戦略や地政学の視点から国際政治や社会の動きを分析中


by masa_the_man
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ニーバーな正月

今日のイギリス南部は朝から快晴でして、気温はかなり低め。正月そうそうからこちらは珍しく快晴がつづいております。

さて、2010年もいよいよ明けましたがみなさんいかがお過ごしでしょうか。

私はとくに酒を飲んだりおせち料理を食べてゆっくりするわけでもなく、いつものように論文を書いたり原稿の直しなどをやっているうちにいつの間にやら正月になっていたという感じですが、さすがに年が変わると気分も一新という感覚があります。

個人的には新年の目標設定ということで、やはりはやいうちに論文を仕上げてしまおうということが一番大きいでしょうか。

それと現在準備している『進化する地政学』の続編の訳を春先に出版させる他に、夏すぎにはもう一冊翻訳本を出したいと考えております(原著はかなりの名作なので乞うご期待)。

また、そろそろ自著のほうもご無沙汰なので、それも今年中に何冊か形になればいいなと考えております。ああ、そうなると全く時間がない(泣

そういえば今年の元旦には、去年の暮れの「オバマ・ドクトリン」のスピーチの影響からか、なぜかラインホールド・ニーバーの本を読みたくなって、日本から持って来ていた名著『道徳的人間と非道徳的社会』の訳本と、こっちで手に入れた『アメリカ史のアイロニー』(あのベイセビッチが序章を書いている再版本)を読み返しておりました。

歴史本も良いのですが、わたしは社会科学系の訓練を受けてしまった人間なので、どうしてもこういう「格言」や「名言」がやたらと含まれているような本を手にしてしまいがちです。

こういう混沌としてきた世情の時にはニーバーのようなリアリストの名言の数々はけっこう身にしみるものがあります。たとえば

「人間は、理性に支配されるよりも、もっと想像力によって支配されているものだ」

という言葉や、

「教養ある人々は・・・適切な教育技術が最後に“社会化された人間”をつくりだすことに成功すれば、それによって社会の諸問題は解決されるであろうといった希望にしがみついているのである」

というものや、

「道徳的善意や社会的知性には決定的な限界があり・・・その限界をこえてそれらが一つの社会をそれ以上にいたらしめることはない」

とか、

「どの国民共同体の普通の市民も、センチメンタルな仕方では平和をのぞんでいるが、それにもかかわらず羨望や嫉妬や傲慢や頑迷や貪欲の衝動におぼれ、諸共同体間の闘争を志向するものである」

のほかにも、

「一集団内部におけるアナーキーを防止するための権力が、集団相互間におけるアナーキーを助長する」

ということから、

「社会は永続的戦争状態にある」

ということになって、

「永続の平和とか人間社会の兄弟性などの夢は、けっして完全に実現されることはないだろうという予言をあえてするほうが無難なのだ」

という言葉が出てくるわけです。ああ、素敵な名言がたくさん(笑

新年早々からバリバリのリアリズムを読んでいるわけですが、不思議と気持ちが暗くなるということはなく、かえってスッキリした感じになったのはどういうことなんでしょうか。

日本ではニーバーが牧師であった関係からか、ミッション系の出版社で翻訳がけっこう出されておりますが、それにしてもキッツイこと書いてますから、訳した人たちはちょっと微妙な感じであったろうことがなんとなく想像できます。

ということで、「カオス化」がますます進む中でリアリズムがさらに重要になりそうですが、本年もどうぞよろしくお願いします。
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Commented by お部長さん at 2010-01-03 12:09 x
あけましておめでとうございます。
素敵な町並みですね。ここもロンドンなのでしょうか?
昨年から時々読ませていただいています。今年もよろしくお願いいたします。
Commented by Rogue Monk at 2010-01-03 12:35 x
明けまして、おめでとうございます。

>バリバリのリアリズム
でも却って安心できるものがありますね>リアリズム
「脳天気な未来はないけれど、
 足下はしっかりしたものにできる」
という感じがあります。

本年もよろしくお願いいたします。
Commented by waterloo at 2010-01-03 13:44 x
>そろそろ自著のほうも

期待しております。

>ラインホールド・ニーバーの本
>道徳的人間と非道徳的社会

名言がすばらしいですね。でも絶版でした…(泣)
Commented by sdi at 2010-01-03 14:18 x
>ミッション系の出版社で翻訳がけっこう出されておりますが、それにしてもキッツイこと書いてますから
オバマ大統領がよく引用していたことからリベラルな人物と思いきや、リアリズムな著作の内容に私も驚きました。
Commented by sirimonkon at 2010-01-03 14:57 x
理想を胸に抱きつつも、現実から目を背けずにそれと格闘し、少しずつでも前に進もうとする人間は真のロマンチストですね。お花畑白痴ロマンチストとは違う。
我が国の総理にも読んでもらいたい本ですね。

本年も何卒よろしくお願い申し上げます。
Commented by at 2010-01-03 16:18 x
ヨーロッパのキリスト教圏は死刑を廃止しているわけですが、
中国でイギリス人が死刑になりました。
自信満々に死刑にする中国と、腰引けまくりで非難する英国という感じに見えたんですが、実際英国にいてどうですか?
日本ならすぐ死刑を取りやめそうな気もしますが、
中国と様にガンとした態度で臨み続ければ、中国に何言っても
しょうがないよな・・・みたいな感じで、非難をやめてしまうんでしょうかね。
世界中どの国も中国との摩擦を避けようというのが、
変わる事のない流れなのでしょうか。

※サイトの色が突然メルヘンな感じになって驚きました(汗)
Commented at 2010-01-03 20:43 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by nanashi at 2010-01-03 20:47 x
世界史は、日本史をまだ知っていない

日本史は理想ではなく、事実
Commented by 中川信博 at 2010-01-03 21:43 x
ラインホールド・ニーバーの祈り
変わるべきことについてそれを変える勇気を与えよ。
変えることができないものについてはそれを受け入れる冷静さを与えよ。
そして変えることのできるものと、変えることのできないものを識別する知恵を与えよ。

追記
日本のお正月は時代劇。時代劇専門チャンネルは織田、豊臣、徳川の乱世のオンパレードです。キーワードは「乱世の習い」。政略結婚、裏切り、暗殺、生き残り。ミアシャイマーもびっくりのオフェシブ・リアリズムですな~。
Commented by 中川信博 at 2010-01-03 21:44 x
訂正
オフェンシブ・リアリズム
Commented by iraora at 2010-01-05 01:07 x
あけましておめでとうございます!

>不思議と気持ちが暗くなるということはなく、かえってスッキリした感じになったのはどういうことなんでしょうか。

「理想と現実」と「ポジティブとネガティブ」は似て異なるものだからではないでしょうか。
理想=ポジティブ、現実=ネガティブと混同されますが
理想と現実は「陰と陽」に近く、ポジティブとネガティブは正と負という「善と悪」のような捉え方に思えます。
ある物事を「理想と現実」と区別している人と「ポジティブとネガティブ」と区別している人では話が噛み合わず、カオス理論でいうバタフライ効果の初期設定の違いのように話せば話すほど溝が深まるんじゃないかと思います。
なんてことをちょうど考えてたので書き込ませていただきました。
今年もよろしくお願いします。
Commented by Oink at 2010-01-05 01:40 x
明けましておめでとうございます。

ゴルバチョフが出演した、世界一受けたい授業、核廃絶問題や
NHKBSで放送していたオバマ核廃絶へのなんたらとかいう
番組をとりあえず録画しておきましたが見る気がしない。orz

癒される素敵な名言集ですか。これが好きですかね。
「死が全てを解決する。人間が存在しなければ問題は起こらない」
Commented by 山田洋行 at 2010-01-05 07:07 x
少々遅くなってしまいましたが、あけましておめでとうございます。

「進化する地政学」の下巻、タイトル未公開の訳書、奥山さんの著作と、期待しております。

今年も一年宜しく願い致します。
Commented by masa_the_man at 2010-01-05 07:07
お部長さんへ

>素敵な町並みですね。ここもロンドンなのでしょうか?

いや、この写真はクリスマス前後に行ってきた大陸のほうでとってきました。

>昨年から時々読ませていただいています。

最近はあまり更新できてませんが、ぜひよろしくお願いします。コメントありがとうございました
Commented by masa_the_man at 2010-01-05 07:08
Rogue Monk さんへ

>でも却って安心できるものがありますね>リアリズム

そうなんですよね。まあ「ありのまま」を見るだけですから失望することはありませんし。

>足下はしっかりしたものにできる

そういうことでしょうね。コメントありがとうございました
Commented by masa_the_man at 2010-01-05 07:10
waterloo さんへ

>期待しております。

あまりハードルは上げていただきたくないんですが(苦笑)、とりあえず古典地政学の理論について解説したものは出したいところだなぁと考えております。

>名言がすばらしいですね。でも絶版

私が買った時は普通に本屋さんに並んでいたはずなんですが・・・でもこれってかなり前の話ですからねぇ。コメントありがとうございました
Commented by masa_the_man at 2010-01-05 07:12
sdi さんへ

>オバマ大統領がよく引用していたことからリベラルな人物と思いきや、リアリズムな著作の内容に私も驚きました。

そういえばニーバーは民主党のアドバイザーもやってましたよね。とりあえず「格言」が多いので参考になります。コメントありがとうございました
Commented by masa_the_man at 2010-01-05 07:14
sirimonkon さんへ

>前に進もうとする人間は真のロマンチストですね。お花畑白痴ロマンチストとは違う。

まあ理想も大切なんですけどね。ようはバランスの問題なのかも知れませんが。

>我が国の総理にも読んでもらいたい本ですね。

わはははは。

>本年も何卒よろしくお願い申し上げます。

また何かあったらファイル送ります。コメントありがとうございました
Commented by masa_the_man at 2010-01-05 07:18
派 さんへ

>中国でイギリス人が死刑になりました。

なりましたねぇ。こちらでもけっこうなニュースになってました。

>自信満々に死刑にする中国と、腰引けまくりで非難する英国という感じ

その通りですな(苦笑

>世界中どの国も中国との摩擦を避けようというのが、変わる事のない流れなのでしょうか。

そういうことかも知れません。これこそがまさに「世界の中国化」なのかも知れませんが。

>サイトの色が突然メルヘンな感じになって驚き

正月三日だけの「狂い咲き」です(笑)コメントありがとうございました
Commented by masa_the_man at 2010-01-05 07:21
waterlooさんへ

>自分の目的を達成するための不安定条件を縮小する思考である所?自力本願?

自力本願なところは確実にありますね。

>論文も勝手に期待

アイディアはけっこう以前からまとまっていたんですが、いざ書き始めてみるとなかなか苦戦しております(苦笑)今月中までになんとか書き上げてみたいのですがどうなることやら。コメントありがとうございました
Commented by masa_the_man at 2010-01-05 07:24
iraora さんへ

>「理想と現実」と「ポジティブとネガティブ」は似て異なるもの

ああ、鋭いご指摘だと思います。たしかにそうですなぁ。

>理想と現実は「陰と陽」に近く、ポジティブとネガティブは正と負という「善と悪」のような捉え方に思えます。

おおっ、これは私の横綱論にもつながるところが。

>話が噛み合わず、カオス理論でいうバタフライ効果の初期設定の違いのように話せば話すほど溝が深まる

これって学者同士の対談なんかでけっこうみかけるんですよね。前提そのものが違うというやつですな。コメントありがとうございました
今年もよろしくお願いします。
Commented by masa_the_man at 2010-01-05 07:28
nanashi さんへ

>世界史は、日本史をまだ知っていない 日本史は理想ではなく、事実

うーん、どうなんですかね。私の感覚ではかなり知られているほうだと思うんですが。まあその「解釈」はだいぶ違和感あるものが多いですが。コメントありがとうございました
Commented by masa_the_man at 2010-01-05 07:31
中川さんへ

>ラインホールド・ニーバーの祈り

これ有名みたいですね。例の本の最後にも掲載されておりました。

>識別する知恵を与えよ。

神に「もとめて」ますねぇ。

>キーワードは「乱世の習い」。政略結婚、裏切り、暗殺、生き残り。ミアシャイマーもびっくりのオフェンシブ・リアリズム

「生き残り」なんでしょうなぁ。そういう時代背景が年末年始の番組に影響されるというのは面白い。コメントありがとうございました
Commented by masa_the_man at 2010-01-05 07:32
Oink さんへ

>とりあえず録画しておきましたが見る気がしない。orz

はははは(笑

>「死が全てを解決する。人間が存在しなければ問題は起こらない」

これをいいかえると、「人間が生きている限り、そこに問題がある。」ということになるでしょうか。そしてそれはつまり「人間に問題はつきものだ」みたいな(笑)コメントありがとうございました
Commented by masa_the_man at 2010-01-05 07:33
山田さんへ

>「進化する地政学」の下巻、タイトル未公開の訳書、奥山さんの著作と、期待しております。

とりあえず三冊は行きたいですねぇ。がんばります。コメントありがとうございました
by masa_the_man | 2010-01-02 09:47 | 日記 | Comments(25)