戦略や地政学の視点から国際政治や社会の動きを分析中


by masa_the_man
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28

「精神」の大切さ

今日のイギリス南部は久しぶりによく晴れまして、昨日の雨もあったおかげか町の中にある雪はほとんど溶けてなくなっておりました。

さて、世界のニュースとはまったくかかわなりのない状況ではじまった翻訳プロジェクトですが、ものすごいスピードで進んでおり、あらためてネット時代の進化というものを感じております。

おかげさまで40人近い人々に助けていただいており、私の最も重要な仕事は翻訳そのものの作業というよりも交通整理のほうにある感じです。

翻訳していただいたものをあらためて読んでわかったんですが、この本の議論はどちらかというとシンプルです。

ただしそのシンプルさを構築するために、かなり広い範囲の知識を使って議論の土台を構築しているところがミソでしょうか。

本の構成は拙訳のミアシャイマーの『大国政治の悲劇』とほとんど一緒で、まず最初に全体の説明があり、先行研究の文献紹介をして、その次に一番複雑な理論の話をして、そこからケーススタディをいくつかやり、最後に結論にもっていく、という黄金パターンです(笑

この著者であるルボウのすごさは、その理論の部分の構築(特に2と3章)にあるわけですが、ここで得意のギリシャ神話や哲学の概念をふんだんに取り入れて、国際関係論ではまったく注目されなかった「動機」(motives)という面(つまりファースト・イメージ)から国際政治を動かすものを探るわけですな。

もちろん結論は「精神」(spirit)にあるということになるわけですが、この「精神」という概念が少々やっかいです。

なぜかというと、人間と国家を動かす強力なものであるために、彼らをリスクをかえりみない行動に突き動かすというマイナス面も持っているからです。

じゃあ「精神」などいらないかというとそういうわけではなく、人間や国家にはやっぱりこれが必要。

そうなると、本当に大切になってくるのは「それをうまくあやつるバランス感覚」ということになります。

色々と難しい概念や翻訳しづらい部分もかなりあるのですが、プロジェクトに参加された有志の方には本当に熱意(つまりリスクを恐れない精神)を持ってやっていただいております。ありがたいことです。
b0015356_8151014.jpg

Commented by 中川信博 at 2010-01-18 10:20 x
翻訳プロありがとうございます。何もできない自分が情けない。
さてリアリスト紹介第2弾です。小梛先生の師、剣聖中山博道先生ですが、小梛先生が15歳で海軍航空隊に志願し、あす出征という日に稽古終了後、弟子たちを人払いされ小梛先生に長谷川英信流や神道無念流などの形をみせてくれたそうです。それが終わった後で弟子たち小梛先生のところに来て、殺気だった眼差しで「どうだった」と問いつめたのですが、まだ若かった小梛先生は足がしびれてよく覚えていなかった。中山先生は弟子にも本物の形を教えていなかったのです。形の稽古するのも弟子が寝静まった夜中にしていた。中山先生は「弟子に本物を教えたら自分が斬られるとおっしゃっておられたそうです。ですから斬られる危険がないご子息の善道先生にしか教えていなかった。武士とはそういうものだとおっしゃっています。
Commented by Oink at 2010-01-18 19:53 x
まったく知らない人ですが、著書の「地政学」で語られているフランシス・フクヤマに近い?ような感じを受けました。
Commented by unimaro at 2010-01-18 23:38 x
いつも興味深く勉強になるエントリをありがとうございます。

>「それをうまくあやつるバランス感覚」

これをコントロールするのが理性ではないのでしょうか。
両親にその教育を求めても信頼ならないので、社会的教育というものが一番大切に思いますが、それもできない場合はやはり学校教育しか、、
でも我が国ではそれも不安ですね。
Commented by masa_the_man at 2010-01-22 05:11
中川さんへ

>何もできない自分が情けない。

いえいえ、そんなことはありません。待っていていただくことも重要です。そもそも需要がないとわれわれのやっているプロジェクトも意味ないですから(苦笑

>弟子にも本物の形を教えていなかった

秘伝なわけですな。

>斬られる危険がないご子息の善道先生にしか教えていなかった。武士とはそういうもの

なるほど。基本的に彼らの人生はサバイバル重視ですからね。コメントありがとうございました
Commented by masa_the_man at 2010-01-22 05:12
Oink さんへ

>フランシス・フクヤマに近い?ような感じを受けました。

そうなんですよね。フクヤマもギリシャ哲学から説いているんですが、問題は彼がそれほどそこから議論を発展させなかったことですよね。ルボウはこれをかなり綿密にやってます。コメントありがとうございました
Commented by masa_the_man at 2010-01-22 05:22
unimaroさんへ

>これをコントロールするのが理性ではないのでしょうか。

そうなんです。この辺についてはけっこう原著でも綿密にされておりますので、いずれ刊行した時にはご披露できるかと。

>それもできない場合はやはり学校教育しか、、

その点ではイギリスもアメリカも似たようなものですね。というか、どの先進国でも直面している問題なのではないでしょうか。

>でも我が国ではそれも不安ですね。

そうなりますなぁ。コメントありがとうございました
by masa_the_man | 2010-01-18 08:16 | 日記 | Comments(6)