オバマにつきまとうゴルバチョフの亡霊 |
そういえば昨日紹介した市橋容疑者逮捕についてですが、リンゼイさんの両親が最後に日本に行った時の様子がチャンネル4のドキュメンタリーとして放映されるみたいですね。
このプロデューサーが日本のヤクザの親分(?)とおぼしき人物を紹介していることから、この会合の様子ももしかしたら放映されるかも知れません。
もちろん親分衆たちの顔のところには材木、いやちがった、モザイクをかけて(笑
さて、くどいようですがまたアフガニスタンの戦略に関することを。
「アフガニスタン=ベトナム化」という議論が最近けっこう多いことは本ブログをご覧のみなさんはすでにご存知かと思われますが、地政学的もロシアがアメリカに空域をつかわせなかったりしていろいろと間接的に足を引っ張っております。
またオバマ大統領が中国に訪問していることに関連して戦費の問題も出て来ており、国民保険改革や経済刺激策などとあいまって、アメリカは長期にわたって超巨額の借金/国家破産(?)の危機に悩まされることになりそうです。
そのような中でイギリスのリベラル系であるインディペンデント紙に、数日前のジェームス・ファーガソンというキャメロン保守党党首の学生時代のお友達が「オバマ=ゴルバチョフ論」を書いておりましてので、いつものようにポイントフォームで。
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Obama is haunted by Gorbachev’s ghost
by James Fergusson
●イギリスのパブでよく交わされている最近の話題は、「イギリスはアフガニスタンで失敗する」というものだ。
●ロシアは一四,〇〇〇人の戦死者と三五,五〇〇人の負傷者を出しながら1989年に撤退した。
●もちろんブラウン首相はこのような過去の歴史とは違うと考えており、先週金曜日にBBCで「われわれはアフガニスタンに対する占領軍ではなく、彼らが自立できるような状況を整えているだけだ」と語っている。
●たしかに歴史はまるっきり同じことを繰り返すわけではない。
●たとえばソ連は当時のアフガニスタンに猛烈な攻撃をしかけており、第二の都市であるカンダハルなどはソ連の空爆のおかげで人口が25万人から2万5千人にまで減っている。
●しかしNATO側の狙いはアルカイダの打倒だけであり、このような激しい戦術は使わなくてもいいのだ。
●ところがそれでも西側諸国のソ連式の失敗の確率はますます高まっている。
●たとえば今のオバマ大統領の迷っている状態は、ゴルバチョフ大統領の1985年3月の状況とそっくりであり、オバマ大統領がマクリスタル将軍の増派要請案を受け入れると、不気味なことに当時のソ連の最大増派数とほぼ同じ数(合計10万人)の兵力を投入することになるのだ。
●もちろんこの時のゴルバチョフの決断は最悪の結果となり、1985年はソ連にとってアフガニスタンにおける最大の戦死者を出した年となったのだ。
●ロシアの在アフガニスタン大使であるカブロフ氏は「兵力を増やすと戦死者も増える。このままいけばアフガニスタン全土はタリバンの支配下に落ちる」と発言している。
●カブロフ氏は80年代にカブールで務めていた経験があり、アフガニスタンをまとめるのに一番効果的なのは、彼らの聖地に駐留する堕落した外国の兵士であることを肌で知っている。
●何百年にもわたる彼らの対外勢力に対する反抗の歴史は、彼らのアイデンティティーとして宗教のレベルまで染み込んでいる。
●あるタリバンの司令官が以前私に語ってくれたのは、「われわれは戦争に反対だが、聖戦だけは別の話だ。外国からの侵入者と戦うのはわれわれの義務なのだ。われわれは戦うことを決してやめない。世界最後の日がきたときにアラーはわれわれに国のために何をした?という質問ではなく、自分の宗教のために戦ったか?と聞くはずだ」ということだ。
●アフガニスタンはイラクと違って地形が複雑であり、ロシアでさえ占領できなかった。そしてアフガニスタンの暴動側の使っている戦術は、ソ連や19世紀のイギリスに対して使われた戦術とほとんど同じなのだ。
●西側諸国のもっている進んだテクノロジーでもタリバンをひるませることはできない。ソ連のハインド攻撃ヘリはスティンガーミサイルが登場するまでほぼ無敵だったが、結局のところは300機も撃ち落とされており、今年に入って初めてチヌーク(西側のヘリ)も撃墜された。
●当時のソ連もわれわれと同じように自分たちが「占領軍である」とは考えていなかったのであり、79年にはカブール政府の要請でアフガニスタンに初めて足を踏み入れたのだ。
●彼らにも「政策」があり、「出口戦略」があった。1986年にはソ連の指導によってアフガニスタン軍を30万人規模にしている。しかしソ連側もわれわれと同じように、アフガニスタン政府側をほとんど信用できない相手だと考えていたのだ(これは最近英兵がアフガニスタンの警察に殺された事件でもよくわかる)。
●1980年代をつうじてソ連が訓練をほどこしたアフガニスタン側の新兵は、訓練が完了するのと同じくらいの数がすぐに辞めていっている。
●また、アフガニスタンの人々にとって、ソ連軍もNATO軍もほとんど同じであり、みやげもの屋ではソ連時代のヘリを刺繍したカーペットが売られているが、最近はチヌークの刺繍がほどこされたものも売られ始めた。
●アフガニスタンでは口伝の伝統があり、しかも時間の概念がないため、ソ連やイギリスによる侵攻は昨日の出来事のように伝えられており、多くの人は今の戦いをイギリスの侵略の続きだと考えているほどだ。
●実はこれはそれほど真実から離れているわけではなく、たとえば以前のイギリス空軍の第39飛行中隊はパキスタンとの国境付近に駐留してパキスタンのワジリスタンに空爆をしていたが、現在の第39飛行中隊もネバダの砂漠からパキスタンの同じ場所に無人機(MQ-7 リーパー)で攻撃をしかけているのだ。
●何人かの専門家は、無人機の使用によってこの状況を打破でき、いずれは人間の代わりにロボットに国境付近をパトロールをさせて撤兵できるとさえ考えているほどだ。
●しかしアフガニスタンのような国で戦う場合にテクノロジーに頼りすぎるのは間違いだ。
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オバマ大統領はゴルバチョフと似たようなことになる、と警告しております。
これはマッキンダーも指摘していることなんですが、「共通の敵」というのは国をまとめやすいわけですよね。
独立を勝ち取って来たあらゆる国家には、基本的に多かれ少なかれ「共通の敵」というものが存在します。アメリカだったら大英帝国、中国だったら大日本帝国と国民党、ドイツだったらフランス、みたいな感じですな。
冷戦時代のアメリカでしたらソ連がおりましたが、いまは・・・・