戦略や地政学の視点から国際政治や社会の動きを分析中


by masa_the_man
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「批判的思考」は教えられる?

今日の甲州は完全に夏日でした。

しかしこういう時に限って喫茶店の中などは冷房ガンガンなので、私は上着を持って行って勉強しに行ったわけですが、これが大正解。

逆説的ですが、「夏は寒い」のです(苦笑

さて、ジェームス・ファローズのブログで面白い論争が起こっていたので重要な部分だけ抜き出しておきます。

テーマは「批判的思考」(critical thinking)は教えることができるのか?」というものですが、これは学問の性質というものに迫る、かなり深いテーマなんですね。

====

Critical thinking can't be taught? Nonsense. It is a skill. Over the years I have personally seen hundreds of college students from a wide range of national, socioeconomic, and educational backgrounds learn to think more incisively and critically. Champions of repetition and summary have routinely evolved into convincing analysts and rhetoricians.

(中略)

It is frustrating to see Jiang Qian, in comments quoted on your blog, rehearsing a view that unfortunately just never dies: "In fact, as [an attached article] points out, "critical thinking" is not a skill like reading or carpentry that can be taught, but rather something attached to a specific set of knowledge."

There are two related debates going back many decades now:

(1) Is critical thinking a "generic" or domain-independent skill?
(2) Can critical thinking be taught as subject or skill in its own right?

People who answer no to the first question also tend to answer no to the second as well.


However these positions are definitely in the minority in the community of experts in this area.

To me, questions (1) and (2) are scarcely worth debating any more. The existence of generic skills can be proven simply by pointing to examples. The teachability of critical thinking can be proven by teaching it successfully. I devoted about half a dozen years of my academic career to working on methods for effective and affordable teaching of critical thinking. We were able to reliably generate substantial gains over one semester. Ergo, critical thinking can be taught. Case closed. [For more detail, we have a meta-analysis of hundreds of empirical studies in this area.]

What is true is that standard approaches are inculcating critical thinking skills (such as putting people through a college degree, even a liberal arts degree) make disappointingly little difference, and attempts to directly teach critical thinking also usually make little difference.

But there's a very simple explanation for this. Critical thinking is a skill, and like any complex skill, it takes a very large amount of deliberate practice to make any significant (in the sense of substantial, not "statistically significant") difference

=====

これは中国で育った経済学の教師が、アメリカの大学で教えるようになってから「西洋の教育システムはなっとらん!」と言い始めたことに端を発した議論です。

ここで問題なのは、この中国系の人が「批判的思考は教えられない」と言ったことですな。

ところがこれに猛反発したのが上の書き込みをした人でありまして、「批判的思考は技術(スキル)である」ということを熱弁しております。

ここで私が面白いと思ったのは、自分がいままでカナダやイギリスの大学で受けて来た教育は、ある意味ですべてこの「批判的思考」を育てるためのものだった、ということです。

このファローズのブログでは別の読者がアインシュタインの、

「リベラルアーツの大学で受ける教育の価値というのは、多くの事実を覚えることではなく、テキストからは学べないようなことを考える訓練の中にある」

という言葉を引用しております。これは重要ですな。

実は私も留学開始当初は「日本の詰め込み式の教育システムのほうが優れている」とこの中国系の人のように思ったことがあるわけですが、長い目で見てみると、どうやらこの「批判的思考」のほうが大きな知的財産になったような気がしております。

もちろん今でも相変わらず欧米式の詰め込みをしない教育にもかなり問題点はあると思っておりまして、「九九とかできないのはどうなのよ?」という疑問は全く消えません(笑

しかし大学に入って学問を進めると、やはりこの「批判的思考」のほうがアドバンデージがあるんですよね。

そういえばこういう「批判的思考」というのが得意だったのは、私の経験でいえばユダヤ系のクラスメートたちでした。

彼らにはある意味でタブーがありませんから、何でもテーマにして批判しつつ論じることに慣れているような。
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Commented by elmoiy at 2009-05-12 22:25 x
>彼らにはある意味でタブーがありませんから、何でもテーマにして批判しつつ論じることに慣れているような。

普通の人は、既存の社会システムを前提にして、その中で役立つスキルを教えられて育ちますから、なかなか既存システムに疑問を持ったりはしませんね。
でもユダヤ人にとっても、第二次世界大戦の戦争責任に関する議論はかなりタブーがあるのではないでしょうか。

ttp://www.chikawatanabe.com/blog/2009/04/future_of_japan.html#more
ところで、このブログ主の記事ですが、なんだかアメリカの既存システム・アメリカ的価値観に取り込まれてしまって、「批判的思考」を無くしてしまっているように思えませんか?
Commented by K at 2009-05-12 22:44 x
初等教育と高等教育では、別のやり方があるという事でしょう。
Commented by Rogue Monk at 2009-05-13 04:58 x
「批判的思考」自体を「批判的に考える」ことは案外ないですね。
上で述べられている九九や、語学みたいに「無批判詰め込み」
の方が効率的な分野もありますが、使い分けに関する議論は
余りされてないような(恐らく、対象が決まり切っていて動かし様
のないものや、対象があまりに広範な場合には詰め込みの方
が有効なんでしょう)。

あと「批判的思考」を実行する場合には、対象に愛着を持ったら
駄目なような気がします。憎悪・軽蔑とまでも行かないまでも、
対象を相当突き放して観ることができないと駄目なような。
Commented by nanashi at 2009-05-13 17:22 x
批判的思考の体系というのは、知識の品質保証体系のことです
詰め込み教育が良いか悪いかというのは、単なる需要供給の問題で次元が違います
Commented by masa_the_man at 2009-05-13 21:06
elmoiyさんへ

>普通の人は、既存の社会システムを前提にして、その中で役立つスキルを教えられて育ちますから、なかなか既存システムに疑問を持ったりはしませんね。

しませんねぇ

>ユダヤ人にとっても、第二次世界大戦の戦争責任に関する議論はかなりタブーがあるのではないでしょうか。

いや、実際にプライベートで話をしてみると意外とないような気が。もちろん人や場所にもよるのかも知れませんが。

>このブログ主の記事ですが、なんだかアメリカの既存システム・アメリカ的価値観に取り込まれてしまって、「批判的思考」を無くしてしまっているように思えませんか?

場所にとらわれている気がしますねぇ。まあこれも地政学なのかも知れませんが(笑)コメントありがとうございました
Commented by masa_the_man at 2009-05-13 21:18
K さんへ

>初等教育と高等教育では、別のやり方があるという事でしょう。

簡単にいえばそういうことかもしれませんね(笑)私は結局のところはバランスの問題だと思いますが、やはり初等教育のほうをしっかり受けれたからエントリーに書いたようなことを考えるのかも知れませんね。そういう意味では暗記式の詰め込み型も大事ですよね。コメントありがとうございました
Commented by masa_the_man at 2009-05-13 21:21
Rogue Monkさんへ

>「批判的思考」自体を「批判的に考える」ことは案外ないですね。

たしかに(苦笑

>使い分けに関する議論は余りされてないような

たしかにされてませんね。どちらか一方の良さに議論が傾きすぎですな。

>憎悪・軽蔑とまでも行かないまでも、対象を相当突き放して観ることができないと駄目なような。

まったくそのとおりですね。私も批判地政学から入った口ですが、あればっかりやっていると精神的にあまり健康ではないことがよくわかります。マルクス主義なんてのも結局はこれなわけで。コメントありがとうございました
Commented by masa_the_man at 2009-05-13 21:23
nanashiさんへ

>批判的思考の体系というのは、知識の品質保証体系のことです

おおっ、面白いんですが、これをもう少しだけ詳しく説明していただけないでしょうか?「品質保証体系」ですか。なんとなくわかるような、そうでないような。

>詰め込み教育が良いか悪いかというのは、単なる需要供給の問題で次元が違います

うーん、これももう少し説明してほしいです。いわんとしていることはなんとなくわかるんですが・・・・。コメントありがとうございました
Commented by K at 2009-05-22 00:47 x
こんな記事がありました。

北米市場を制覇するKUMON――「一人勝ち」の仕組み
ttp://bizmakoto.jp/makoto/articles/0905/20/news007.html

Commented by masa_the_man at 2009-05-22 12:20
Kさんへ

>「フランチャイズで食品といえばマクドナルド、教育といえばKUMON」と言われるくらい、北米においてもそのブランドは浸透

あー、そうかも知れません。たしかにイギリスでもけっこうみかけます。カナダでもありましたねぇ。

>その特定のグループとは「アジア系移民または移民の子ども」です。

なるほど。これは知りませんでした。教育熱心なところにターゲットを絞っているということもいえますな。コメントありがとうございました

by masa_the_man | 2009-05-12 21:48 | 日記 | Comments(10)