事を創出する、最低限必要なものとして見ているのだ。
●われわれは中国を豊かなになった国であると見ているが、中国自身は自分たちのことを多くの面でまだ貧しい国であると見ているのだ。

●「彼らがどのように感じるのか」という問題は致命的に重要であるにもかかわらず、意外と見逃されやすい点である。彼らは二酸化炭素の全世界の排出目標を受け入れることの向こう側にあることを見据えている。つまり彼らはそれがいくら「正しいもの」であるとしても、中国の成長モデルに対する公然の批判に対しては猛然と反発するのだ。

●欧米は中国にリーダーシップの一翼を担ってもらいたいと願っている。しかし中国は自国の発展と安定に夢中であり、中国の意向が書かれていない国際的なルールに対しては疑惑の念をもっている。

●しかしこれには一理ある。なぜならグローバル・ガヴァナンスの仕組みはいまだに「太平洋」志向であり、IMFや世銀は中国の影響力の拡大やその他の新興経済国の実情を反映させて修正する必要がある。

●気候変動についての取り決めや国際貿易のルールづくりには、先進国が自分たちの経済的な優位を固めるために行っているように見えるようにしてはいけないのだ。

●しかし中国の地位をどうするかという点についてはまだ議論も多い。中国は誰にも指図されたくないし、リードされたくもないのだ。しかし同時に中国はまだリードする準備が整っているわけでもないし、そうしようとも思っていない。

●だが、効果的な多元主義は中国の取り組み参加がなければ実現不可能なのだ。中国が参加しなければ世界の気候の安定はないし、アジアやグローバルの安全保障の仕組みや、グローバルの貿易や金融取引も中国なしでは実現しない。

●長期的な観点からみれば、中国はこれらのことを他国と同じように必要としている。10億人がマイノリティーをブロックしている状態は、グローバル・ガヴァナンスの障害ではなくて、その終焉になるからだ。

●欧米の直面しているジレンマはこれだ:われわれは中国の発展を指示できないし、その問題を解決できない。しかもわれわれはそれを無視することもできないのだ。

●欧米は、中国が自分たちの関わっていない、もしくは自国の成長と安定に寄与しないようなグローバル・ガヴァナンスや多元主義のモデルを許すはずがないことを知る必要がある。

●しかし中国は自国が大きすぎることや、直面している問題が大きすぎること、そして「地球村」(グローバル・ヴィレッジ」は中国がガンコになったり孤立したりするにはあまりにも狭すぎるということを理解する必要がある。われわれはたしかに多少我慢すべきかもしれないし、時として摩擦を起すかもしれないが、いずれにせよ中国に成功していただく必要があるのであり、中国にもそろそろリードしはじめてもらわなければならないのだ。

===========

中国の「面子」を利用してなんとかリードしてもらおう、という感じですが、彼には「そもそも中国自身が中国をコントロールできない」という事実をまだわかっていないようで(苦笑

こういう論調の議論は、これから日本の財界系知識人からもいろいろと出てきそうですねぇ。ひとつの原型(アーキタイプ)としては参考になる例だと思います。
Commented by nanashi at 2010-03-30 00:05 x
要約すると、

中国さん、なぜ、我々と一緒に日本を刺身にして食うのを拒むの?
一緒に食べようよ

ということでしょうが、中国は日本の姿に将来の自分を重ねてぞっとしているのでしょう
Commented by 中川信博 at 2010-03-30 10:43 x
伊勢さんのメルマで貴著が取り上げられてました。
http://www.melma.com/backnumber_115_4805180/

中国は国家ではないのでガバナンスという概念はないのでしょう。正確に表現すれば「中国共産党が実効的に支配し搾取する人民」があるだけで、彼等の論理は、その人民がいればそこが支配地域なのですから。だから移民も参政権もナンセンス。中国共産党に支配されている、いわゆる「中国人」以外に地方参政権を付与する法案なら議論してもかまわないですが、憲法違反ですから付与は結局できません。
Commented by WIZARD03 at 2010-03-30 19:05 x
要するに言いたいことは二つ
1.我々は中国経済のバブル崩壊が近いと悟っており、ほかの誰かにババを引かせようとあせっている。
2.バブルが崩壊する前にco2排出量取引で少しでも儲けておきたい。

中国にリードして欲しい?
そんなのはリップサービスに過ぎず、バブル崩壊後ゴミのように捨てる事は明白です。
日本も対岸の火事と思ってはいけませんね、デフレを促進させて日本を安値で買い叩き、資本を吸い尽くしたあとどうなるか・・・。
Commented by elmoiy at 2010-03-30 21:07 x
>こういう論調の議論は、これから日本の財界系知識人からもいろいろと出てきそうですねぇ。

「スシ文化」のソフトパワー防衛戦略
ttp://newsweekjapan.jp/reizei/2010/03/post-132.php
私は「中国ルール」に依存して、欧米に対抗して「クロマグロ規制の先延ばし」を続けるのは非常に危険なように思います。その結果として文化摩擦が拡大し、マグロが食べられなかったり、通商関係全般に影響が出るのが怖いのではありません。それ以上に「絶滅危険動物への冷酷な態度を取る国」というイメージが一人歩きすることで、日本が必死に打ち出そうととしている環境イメージとの分裂が起きる、そして欧米から「日本叩き」ではなく「日本への関心の急激な低下」が起きるのが怖いのです。

このコラムで警告されているように、目先の利益に気をとられて、欧米諸国から離れて中国と手を組むというのは危険だと思いますけれどね。太平洋戦争当時と同じく、対日イメージをめぐる宣伝戦でも敗北する、という事態は避けたいものです。
Commented by waterloo at 2010-03-30 21:35 x
マグロの場合は養殖に成功していますね。

完全養殖のクロマグロ輸出へ、「循環型」供給に期待
ttp://www.afpbb.com/article/environment-science-it/environment/2710061/5498101

こういう所も、政府にはアピールしていって欲しいですが、外国メディアが、こんな情報を取り扱うメリットはない。ソフトパワーも露骨にメッセージを込めると敬遠されかねない。となるとPR企業やロビー活動を強化していくしかないんですかねえ。
Commented by nanashi at 2010-03-30 22:19 x
中国の力をうまく使うには、米英と仏が対立を演出しあいながら実は利益を分け合う行動を取っているのを見習うことだと思います。
米露もそれをやっている。現在米露が核軍縮で協調しているのは、対アジアで協調行動を取る前触れでしょう。
日中は、欧米の足並みが乱れそうな東欧や中東を分担して攻める必要があると思います。
Commented by Oink at 2010-03-30 22:22 x
中国製乳飲料を飲んで結石になった人ですね。

映画「マイ・フェア・レディ」にはこんなセリフが。
「レディと花売り娘の違いは、どう振る舞うかではなくどう扱われるかです。花売り娘として扱う教授には、私は、永久に花売り娘。レディとして扱う大佐の前では、レディになれます」

中国が目指している未来の中国と欧米が待ち望んでいる未来の中国の間には深くて広い水たまりがありそうです。TT

中国人の目指している全盛期は、唐か清あたりでしょうか?
欧米は、宋かキリスト教徒の中国にでもなってほしいんですかね?
Commented by 大阪人K at 2010-03-30 23:17 x
>欧米は中国にリーダーシップの一翼を担ってもらいたいと願っている。

>だが、効果的な多元主義は中国の取り組み参加がなければ実現不可能なのだ。

マンデルソンさんがどこまで本気かどうかは分かりません。
仮にイギリスが本気で中国をリーダーとして扱うのであれば、中国元をハードカレンシーとして認めるような発言があっても良いのではないでしょうか。
イギリスが中国に輸出した品物の代金を元で受け取ると発言をすればいいが、そこまでのことは言っていない。実際に代金として要求する通貨は、ドルかポンドでしょう。マンデルソンさんが「イギリスは中国の元で輸出代金を受け取ろう。」と言えば相当本気と思えますが、今回の発言内容だけでは何とも言えません。(尤も、マンデルソンさんなら言いかねないところがあるでしょうが・・・)

そんな中で中国にリーダーを求めたり礼賛すること自体、何だか空虚なものを感じずにはいられません。
Commented by masa_the_man at 2010-03-31 00:29
nanashiさんへ

>中国さん、なぜ、我々と一緒に日本を刺身にして食うのを拒むの?一緒に食べようよ

いやー、ちがうと思いますよ。

>中国は日本の姿に将来の自分を重ねてぞっとしているのでしょう

それは一部あると思いますね。ただしそこまで「狙われている」と思い込むのは単なる被害妄想かと。コメントありがとうございました
Commented by masa_the_man at 2010-03-31 00:31
中川さんへ

>伊勢さんのメルマで貴著が取り上げられてました。

これは他の方にもご連絡いただきました。ありがたいことです。

>中国は国家ではないのでガバナンスという概念はない

キツイですなぁ(笑)まあたしかに一理ありますが。

>憲法違反ですから付与は結局できません。

結局問題は「国民」という定義のところになりそうな。コメントありがとうございました
Commented by masa_the_man at 2010-03-31 00:33
WIZARD03さんへ

>1.我々は中国経済のバブル崩壊が近いと悟っており、ほかの誰かにババを引かせようとあせっている。

この論文じゃ見えませんが、その底にはあるでしょうな。

>2.バブルが崩壊する前にco2排出量取引で少しでも儲けておきたい。

これもありそうですね。ただしアメリカでも排出権取引は否定されてますから厳しいものがありますが。

>バブル崩壊後ゴミのように捨てる事は明白です。

いや、またその後にもコントロールを敷いてくるような。

>日本も対岸の火事と思ってはいけませんね、

これは完全に同意します。ここらへんの欧米の考えを見抜いておく必要はあるかと。コメントありがとうございました
Commented by masa_the_man at 2010-03-31 00:35
elmoiy さんへ

>それ以上に「絶滅危険動物への冷酷な態度を取る国」というイメージが一人歩きする

ありますね。シーシェパードがここに狙いを定めたというのもわかりやすい。

>欧米から「日本叩き」ではなく「日本への関心の急激な低下」が起きる

まあハッキリいえば「倫理戦」ですね。

>対日イメージをめぐる宣伝戦でも敗北する、という事態は避けたい

その兆候が至る所で現れているような・・・コメントありがとうございました
Commented by masa_the_man at 2010-03-31 00:37
waterloo さんへ

>外国メディアが、こんな情報を取り扱うメリットはない。ソフトパワーも露骨にメッセージを込めると敬遠されかねない

たしかに。

>となるとPR企業やロビー活動を強化していくしかないんですかねえ。

何よりもこれは結局日本人自身のやる気の問題にすべて来てしまう、ということですな。コメントありがとうございました
Commented by 焔剣 at 2010-03-31 00:38 x
>中国自身が中国をコントロールできない

自国のコントロールが上手い国って実はめったに無いような気が(笑

まあ、国際社会が闘争の場である以上、警戒されるのもやむなしでしょう。
Commented by masa_the_man at 2010-03-31 00:40
nanashiさんへ

>米英と仏が対立を演出しあいながら実は利益を分け合う行動を取っているのを見習うこと

これは半分同意します。

>米露もそれをやっている。現在米露が核軍縮で協調しているのは、対アジアで協調行動を取る前触れでしょう。

北極海なんかではこれを見越してやってますね。

>日中は、欧米の足並みが乱れそうな東欧や中東を分担して攻める必要があると思います。

そこまで計算して政治を行える人間が政府にいればいいですがねぇ。コメントありがとうございました
Commented by masa_the_man at 2010-03-31 00:42
Oink さんへ

>中国製乳飲料を飲んで結石になった人ですね。

わはは、そうです(笑

>どう振る舞うかではなくどう扱われるか

なるほど。コンスト的な(笑

>中国と欧米が待ち望んでいる未来の中国の間には深くて広い水たまり

ありますねぇ。

>中国人の目指している全盛期は、唐か清あたりでしょうか?

唐かも知れません。

>欧米は、宋かキリスト教徒の中国にでもなってほしいんですかね?

「コントロールしやすい」というのがミソですね。コメントありがとうございました
Commented by masa_the_man at 2010-03-31 00:44
大阪人Kさんへ

>マンデルソンさんがどこまで本気かどうかは分かりません。

これがイギリス人の政治家です(笑

>中国元をハードカレンシーとして認めるような発言があっても良いのではないでしょうか。

しないでしょうなぁ(苦笑

>尤も、マンデルソンさんなら言いかねないところがあるでしょうが・・・

そうなるとこの先の彼の発言が楽しみですよね。

>中国にリーダーを求めたり礼賛すること自体、何だか空虚なものを感じずにはいられません

基本的に「自国の利益優先」ですから。コメントありがとうございました
Commented by masa_the_man at 2010-03-31 00:46
焔剣 さんへ

>自国のコントロールが上手い国って実はめったに無いような気が(笑

それはそうなんですが、一国だけいい例がありますよ。日本です(笑

>国際社会が闘争の場である以上、警戒されるのもやむなしでしょう。

まさにその通りですね。コメントありがとうございました
Commented by at 2010-04-01 01:03 x
そういえば麻薬がらみで捕まった日本人が4月に死刑執行されるそうです。
イギリスも抗議して腰砕けになりましたが、日本は抗議する前に腰砕けになりそうですね。
Commented by masa_the_man at 2010-04-01 01:16
派 さんへ

>イギリスも抗議して腰砕けになりましたが、日本は抗議する前に腰砕けになりそう

激しく同意してしまう自分がコワい(苦笑)コメントありがとうございました
by masa_the_man | 2010-03-29 23:04 | 日記 | Comments(20)