戦略や地政学の視点から国際政治や社会の動きを分析中


by masa_the_man
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(人生)戦略は技術(テクニック)ではない

今日の甲州はまたしても真夏日でした。午後から地元山梨で出来た初の「知り合い」と甲府駅近くのカフェで歓談してきまして、楽しいひとときを過ごして参りました。

さて、数日前に新聞に載っていたある経済評論家の主張について意見があるので一言。

みなさんもご存知のように、ここ数年間で有名になった勝間和代さんという女性の経済評論家の方がおります。

この方が二日ほど前の産經新聞の一面掲載のコラムで「人生戦略の立て方」という興味深い記事を書いておりました。

ところがまがりなりにも「(国家)戦略」を勉強していた自分としてはちょっと見過ごせない部分を発見。これについて一言。

まず勝間女史は、このコラムの冒頭で「戦略」という言葉の定義をはじめます。これそのものは西洋式の非常に参考になる素晴らしいことだと思うのですが、問題はその内容。

以下、その重要部分をのまま引用します。

===

なぜ、人生に戦略が必要なのでしょうか。それにはまず、「戦略」の定義を理解する必要があるでしょう。戦略は(1)何か特定の目標を達成するために(2)統合的な施策を通じて3)資源を効果的に配分・運用する技術、のことを言います。3つの要件をそろえることで初めて戦略として機能をしていきます。多くの日本人、日本企業は、決められた目標に対して配分された資源の範囲内で、ベストを尽くすことはたいへん得意です。しかし、どうやって目標を定めるかとか、資源の配分自体を見直すか、について不得手だと思える場面がしばしばあります。すなわち、戦術は行っているが、戦略は行っていないのです。

===

ちょっと重箱の角をつつくようですが、戦略を研究している人間としてはあえてこの彼女の「戦略の定義」にこだわりたい。

まずこの彼女の定義の最大の問題点は、結果的に「戦略=技術」だと断言してしまっていることです。

これは私の講演会に一度でも来たことがある方々でしたら十分ご承知のことかと思われますが、戦略は(理論上は)技術よりも上に位置するものであり、決して同等のものではない、ということです。

私のブログでも文章がおかしいことが時々ありますが(苦笑)、この彼女の文章自体もちょっとおかしい。なぜなら「戦略を定義する」と言っておきながら、その後に挙げた三つを「要件」としているからです。つまり言いたいのは「定義」?それとも「要件」?

彼女の「日本人は戦術は行っているが戦略は行っていない」という意見にはたしかに同意しますが(というか、戦術は得意だが戦略は不得意、というほうが正しいかもしれませんが)、その彼女自体が極めて「戦術的/技術的」な意見を言っているなぁと感じました。

その後の部分でも「戦術レベル」と「戦略レベル」を区別せよという話が出てくるのはなかなか良いのですが、肝心の「政策レベル」や「世界観レベル」の話が全く出てこないのはちょっと物足りなさが残りました。

もちろん彼女はビジネス戦略の方なので、もしかしたら私の考える「戦略」という定義と遥かに違う捉え方をしているのかも知れません。

たとえば彼女の戦略の定義の中には「資源の配分〜」というものがありましたが、あれはむしろ「大戦略レベル」の話ですよね。まあ「軍事」も「大」も、戦略という意味では同じレベルなのでかまわないのですが。

引き続き彼女は「人生戦略」についてこのコラムで書いて行くそうですが、私は今後も注視していきたいと考えております。

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(先生の書斎その2)
Commented by 柴崎力栄 at 2009-06-25 01:49 x
奥山さん。勝間和代さんに反応したくなる気持ちはわかりますが、やめておいたほうがいいです。この方は、主張している論理ではなくて、気配自体が、ずいぶん頑張っているなと感じるほかないところがあります。勝間さんの論理的な部分への反論が、勝間さんの持っている雰囲気への同調・同期を奥山さんに齎すというマイナスを考えたら如何ですか。
ところで、日本で書斎に本を横積みしているのは、ずぼらにしか見えないのですが、横書きで背表紙ににタイトルが書かれている欧米語の本を向こうの先生方が寝かせているのは、どう評価していいのか戸惑うところです。
Commented by ナリ at 2009-06-25 07:19 x
まあお気持ちはわかりますが、この人に世界観はないですよ。技術的には大事なことを言っているのですが、それが「何の為に」やるのかサッパリ見えないのですから。
あと、個人的に別れた旦那への発言には、ちょっと、うーんという感じですね。働きながら子育てされているので、その点は尊敬できるのですが、あざとさを感じてしまうんですよねえ。
27日、その辺りも絡めて、話をして頂ければ有難いです。

Commented by nanashi at 2009-06-25 07:57 x
勝間という人は、どこかの勢力がオピニオンリーダーとして育てようとしているんじゃないですか?辻元とか細野豪志とかも、そういう育てられ方をして出てきた人間だと思ってます。
Commented by ぱんだ at 2009-06-25 08:58 x
やはり、勝間和代さんの人生戦略は、本場で、戦略学を学んできた、奥山さんから見ておかしいですか。私も、彼女の本を読んでみて、これを奥山さんが読んだら、どう思うか、ずっと知りたかったので、今日は、どんぴしゃでした。彼女のビジネス書は、大変人気がありますから。
Commented by とおる at 2009-06-25 10:06 x
> 「戦略を定義する」と言っておきながら、…「定義」?それとも「要件」?

鋭く適切な指摘です。

彼女の文章:
 「戦略」の定義を理解する必要があるでしょう。戦略は(1)…(2)…(3)…する技術、のことを言います。3つの要件をそろえることで初めて戦略として機能をしていきます。

大学で数学を習ってましたので、「定義」には直ぐ反応してしまいます。
彼女は、「戦略とは、(1)(2)(3)の技術」と定義しているようです。
ところが、「(1)(2)(3)の3要件をそろえて、戦略として機能(function)をしていきます」と言っていますので、「戦略をそろえると、戦略として機能していく」とも言っています。え~?、3要件をそろえれば、戦略として機能していくのか~?
戦略は、「要件」?それとも「機能」?
彼女は、経済・投資のテレビ番組で、よく見かけますが、会計・監査の範囲でしか物事を捉えることが出来ないのでしょう。「戦略」という言葉も、あくまでも、会計・監査の業務で通じる「戦略」のレベルでしょう。(3次元の球体を、2次元平面に投射した範囲でしか理解してないのでしょう)
Commented by 柴崎力栄 at 2009-06-25 15:54 x
ナリさん:
「あざとさ」は確信犯的にやっていることをご本人が認めています。私の名前に埋めたurlの下の方のコメント欄をごらんください。

奥山さん:
勝間さんの「戦術」は「技術」レベルで、勝間さんの「戦略」が「戦術」レベルではないかと換算しつつ読むと違和感なくよめます。技術を戦術として使うための「戦術ドクトリン」の形成と運用についてだろうと。
Commented by アラスカ at 2009-06-25 17:32 x
「戦略が技術であるか?ないか?」私にはどちらでも良いように思えてしまいますw
戦略にとって大事なのは「戦略が技術であるか?ないか?」より「使えるか?使えないか?」です。孫子やワイリー達の「優れた戦略」は、使えるから「優れた戦略」なのです。
そもそも奥山さんも勝間さんもどちらもありだと思います。
戦略や世界観というのは、本来「突然変異」で生まれるものなので、違いがあるのは当たり前だからです。
Commented by 山田洋行 at 2009-06-25 20:22 x
私も何か書こうと思ったのですが、他の方が既に指摘されておりますね(笑)

ブログのアイコン?が"戦略の格言"になってますね。
無論購入予定です、期待しております。

今週末の講演会は事情により参加できませんが、頑張ってください。
Commented by tencube at 2009-06-25 23:01 x
日本語版のwikipediaでも"技術・科学"と書かれていますから、これが一般的な日本人の理解のレベルなのでしょう。
ttp://tinyurl.com/m533u7
Commented by ヤッシー at 2009-06-25 23:14 x
勝間さんの言っている「資源」とは経済学的な意味での「資源」だと思うのですが・・・・・・
Commented by masa_the_man at 2009-06-26 02:10
柴崎さんへ

>反応したくなる気持ちはわかりますが、やめておいたほうがいいです

かもしれません。彼女はメジャーですしねぇ。

>この方は、主張している論理ではなくて、気配自体が、ずいぶん頑張っているなと感じる

大変そうですよね(苦笑

>間さんの持っている雰囲気への同調・同期を奥山さんに齎すというマイナスを考えたら如何ですか。

ブローバックしてしまう危険ですね。

>横書きで背表紙ににタイトルが書かれている欧米語の本を向こうの先生方が寝かせているのは、どう評価していいのか戸惑うところです。

私もこれをみてビックリしました。ただし部屋の中はかなり整理整頓できているんですよね。イギリスの教授というのはやはりみんな整理整頓できてます。コメントありがとうございました
Commented by masa_the_man at 2009-06-26 02:13
ナリさんへ

>この人に世界観はないですよ。

まあ「完全にない」とは思いませんが、とにかく見えにくいことは確かですね。もしくはどなたか言っていたように「会計士」としての世界観ならあるのかも知れませんが。

>それが「何の為に」やるのかサッパリ見えないのですから。

激しく同意。

>あと、個人的に別れた旦那への発言には、ちょっと、うーんという感じですね。

踏み台扱いですからね(苦笑

>27日、その辺りも絡めて、話をして頂ければ有難いです。

もちろん。この辺は極めて重要なので時間の許す限りぜひ。コメントありがとうございました
Commented by masa_the_man at 2009-06-26 02:14
nanashiさんへ

>どこかの勢力がオピニオンリーダーとして育てようとしているんじゃないですか?辻元とか細野豪志とかも、そういう育てられ方をして出てきた人間だと思ってます。

わからんですね。政府にも食い込んでいるということはそれなりに立派だと思われますが、どうなんでしょうか。もし情報を見つけましたらお願いします。コメントありがとうございました
Commented by masa_the_man at 2009-06-26 02:16
ぱんださんへ

>どう思うか、ずっと知りたかったので、今日は、どんぴしゃでした。彼女のビジネス書は、大変人気がありますから。

そうなんですよね。私は彼女のビジネス戦略全般は否定しないんですが、それが人間を幸せにするかどうかという点だけは別問題だと考えております。つまり彼女のはバランスが悪いんですよね。まあこの辺は講演会などでチャンスがあったら詳しく語ってみたいと思います。コメントありがとうございました
Commented by masa_the_man at 2009-06-26 02:19
とおるさんへ

>大学で数学を習ってましたので、「定義」には直ぐ反応してしまいます。

おおっ。

>戦略をそろえると、戦略として機能していく」とも言っています

言ってますね(笑

>戦略は、「要件」?それとも「機能」?

もしかすると両方とか?

>「戦略」という言葉も、あくまでも、会計・監査の業務で通じる「戦略」のレベルでしょう。

かも知れません。そういう意味から考えれば彼女の「国際収支云々」という発言も理解できそうな気が。コメントありがとうございました
Commented by masa_the_man at 2009-06-26 02:25
柴崎さんへ

>知識層が見ると不満に感じることも、あざとく感じることもあるのは承知の上での施策、戦略です

本当ですねぇ。本人が書いておりますな。

>勝間さんの「戦術」は「技術」レベルで、勝間さんの「戦略」が「戦術」レベルではないかと換算しつつ読むと違和感なくよめます。

なるほど、たしかにレベルを一つ下にすると納得できます(笑)これは目から鱗でした。コメントありがとうございました
Commented by masa_the_man at 2009-06-26 02:27
アラスカさんへ

>「戦略が技術であるか?ないか?」私にはどちらでも良いように思えてしまいますw

アラスカさんにはそれでいいのかも知れませんな(笑

>戦略にとって大事なのは「戦略が技術であるか?ないか?」より「使えるか?使えないか?」です。

なるほど。

>戦略や世界観というのは、本来「突然変異」で生まれるものなので、違いがあるのは当たり前だからです。

この文章の意味がよくわかりません。できればまた説明していただけないでしょうか?コメントありがとうございました
Commented by masa_the_man at 2009-06-26 02:29
山田さんへ

>私も何か書こうと思ったのですが、他の方が既に指摘されておりますね(笑)

みなさん素早く鋭い指摘をされるかたが多いです。

>無論購入予定です、期待しております。

最初に読むと「なんだこりゃ」ですが、何度も読むにつれてスゴさが段々とにじみ出てくる素晴らしい本です。

>今週末の講演会は事情により参加できませんが、頑張ってください。

わざわざありがとうございます。実は今回は半数近くが女性なのでけっこう張り切っております(笑)コメントありがとうございました
Commented by masa_the_man at 2009-06-26 02:31
tencubeさんへ

>日本語版のwikipediaでも"技術・科学"と書かれていますから、これが一般的な日本人の理解のレベルなのでしょう。

あらら、本当ですね。しかしこの「技術」とは、おそらく「アート」という意味での技術なのかも知れません。しかしこの「技術」という定義はかなり問題ですねぇ。参考になるコメントありがとうございました
Commented by masa_the_man at 2009-06-26 02:32
ヤッシー さんへ

>勝間さんの言っている「資源」とは経済学的な意味での「資源」だと思うのですが・・・・・・

これは「アセット」という意味なんでしょうか?コメントありがとうございました
Commented by アラスカ at 2009-06-26 22:09 x
>>突然変異
つまり戦略には二つの不確実があるんですよ。

一つ目は「戦略の誕生」の不確実性です
・戦略家がいつ生まれるか
・その戦略家は戦略をいつ思いつくか

二つ目は「戦略の性格」の不確実性です
・戦略は何を目的とするか
・目的の実現の為にどの手段を取るか

一つ目の例には奥山さん自身があります。果たして十年前の奥山さんは、十年後の自分が地政学を学んだり戦略や世界観を思いついて研究をするなんて事を予測していたでしょうか?
二つ目の例はワイリーと孫子です。ワイリーはある対象のコントロールを目的として、孫子は対象よりも有利な状況を作る事を目的とする。
Commented at 2009-06-26 23:26 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented at 2009-06-27 00:25 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by masa_the_man at 2009-06-27 00:51
アラスカさんへ

>つまり戦略には二つの不確実があるんですよ。

これは突然変異と関係する話なんですか???

>一つ目は「戦略の誕生」の不確実性です

うーん、なぜこのような話になるのかよくわかりません(苦笑

>二つ目は「戦略の性格」の不確実性です

はあ。

>十年後の自分が地政学を学んだり戦略や世界観を思いついて研究をするなんて事を予測していたでしょうか?

してませんね。まあ本は書くとはなんとなく思ってましたが。

>二つ目の例はワイリーと孫子です。ワイリーはある対象のコントロールを目的として、孫子は対象よりも有利な状況を作る事を目的とする。

>しかし「突然変異」の話からそれてしまうのでこれはあえて話さないことにしておきます。

というか、なぜ突然変異なのかそもそもわかりません。アラスカさんの話はむずかしいですな。コメントありがとうございました
Commented by masa_the_man at 2009-06-27 00:53
syz さんへ

>戦略はart of warと解釈

非常に正しいと思います。

>オーケストラの指揮者がそれぞれの楽器をコントロールするように世界または対象をコントロールするもの

うまいですなぁ。そうなんですよね。芸術というよりは「技法」と言ってもいいかも知れません。

>孫子の兵法は英語で"The Art of War"

その通りです。

>artを技術とする解釈もあるみたいですが。

ありますね。ただし「テクニック」とは違うんですよね。コメントありがとうございました
Commented by アラスカ at 2009-06-27 15:56 x
>>アラスカさんの話はむずかしいですな。

なんだか申し訳ありません。
まあややこしい話ですし、そこまでしてこの話を無理に続ける必要はないかもしれません。
Commented by masa_the_man at 2009-06-28 22:08
アラスカさんへ

>まあややこしい話ですし、そこまでしてこの話を無理に続ける必要はないかもしれません。

いや、話自体はそれほどややこしいものではないのかも知れませんが、アラスカさんの話がいきなり飛ぶので難しく感じられてしまうということかも知れません。今度はなるべく順序立てて話がスムーズに流れるように努力してみて下さい。そうすればこのブログをご覧のみなさんも話についていけると思いますので。コメントありがとうございました
Commented at 2009-07-07 02:20 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by masa_the_man at 2009-07-07 23:28
けいしゅうさんへ

>よろしければご笑読ください。

さっそく読ませていただきました。たしかにちょっと難しかったですが、言いたいことはなんとなくわかりました。コメントありがとうございました
Commented by 通りすがり at 2011-04-27 19:36 x
戦略の定義は時代・地域・分野によってその意味は異なる。
また日本では戦後に企業の経営戦略のように使用されたり、経済戦略・外交戦略のように政策と同義語として使用されることも多く、また戦略的という形容詞が多用されることも重なって、その定義は拡散している。
by masa_the_man | 2009-06-25 00:31 | 日記 | Comments(30)