戦略や地政学の視点から国際政治や社会の動きを分析中


by masa_the_man
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失われたアフガニスタン戦争の目的

今日のイギリス南部は昼までけっこう晴れていたのですが、午後から西側に雲が増えてきまして、かなり気温も下がっております。

アメリカでは相変わらずアフガニスタンについての戦略会議がホワイトハウス周辺で盛んに行われているようですが、先日のマイケル・ホー氏の辞職事件のおかげで「アフガニスタンのベトナム化」という論調の議論が増えてきました。

この中でも日本に紹介されていない面白い議論が色々とあるのですが、今日はその中で元祖オバマコンの論者であるアンドリュー・ベイセヴィッチのよくまとまった鋭い議論を紹介します。

ここでの彼の議論は「戦略の階層」についても触れており、なかなか興味深いものが。

またいつものようにポイントフォームで。

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Disruptions: Root Causes

by Andrew Bacevich


●最近行われているアフガニスタンについての「戦略」議論は、オバマ政権が前政権から引き継いだ、すでに破綻している戦略問題をごまかすものでしかない。

●アフガニスタンについての議論は「戦略」レベルの話ではないし、「作戦」レベルであるとも言えない。

●アフガニスタンの戦争に何か目的があるとすれば、これはもっと大規模な「テロとの戦争」という(政策/大戦略?)レベルの話から出てこないといけないのだ。

●よって、もしアメリカがアフガニスタンで戦う目的があるとすれば、その目的はこの大規模な戦争の一部であるという面から理由付けがなされないとおかしい。

●ここでブッシュ政権時代のことを考えてみれば、たしかにあの政権には「戦略」とでも呼べるのようなものがあった。これが「全中東の民主化」というものである。

●こうすることによって、彼らは9/11事件を生み出す環境を抹消できると考えたのだ。

●ところがネオコン以外の人々の目からみれば、この試みは完全に失敗したと言える。

●そしてこの失敗の結果が戦略の「真空化」を生み出したのだ。

●おかげで今日のアメリカは暴力的なジハードに対抗するための具体的な計画を持っておらず、その結果としてアフガニスタンとイラクで行っている戦争は無意味になってしまった。

●CFRの上級研究員であるスティーヴン・ビドゥルなどは、この明白な事実を必死に隠そうとしている。

●ここでマクリスタルの戦略が、何百億ドルもの支出と、少なくとも数百人の米兵の命を失ったあとの十年後くらいに「成功」したと仮定して考えてみよう。

●ここでアメリカは何を獲得できるのだろうか?

●イスラムのジハード主義を抹殺し、彼らが及ぼしてくる脅威を減少させることができるというのだろうか?

●そこで問題となるのは、「アフガニスタンはジハードの中心地ではない」という単純な事実だ。

●つまり我々はアフガニスタンを中東のディズニーランドに作り変えることができるかも知れないが、それでもイスラムの過激主義は世界中の到るところで生き残って活動をつづけるのだ。

●その「脅威」が国境を越える性格のものである以上、アメリカがいくら遠い場所で国家建設をやろうとしても意味はない。

●むしろ今後もアフガニスタンを鎮圧しようとすることによって、むしろイスラム過激派の反発を生む確率のほうが高いと言えるのだ。

●アフガニスタンで大量の国家資源や人命を使って反暴動を行おうとしている人々に我々が問いかけなければいけないのは、「目的は何?」ということだ。

●しかし彼らはこの問いに答えることはできない。

●なぜならこれに答えようとすると、「戦争」(これはアメリカが直面している問題の解決法にならないことがすでに明らかになっているのだが)を永遠に続けることが事実上のアメリカの外交政策になっていることを認めてしまうことになるからだ。

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相変わらず手厳しいですな(苦笑



(IEDの爆発の瞬間)
Commented by Rogue Monk at 2009-11-06 21:07 x
>ここでブッシュ政権時代のことを考えてみれば、
>たしかにあの政権には「戦略」とでも呼べるのようなもの
>があった。これが「全中東の民主化」というものである。
「ハッタリかますんじゃねぇ!」とか言われることがありますが、
なんと言われようと
「大きな絵を描かなければ細部は混乱するのみ」
ということなんでしょうね。

>IED
イラクでの映像がCNNとかでよく流れるのですが、明らかに
「路面のアスファルト舗装の下に爆発物を埋め込んで仕掛けている」
(その証拠にアスファルトがちゃんとめくれ上がっている)
のですね。それを考えると、仕掛ける方は相当の手間暇を
かけてますね。
Commented by DD at 2009-11-07 04:46 x
面白いですね。「イスラム原理主義者のテロ根絶」が本当の戦争目的だとするとイラクとアフガニスタンの民主化の進展(≒イスラム社会の価値観破壊の進行度)をどう評価するのかという問題のような気がします。

イラクとアフガンに傀儡政権を立てイスラムの伝統的価値観を破壊する政党を作り西欧的な価値観を数世代に渡り植えつけていく。そうやって強固なイスラム社会に楔を打ち込む先例を作る。成功すれば西欧社会から見て歴史的な偉業になるかも知れません。

ブッシュ大統領はこの戦いを常に日本を例に挙げて説明していましたし、米軍の司令官はこの戦いを旅に譬えて(50年ぐらいかかる)長い旅になると言っていた事を思い出します。

 私は専門化ではないので判りませんが、数世紀に渡り西欧社会と対立してきたイスラム社会の構造は強固でありスペイン人がインカ帝国に対して行った抹殺や強制改宗でもやらない限り無理なのではないかと思います。従って米国の試みは失敗する公算が高いのではないでしょうか
Commented by masa_the_man at 2009-11-07 07:19
Rogue Monkさんへ

>なんと言われようと「大きな絵を描かなければ細部は混乱するのみ」ということ

そうなんですよね。やっぱりここは「ビジョナリー」じゃないといけません。

>アスファルトがちゃんとめくれ上がっている

この動画でもそうですよね。しっかりと埋め込んであるような。

>仕掛ける方は相当の手間暇を

かけてますね。アスファルトの下にしっかり埋めて、しかもそれを遠隔で爆破するわけですから。コメントありがとうございました
Commented by masa_the_man at 2009-11-07 07:22
DDさんへ

>「イスラム原理主義者のテロ根絶」が本当の戦争目的だとするとイラクとアフガニスタンの民主化の進展(≒イスラム社会の価値観破壊の進行度)をどう評価するのかという問題

しかもこれが逆効果なような気が。

>成功すれば西欧社会から見て歴史的な偉業になるかも知れません。

そうなるとブッシュは英雄ですな(笑

>(50年ぐらいかかる)長い旅になると言っていた事を思い出します。

しかし問題はそれだけの長い期間をアメリカ側が耐えられるのか、という点ですね。

>抹殺や強制改宗でもやらない限り無理なのでは

あんまり大っぴらには言えませんが、たしかにこれは一理あるわけで。

>従って米国の試みは失敗する公算が高いのではないでしょうか

イスラムという「宗教」を持ち出してしまったのはまずかったですね。エセ宗教であった共産主義だったからよかったのかも知れませんが。コメントありがとうございました
by masa_the_man | 2009-11-06 09:48 | ニュース | Comments(4)