戦略や地政学の視点から国際政治や社会の動きを分析中


by masa_the_man
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軍事オリエンタリズム

久しぶりにお勧めの本の紹介を。

戦略文化に関する最新研究です。

Military Orientalism: Eastern War Through Western Eyes
by Patrick Porter

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基本的な議論としては、

「文化は相手の戦い方を理解する上で大切だが、それにこだわりすぎても本質を見誤るだけだ。なぜなら敵は勝利のために伝統的な文化をうちやぶるようなことをしてくるからだ」

というものです。文化の重要性を論じながらも、そのアイディアのあやふやさを指摘している、という感じでしょうか。

オリエンタリズムの考え方をつかって、西洋は東洋の他者を通じて自分たちを見ることができる、みたいなことも書いております。

著者はキングスカレッジの若い先生みたいですね。

具体的な章の内訳ですが、

1、軍事オリエンタリズムについて
2、戦争と文化について考える
3、日露戦時の日本の戦いかたについてのイギリスの観察
4、西洋諸国のモンゴルについての見方
5、タリバンは文化リアリストである
6、イスラエルとレバノンの戦争について

という感じになります。

なかなか名言があって、たとえば

「戦略は生き残りをかけた戦いであると同時に、アイデンティティーについての戦いでもある」

みたいなことがさらっと書いてあったりします。

やや細かい字ですが、本文は200ページ弱とそれほど長くありません。議論もけっこうコンパクトにまとまっていて読みやすい。

写真を見てもおわかりように、実は日本の戦争の仕方が西洋人から見てどのように映ったのかということが詳しく書かれております。映っているのは戊辰戦争のころの長州侍ですな。

ちなみに背表紙にある推薦文には、なんと私の先生とC教授、それにキルカレンという豪華なメンバーが(笑
Commented by nanashi at 2009-12-18 11:42 x
ウォー貴重な本だ
白人の目を通して自分を見ることを経験できる
それは本の内容以外に様々な情報を与えてくれる
Commented by sirimonkon at 2009-12-18 12:30 x
これはそそりますねー。ほしい。
なかなか迫力のあるいい写真ですね。
Commented by elmoiy at 2009-12-18 14:31 x
>軍事オリエンタリズム

「自由と民主主義のために自発的に従軍する市民兵士から成り、厳しい訓練や軍紀に特徴付けられる文明的な西洋の軍隊は、飛び道具に依存し、奇襲やゲリラ戦法を駆使して決戦回避をはかる臆病で野蛮な非西洋の軍隊とは対照的に、正々堂々とした正面からの近接戦を求め、それゆえに圧倒的な軍事的優位を保ってきた」というヴィクター・デイヴィス・ハンソンの主張がこの典型ですね。

>なぜなら敵は勝利のために伝統的な文化をうちやぶるようなことをしてくるからだ

軍事と直接関係はありませんが、第二次世界大戦中、英領マラヤに進駐していたある日本人将校は、英国の“間接統治”のほうが日本の“直接統治”より現地人に評判がいいことを知ってショックを受けたそうです。彼はその経験を生かし、戦後、企業戦士としてロンドンに駐在したとき、英国人を日本人と現地人従業員の間の地位に就け、その人物を通してビジネスを行ったとか。
Commented by touge at 2009-12-18 18:17 x
中身もそうですが、写真がとても気になります。維新後有名になった人物がいるのか? 写真の構図も演劇の宣伝写真のような感じなので、もしかしたら英国人が無理に頼んで撮影した"半分やらせ"のものかも?
まぁとにかく、イギリスには今の日本人が知らない貴重な写真がまだまだ
たくさんあるのだろうなー。
Commented by nanashi at 2009-12-19 00:05 x
明治維新はイギリスのシナリオだという観点も維持するべき。
多くの関係者は暗殺される
Commented by masa_the_man at 2009-12-19 12:12
nanashi さんへ

>白人の目を通して自分を見ることを経験できる

少し読んでみましたが、なかなか面白いことが書いてありました。

>明治維新はイギリスのシナリオだという観点も維持するべき。
多くの関係者は暗殺される

まああるとは思いますが、どこまで「コントロール」できていたかは謎ですね。コメントありがとうございました
Commented by masa_the_man at 2009-12-19 12:13
sirimonkon さんへ

>これはそそりますねー。ほしい。

おすすめです。うちの先生がミーティングで絶賛してました。

>なかなか迫力のあるいい写真ですね。

これはWIKIからとってきたやつみたいです。どこにあるのかわかりませんが・・・・それにしてもなんでこの頃の日本人の顔って黒いんでしょう。やっぱりそれだけ汚かったということなんですかねぇ?それとも写真映り?コメントありがとうございました
Commented by masa_the_man at 2009-12-19 12:15
elmoiyさんへ

> ヴィクター・デイヴィス・ハンソンの主張がこの典型ですね。

その通りです。

>英国の“間接統治”のほうが日本の“直接統治”より現地人に評判がいいことを知ってショックを受けたそうです。彼はその経験を生かし、戦後、企業戦士としてロンドンに駐在したとき、英国人を日本人と現地人従業員の間の地位に就け、その人物を通してビジネスを行ったとか。

ここでも間接戦略が(笑)しかしこれはたしかにスマートなやり方ですね。イギリス人はそんなに自己主張しませんし。コメントありがとうございました
Commented by masa_the_man at 2009-12-19 12:16
touge さんへ

>もしかしたら英国人が無理に頼んで撮影した"半分やらせ"のものかも?

可能性大ですね。

>まぁとにかく、イギリスには今の日本人が知らない貴重な写真がまだまだたくさんあるのだろうなー。

だと思います。そういうの見てみると面白そうですよね。コメントありがとうございました
Commented by 柴崎力栄 at 2009-12-19 20:34 x
ウィキペディアで、カテゴリ「戊辰戦争で戦死した人物」「西南戦争で戦死した人物」に、人物の項目を検索して、入れる作業をやっていて気になったのは、戦闘中に形勢不利となると自決した人物が多かったこと。民家や小屋の主にお金を払って買い取り、その中に立てこもって火を放つなど。最後まで戦うのではなく、途中で死を選ぶとは、いまの日本人には理解し難いところがあります。その本は注文したので月曜日には届くでしょう。
Commented by masa_the_man at 2009-12-20 09:15
柴崎さんへ

>気になったのは、戦闘中に形勢不利となると自決した人物が多かったこと。

ああ、なるほど。

>最後まで戦うのではなく、途中で死を選ぶとは、いまの日本人には理解し難いところがあります。

お金を払って死に場所をねぇ。まあ「恥」の思想なのかも知れませんが。

>その本は注文したので月曜日には届くでしょう。

ぜひ楽しみにしてて下さい。なかなか名言が含まれております。コメントありがとうございました
Commented by 柴崎力栄 at 2009-12-22 11:01 x
真ん中の人物は、高杉晋作のように見えます。
Commented by タカダ at 2009-12-22 16:27 x
オリジナルの画像をみつけました。薩摩藩士のようです。

blog.livedoor.jp/sumomonohondana/archives/cat_52225.html

晋作先生は、残念ながら維新のまえに病気で他界しております。ドラマ『坂の上の雲』では、日清戦争のときに、伊藤博文総理の口から、高杉先生の話が出ているので、没後30年だってもその印象は痛烈だったのでしょう。
Commented by 柴崎力栄 at 2009-12-24 21:46 x
奥山さんが紹介している本には、"Jacket Design :Fatima Jamadar,Jacket Image: Samurai of the Chosyu clan, during the Boshin War period by Felico Beato taken from Wikipedia under Commons Basis"書いてあります。どこかでだれかが間違えているみたいです。私の名前に、ウィキペディアコモンズの当該urlを入れてあります。
Commented by 柴崎力栄 at 2010-01-05 19:50 x
中西立太編『日本の軍装--幕末から日露戦争』、幕末軍事史研究会『武器と防具 幕末編』を見てみましたが、戊辰戦争開戦以降だと、後列に立っている4名の軍服の上腕に付されている「合印」の上に、新政府側を示す「錦章」が付いているはずです。横二本の線の下になにかの印の付いている「合印」が何の徽章であるかは、いまのところ確認できていません。もう少し前の時代の写真である気がします。

撮影者のベアドは、1866~67年に横浜から長崎に出向き、上野彦馬と交遊し、スタジオを借りて撮影もしているようです。4回長崎を訪れたそうで、高杉晋作・桂小五郎・伊藤博文が、長崎あるいは下関で、ベアドの被写体になった可能性はあり得ます。もう少し時間をかけて調べてみます。

前列中央で左向きに座っているのが桂(木戸孝允)の角張った顔に見えて仕方ありません。なお、薩長同盟成立直後の時期には、高杉晋作は薩摩拵の刀をさしていたそうですので、中央の人物の刀が薩摩拵であってもおかしくはありません。歴史作家桐野作人さんのブログ(私の名にurl)でそういう指摘があります。
Commented by 柴崎力栄 at 2010-01-05 20:05 x
奥山さん。この本 Military Orientalism を年末年始に通読しました。「戦っている内に相手に似てくる」ということが結論らしい。戦略と戦術の間に、作戦レベルがあるのが自明の前提として論述がなされていることが印象に残りました。

別件。東京駅周辺の本屋を見て歩くと、戦略や地政学の棚が、丸善(日本橋店、丸の内本店)にはないのに、八重洲ブックセンターにはある。後者で、Geoffrey Till著、SEAPOWER: A Guide for the Twenty-First Centuryを買ってきました。これはシーパワーについての標準的な教科書なのでしょうか。裏表紙の推薦のことばの最初はコリン・グレイ先生ですね。
Commented by 高橋和司 at 2010-01-06 01:44 x
>柴崎さま

ご存じかもしれませんが、八重洲ブックセンターは鹿島平和研究所とつながりがあるので、外交とか国際政治とかに関心が強いのかもしれません。それで本棚に戦略・地政学があるのでしょう。
Commented by masa_the_man at 2010-01-06 06:18
タカダ さんへ

>薩摩藩士のようです。

薩摩藩士ですか。じゃあ本のほうは間違いですな(苦笑

>伊藤博文総理の口から、高杉先生の話が出ているので、没後30年だってもその印象は痛烈だったのでしょう。

彼の大先輩ですからねぇ。コメントありがとうございました
Commented by masa_the_man at 2010-01-06 06:24
柴崎さんへ

>どこかでだれかが間違えているみたいです。

みたいですなぁ。出版社でしょうか。

>もう少し前の時代の写真である気がします。

なんだか出所が怪しいですな(笑

>高杉晋作・桂小五郎・伊藤博文が、長崎あるいは下関で、ベアドの被写体になった可能性はあり得ます

これは興味深いですなぁ。ぜひ続報をお願いします

>この本 Military Orientalism を年末年始に通読しました。「戦っている内に相手に似てくる」ということが結論らしい。

それと戦略文化の「変化」ということですよね。なかなか示唆に富む素晴らしい本です。

>作戦レベルがあるのが自明の前提として論述がなされていることが印象に残りました。

さすが目のつけどころが違いますね(笑)

>これはシーパワーについての標準的な教科書なのでしょうか。裏表紙の推薦のことばの最初はコリン・グレイ先生ですね。

その通りです。第二版の青いやつですよね?ほぼ教科書扱いですな。この本もいいのですが、私は同著者が80年代に出したMaritime Strategy in the Nuclear Ageという本のほうが好きです。絶版なのでなかなか手に入らないのですが。コメントありがとうございました
Commented by masa_the_man at 2010-01-06 06:25
高橋さんへ

>八重洲ブックセンターは鹿島平和研究所とつながりがあるので、外交とか国際政治とかに関心が強いのかも

とにかく私の本を置いてくれる本屋はいい本屋ということで(笑)コメントありがとうございました
Commented by ぱんだ at 2010-02-14 20:22 x
軍事オリエンタリズム読みました。これぐらいだったら、事例を飛ばせば、一日で読めちゃいますね。文化の話だから映画がいっぱいでてくるんすかね。しかし、タリバンとわが帝国陸海軍の英霊を一緒にされるのはたまりませんね。筆者は、クラウゼビッツは時代遅れという立場の人ですね。良い本をご紹介いただきどうもありがとうございました。
Commented by masa_the_man at 2010-02-15 05:52
ぱんださんへ

>文化の話だから映画がいっぱいでてくるんすかね

映画ってけっこう重要ですからね。

>タリバンとわが帝国陸海軍の英霊を一緒にされるのはたまりません

まあそういう風に見るのが彼らの特徴です。

>筆者は、クラウゼビッツは時代遅れという立場の人ですね。

今度講演会に行ってくるので直接色々話を聞いてみたいと思います。コメントありがとうございました
by masa_the_man | 2009-12-18 08:11 | おススメの本 | Comments(22)