戦略や地政学の視点から国際政治や社会の動きを分析中


by masa_the_man
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28

なぜアフガニスタンから兵を減らしてはダメなのか

今日のイギリス南部は午前中雲が多かったのですが午後からはすっかり晴れました。また午後七時くらいまで外でキャッチボールできるくらい明るいです。

そろそろ時差ぼけもなんとなく解消してきた感じで、ようやくこちらに帰って来た実感もわいてきたのですが、今日はなんと近所に大型スーパーの出張所のような小さな店が出来ていることを発見しました。

この場所は近所の交差点の角にあり、いままで売れないパーティー用品を売っていた店だったのですが、いつの間にかテスコのエクスプレスになっていました。

試しに中に入ってみましたが、なかなか品揃えもよく、私がよく使うタウンセンター(イギリスの「ダウンタウン」のこと)のセインズベリーに代わって活用できそうな場所であることを確認しました。

さて、今日はまたアフガニスタンネタで。

オバマ大統領は国連やG-20の場でアフガニスタンに関する話題にほとんど触れなかったようですが、イギリスでは連日この話題で持ち切りでありまして、実にさまざまな分析が出て来ております。

もちろんイギリスは19世紀のいわゆる「グレートゲーム」のときにロシアとここを争った経緯がありますのでかなり知識は豊富なはずですが、最近は暴動鎮圧に関して完全にアメリカに遅れをとっているという話が出てきております。

そのような状況の中で、今回はアメリカのほうから注目すべきレポートがでてきました。

テーマはズバリ、「なぜアフガニスタンの兵を減らしてはならないか」というもの。著者は若き防衛分析官として有名なオハンロンと、元CIAの分析官です。

この主張を展開しているロジックが興味深いのでまたポイントフォームで。

●最近のアフガニスタンに対する戦略の議論では、「目標を低くして対テロだけに集中するべきだ」という意見が増えている。

●たしかにこれは魅力的なアイディアだ。アフガニスタンにつぎ込む資金も人命も少なくなるように思えるからだ。

●しかしこのような戦略は効かない。なぜならすでにラムズフェルドがやった「軽装備でやる」というのがこれだったからで、効かないことが証明されているからだ。

●対テロだけに集中するやり方が失敗する第一の理由は、諜報活動をうまく行えないからだ。

●現地にいる人間の数が減ると、我々の協力者たちを保護することもできなくなる。

●アフガニスタン軍や警察も自立できるまでに少なくとも2012年までかかる。

●失敗する第二の理由は、現地の人間を減らすと無人機を使うことができなくなるから。

●我々が兵を減らすとアフガニスタン政府が崩壊し、特に重要な山沿いの無人機が離着陸する基地が使えなくなる。

●そうなるとパキスタンにひそむテロリストたちも追いかけることができなくなる。

●この戦争の初期にオサマ・ビンラディンを捉えきれなかったのも、山岳地帯の近くに無人機の基地がなかったから。

●失敗する第三の理由は、こうすることによって一緒に戦っている仲間や同盟国を失うことになるからだ。

●政治的な理由から、もしかするとアフガニスタンに投入する兵力を減らさなければならなくなるかも知れない。

●アルカイダは基地などを必要としていないからアフガニスタンから撤退しても大丈夫だという人もいるが、とんでもない。

●活動場所があるということはアルカイダにとって好都合だからだ。

●やはり正しいのは、オバマ大統領が今年の3月に示した、アフガニスタンの市民を守りつつ、警察と軍を強化するという政策だ。

●このやり方は時間と資源をさらにかける必要があるかもしれないが、これしか残された道はない。

ということです。

「これ以外に選択はないから辛抱せよ」という、かなり厳しい提案ですな。
b0015356_5501215.jpg
(現役のシュガーレスガム)
Commented by とおる at 2009-09-27 09:31 x
まるで、西洋医療とウィルスの戦いに見えてしまいます。
アフガニスタンが、第二のベトナムになるように思えるのですが。
Commented by nanashi at 2009-09-27 12:25 x
一時的に良くなっても、若者が増えるから駄目でしょう。
ソ連時代からアフガン紛争は続いて、アフガン人はもう外国人全般を嫌っているんじゃないかな。ほって置いてくれと。
アメリカが日本に来た理由も地政学的な理由で来たと思うが、白人が地理に投射する視線と論理が、生態学的に破綻をきたしていると思う。
地球上のすべてで狂ってきている。
古典地政学の終わりというか、覇権国が介入をした後の人口動態の変化も含めて地政学を再構築しなおさないと、どうにもならないのでは?
この辺の見かたはフランスなどの欧州の方が進んでいると思う。
Commented by いかれ帽子屋 at 2009-09-27 14:19 x
ようは
「所要に満たない戦力の逐次投入は事態を悪化させるだけ」
って、それこそ超古典的な大原則を言ってるわけですよね。

中途半端なことやっちゃうとベトナムの、尻尾巻いて逃げ出したらソマリアの二の舞になっちゃう可能性が高いから、諦めて腹くくれと。

問題は今のアメリカに、そこまでやれるだけの体力やら根性やらがあるのかどうかですが。
Commented by masa_the_man at 2009-09-28 01:23
とおるさんへ

>まるで、西洋医療とウィルスの戦いに見えてしまいます。

なるほど、うまいたとえですなぁ。ある意味でイタチごっこですし。

>アフガニスタンが、第二のベトナムになるように思えるのですが。

そうですね。抜け出したくても抜けられないわけです。これは悲劇ですな。コメントありがとうございました
Commented by masa_the_man at 2009-09-28 01:28
nanashi さんへ

>一時的に良くなっても、若者が増えるから駄目でしょう。

人口の構成から見ると、という意味ですね。一理ありますな。

>アフガン人はもう外国人全般を嫌っているんじゃないかな。ほって置いてくれと。

それはあるかも知れませんが、外国軍がいなくなったらいなくなったでまた内戦が始まりますしね(苦笑

>白人が地理に投射する視線と論理が、生態学的に破綻をきたしていると思う。

この「白人」が誰のことを示すのかよくわかりませんが、英米人ということであればなんとなく。

>地政学を再構築しなおさないと、どうにもならないのでは?

そういうのをやっている人々はいますね。まあ戦略文化の研究なんかが進めば少しはマシになるのかも知れませんが・・・。

>この辺の見かたはフランスなどの欧州の方が進んでいると思う。

正しいと思います。ただし問題なのは彼らに力がない、という点ですな。逆に力がないから正しい見方ができる、ということも言えるかも知れませんが(笑)コメントありがとうございました
Commented by masa_the_man at 2009-09-28 01:30
いかれ帽子屋さんへ

>戦力の逐次投入は事態を悪化させるだけ

たしかにそうですねぇ。まあこの論文で言っていることを正確に言えば「これ以上兵隊の数を減らしちゃダメ」ってことなんですが。

>二の舞になっちゃう可能性が高いから、諦めて腹くくれと。

その通りです。

>問題は今のアメリカに、そこまでやれるだけの体力やら根性やらがあるのかどうかですが。

「根性」が無くなってますね。70年代の頃よりも状況はひどいかも知れません。コメントありがとうございました
Commented by ひろ at 2009-09-28 02:07 x
アメリカは、戦闘の勝利を戦争の勝利に繋げるのが下手ですね。テクノロジーというハード面でアメリカに勝てる国はないでしょうが、占領統治という、ソフトの部分ではまだまだですね。アメリカンウェイを押しつけるだけでは、民衆の反発を招くだけで治安は改善されないでしょう。
Commented by sdi at 2009-09-29 02:01 x
アメリカの戦略家達の間で百家争鳴状態なのは、「アフガニスタンをどうすればアメリカにとって最善なのか」という大本の方針が全く定まってないからでしょうか?。
Commented by masa_the_man at 2009-09-29 04:22
ひろさんへ

>アメリカは、戦闘の勝利を戦争の勝利に繋げるのが下手

ドイツと日本というたまたま素地のあった国で大成功してしまった経験がありますからねぇ。

>アメリカンウェイを押しつけるだけでは、民衆の反発を招くだけで治安は改善されないでしょう。

かなり拡大解釈すると、日本がアメリカの要求に対して快く思っていないところもこれにつながっているような。コメントありがとうございました
Commented by masa_the_man at 2009-09-29 04:24
sdi さんへ

>アメリカの戦略家達の間で百家争鳴状態なのは、「アフガニスタンをどうすればアメリカにとって最善なのか」という大本の方針が全く定まってないから

その通りだと思います。アフガニスタンに最初に向かった理由はオサマを捕まえてタリバンを打倒するという二つだったわけですが、それが「国内の治安向上」→「国家建設」みたいにどんどん目標が拡大してしまいましたので。しかもはじめから具体的なビジョンはなかったと思います。コメントありがとうございました
Commented by やたさん at 2009-12-11 23:58 x
アメリカ(人と政府)を非難したり批評するだけでは何も解決しません。
小生はそういう物識り顔の評論はうんざりですが、さりとて具体的な提案をする能力もありません。唯一つ知りたいことがあります。アフガン政府のやる気は権力争いと汚職にしか向いていないような報道ですが、一体
人々は(多数の)アメリカを追い出して国造りを自らの手でやろうと本心で
考えているのでしょうか。アメリカが手を引いても何も問題ないと思っているのでしょうか。人々の自立、独立の意思は強固なのでしょうか?
Commented by メタ某 at 2009-12-12 07:13 x
アメリカ深謀遠慮に長けた国のようで、実はは怯えてるのでは?
混乱の原因を知りたくも認めたくもないのでしょう。
常に遠方へ出向いて先制しておかないと自身の存立が危うい。
従って、如何されるか分からないという危機感を永遠に必要とする。
かなりの後ろめたい経緯も抱えているらしく、放って置けない事情が数多のようで・・・。
無理が通って道理が引っ込むように、次第にシメシがつかない段階に嵌まっているように覗えます。
オバマさんはノーベル賞を辞退した方が良かったと思いますね。
あれでは、益々シメシがつきません。
Commented by nanashi at 2009-12-12 07:21 x
アフガンとイラク戦争は、イランを囲うためではないのですか?
イランがどうにかなるまでアメリカは戦争を終わらせないと思います
ただ、この一連の戦争と混乱のために将来の中東・南西アジアは人口爆発が起きて不安定になると思います
Commented by masa_the_man at 2009-12-13 05:23
やたさん さんへ

>一体人々は(多数の)アメリカを追い出して国造りを自らの手でやろうと本心で考えているのでしょうか

これは私も知りたいところですね(苦笑)ただし私が見ている感覚だと、アフガン政府の内部でも温度差があると思います。

>人々の自立、独立の意思は強固なのでしょうか?

そもそも「アフガニスタン人」という国民が存在しないようなので・・・。リバータリアン的な意味での「独立」の気概はあると思うのですが。コメントありがとうございました
Commented by masa_the_man at 2009-12-13 05:27
メタ某さんへ

>アメリカ深謀遠慮に長けた国のようで、実はは怯えてるのでは?

おびえているというのはありますね。国民の恐怖という要素は大きいですし、政府側もそれをある程度利用しているところがありますね。

>常に遠方へ出向いて先制しておかないと自身の存立が危うい。

これについては拙訳の『平和の地政学』に詳しく書いてあります(笑

>次第にシメシがつかない段階に嵌まっているように覗えます。

それの最大のジレンマを見せているのが今回のアフガニスタン3万人派遣問題ですね。

>オバマさんはノーベル賞を辞退した方が良かったと思いますね。

しかし彼は昨日の受賞式ですごい演説しましたな。保守派が絶賛しております(笑)コメントありがとうございました
Commented by masa_the_man at 2009-12-13 05:47
nanashiさんへ

>アフガンとイラク戦争は、イランを囲うためではないのですか?

それ「も」あると思います。

>イランがどうにかなるまでアメリカは戦争を終わらせないと思います

これはどうなんですかねぇ。

>この一連の戦争と混乱のために将来の中東・南西アジアは人口爆発が起きて不安定になると思います

もともとシャッターベルトですからね、ここは。コメントありがとうございました
Commented by sadame at 2009-12-18 08:56 x
現在のアメリカの経済状態からすれば、と言う観点からすれば、
簡素な兵備など”もってのほか!”だし、「不況の風を吹き飛ばすには
戦争するのが一番良い選択」としてきた。アメリカらしいや(笑)
Commented by masa_the_man at 2009-12-19 11:43
adame さんへ

>「不況の風を吹き飛ばすには戦争するのが一番良い選択」としてきた。アメリカらしいや(笑)

どこかでそういう企みはあるでしょうなぁ。しかし第二次大戦の頃のように大量消費ができないので・・・こりゃ大変。コメントありがとうございました
by masa_the_man | 2009-09-27 06:30 | 日記 | Comments(18)