離婚に向かう「チャイメリカ」 |
さて、久々にニアル・ファーガソンの記事を。
G2論の亜種ともいえる「チャイメリカ」論を提唱しているスコットランド出身のハーバード大教授の歴史家であるファーガソンですが、今回のこの記事では「チャイメリカ終焉論」を強調し始めております。
ここでのアナロジーが極めてマッキンダー的というか、地政学的な世界観/歴史観でして、とりあえず注目に値すると言えるものでしょう。
おそらくこの記事はニューズウィーク誌の日本語版でもそのうち翻訳されるかも知れませんが、とりあえず要点だけポイントフォームで書き出しておきます。
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‘Chimerica’ is Headed for Divorce
By Niall Ferguson | NEWSWEEK
Published Aug 15, 2009
From the magazine issue dated Aug 31, 2009
●2007年の初期には「中国が貯蓄して、アメリカが使う」という形が出来上がっていた。これを私は「チャイメリカ」と呼んだ。
●これは「中国が輸出して、アメリカが消費する」ということでもある。
●中国が貯めた外貨の実に70%はドルであり、これはほぼ米国債だ。
●一時的にはこの「チャイメリカ」は完璧な結婚状態のように思えた。
●ところがこの結婚も最近は暗礁に乗り上げている。アメリカが消費しなくなったからだ。
●もちろんこれで中国がドルを買わなくなるという意味ではないが、中国側がこの「チャイメリカ」関係に疑問を持ち始めることは間違いない。
●中国はまるで、奥さんに向かって「君はカードでお金つかいすぎだよ」という旦那のような立場にあると言える。
●オバマ政権が金融政策をゆるめていることは中国もわかっていて、米国債の価値が下落するか、ドルの購買力が落ちることは目に見えている。この両方の結果は中国にとって望ましくない。
●こうなると、状況は80年代の日本と同じ。つまり、自国の通貨が高くなり、経済が停滞するということになる。
●そうなると中国は「帝国主義オプション」をとる可能性がある。これはアメリカから離れて独自の道を歩むということだ。
●アジア太平洋地域で中国が(主にシーパワー面で)パワーを発揮しはじめたのはその一例。
●また、貯まった外貨で資源を獲得する動きもこれである。
●「チャイメリカ」後の中国は内需主導になり、アジア経済圏をブロック化する動きにもなる。
●この中国とアメリカの関係は19世紀末から20世紀はじめのイギリスとドイツの関係にたとえるとよくわかる。
●もちろんイギリスは今のアメリカで、ドイツは今の中国だ。
●このたとえが良いのは、経済的に高い結びつきがあっても、必ずしもそれが戦略的な競争関係や紛争につながるのを防いでくれるわけではないからだ。
●地政学的な構造というのは劇的に変化するわけでないが、その変化の兆しはすでに存在する。
●5年から10年以内に中国が人民元をドルにかわる国際的な通貨にしようとする可能性は否定できない。
●そうなった時点で「チャイメリカ」の関係は終わる。
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というものです。
ミアシャイマーもそうですが、現在の米中の関係を英独の「シーパワーvsランドパワー」という地政学的な対立と見る分析は欧米では根強いものがあります。