戦略や地政学の視点から国際政治や社会の動きを分析中


by masa_the_man
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ストローン氏の話:その3

今日のイギリス南部は朝から雨と晴れ空が連続するちょっと忙しい一日でした。気温もけっこう低めです。まあもうすぐ師走なので当然かも知れませんが。

そういえば昨日のことですが、「軍事情報」という知る人ぞ知るメルマガで拙訳『戦略の格言』が紹介されておりまして、そのメルマガ主の方のコメントがなかなか鋭い点を突いておりましたのでちょっとご紹介。

この著者の方は、


通読して思ったのは「戦略とは、実践そのものである」ということ・・・・実践である以上、机上の空論は厳に排除されねばなりません。戦略家と、いわゆる学者の違いはこの点にあるのでしょう。グレイ教授は疑いなく実践者です。


と書かれておりますが、これは私の先生が聞いたら一番喜びそうな言葉です(笑)なんせ彼が目指しているのは「戦略家」であり、「学者」ではありませんので。

このメルマガの著者の方はそういう意味でかなり鋭いところを掴んでいらっしゃると思いました。

さて、ストローン氏の話をまとめます。

前回ではアロンとガロアがフランスの敗戦を目撃したことによって彼らの中で「戦略の対話」が生まれ、これが彼らの戦略センスを向上させたということを述べましたが、これと全く同じ体験をしている人がおりました。

あの『戦争論』のクラウゼヴィッツです。

クラウゼヴィッツは一八一二年にナポレオン戦争で敗北したプロシア軍を離れてロシア軍に参加したわけですが、この時に彼は目の前で「負ける」という体験をしたために、これが彼の戦略の考えを進化させたわけです。

これを聞いたときに、私は大東亜戦争で負けた時に日本の軍人で戦略思想を進化させた人がいたかどうかをちょっと考えてみたのですが、どうもあまりそういう人物は思い浮かびませんでした。

もしかしたら私が知らないだけで、そういう人物はいるのかも知れません。もし皆さんがご存知でしたらぜひ教えていただきたい。

と、ここまで説明した後、いよいよストローン氏は本題に入って行きます。それは

●戦略の理論(strategic theory)

vs

●戦略の実践(strategic practice)

という二つの概念の対比です。

彼は西洋諸国の戦略が1990年からこの二つのレベルで動いているのだと言うのです。

これをわかりやすくするために、彼はキルカレンの最新刊である「偶発的なゲリラ」 の本の内容がこれであると言っております。

ストローン氏はもちろんこの本が批判の戦略業界で賛否両論を巻き起こしているものであることを認めつつも、この本が素晴らしいのは、著者自身の個人的な実体験(戦略の実践)と、それを長期的な流れや大きな視野(戦略の理論)から考えようとしており、この二つがうまく対比されているからだと言うのです。

ここで彼は’日本ではなぜか注目度の低い)名著である、エリオット・コーエンの『戦争と政治とリーダーシップ』を引用しつつ、リンカーン、チャーチル、クレマンソー、ベングリオンというリーダーたちは、戦略の階層を縦横無尽に上下しつつ、正式な戦略の教育を受けていないにものかかわらず、「戦略の理論」と「戦略の実践」の「対話」を自分のなかである程度消化できていて、そのために成功できたというのです。

ところが現在の政治ではこのようなことはかなりできにくくなっており、たとえば政策は短期的になりやすいとして、この一例としてオバマ大統領が来年(2010年)の中間選挙を見据えて政策を考えなければならない面を強調しております。

しかし戦略(理論)というのは軍事に関する長期的な視点を考えなくてはいけませんから、ペトレイアスやマクリスタルのような将軍たちと違う利益が出てくるわけで、ここでレベル間の摩擦が起こってしまうわけです。

これが現代の戦略を考える上での一番の問題であるストローン氏は指摘しております。

まとめとして、彼は戦略を考える際の助けとなるのはクラウゼヴィッツの「トランプのゲーム」というたとえである言いつつ、この「チャンス」を扱うゲームは、軍人だけでなく、ますます政治家たちが行わなければならない領域になったと主張しておりました。

そして最後に、現代の戦略は「(戦術レベルにおける)軍事的勝利」というものよりも、むしろこのような「チャンス」を「マネージメントするもの」としての性格が強くなってきたと論じて講演を終えております。
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Commented by nanashi at 2009-11-30 16:24 x
日本国は、戦略も無く金星人の囁きで、90年比25%削減やアフガン資金援助や、ついにはスーダン派兵までしてしまう。
どういう国だ!
なにが民主党だ!
民主主義が聞いて呆れる!
事業仕分けで透明性! 
なんという国だ
Commented by masa_the_man at 2009-12-01 03:58
nanashi さんへ

>ついにはスーダン派兵までしてしまう。

これって本決まりなんですか?

>なんという国だ

日本は一度落ちます。ですがそこからどう這い上がるかを今から考えないと。コメントありがとうございました
Commented by sdi at 2009-12-02 01:45 x
>日本の軍人で戦略思想を進化させた人
申し訳ないんですが、私も知りません。私はただのしがないIT技術者ですので一般に刊行工されてる雑誌や本しかしりません
戦後日本の文系のアカデミックな場は軍事に関連することはすべて「非」な風潮が長らくつづいていました。歴史研究でも軍事的な観点で論ずることを避けていたように見えます。
軍事戦略を研究し論ずる場はおそらく、長らく防衛大学の内部のみだったのではないでしょうか?そして、その研究成果は外部でることはなかった。例えば「陸戦学会」という研究団体がありますが、参加資格は自衛官、もしくは自衛官OBのみです。学会誌もありますが会員以外は購入できません。欧米のような軍事戦略理論の研究環境は望めないのでしょう。もしかしたら、防衛大学の壁の向こうでなんらかの成果があがっていたのかもしれません。
Commented by masa_the_man at 2009-12-02 07:35
sdi さんへ

>歴史研究でも軍事的な観点で論ずることを避けていた

そうかも知れませんねぇ。先ほどまで一緒にパブで飲んでいたドイツ人の若い奴も同じことを言っておりました。

>軍事戦略を研究し論ずる場はおそらく、長らく防衛大学の内部のみだったのではないでしょうか?

私はこの点においてもちょっと悲観的です。意外と経営論とかのほうに流れたのかなぁという気もしておりますが・・・

>防衛大学の壁の向こうでなんらかの成果があがっていたのかも

そう願いたいところです。しかしその成果が出てこなければ意味がないわけですから・・・なんともはや。コメントありがとうございました
by masa_the_man | 2009-11-30 10:07 | 日記 | Comments(4)