戦略や地政学の視点から国際政治や社会の動きを分析中


by masa_the_man
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ワイリーの戦略理論と豚インフルの感染

今日は大宮に来ておりまして、ある勉強会に参加しております。こちらもけっこう暑いですな。

豚インフルについて日本でもかなり色々と話題が出てきておりますが、これに関して拙訳『戦略論の原点』からこの問題について考える際にもう一度役に立つ部分を再録しておきます。

すでにここでも何度が書きましたが、ワイリーの「究極の戦略理論」というのは四つの想定から成り立っております。これを念のためにもう一度記しておくと、

1、いかなる防止手段が講じられようとも、戦争は起こる。
2、戦争の目的は、敵をある程度コントロールすることにある
3、戦争は我々の計画通りに進むことはなく、予測不可能である。
4、戦争における決定権は、その場に立ち、銃を持っている男が持つ。

ということになります。

実はこれをある医療関係の方が、このワイリーの四つの想定を応用して、本ブログのコメント欄に面白いことを書いてくれました。豚インフルの問題が出てから、私はこのコメントが気になっていたんですね。

けっこう役立ちそうなので、ここに本人の承諾なしで勝手に貼付けておきます(笑

====

自分は医療従事者で、最近感染対策を任されたのですが、

1、感染は起こるものと想定せよ
2、感染対策の目的は「感染のコントロール」にある。
3、感染経路は何で起こるかわからない。
4、院内感染を最終的に抑制するのは、現場に立つ医師や看護士である。

====

うまい応用ですよねぇ(笑)

「戦争/敵」と「(院内)感染」を入れ替えただけなんですが、いまの状況を考える際にけっこう役立ちそうな。

とりあえず参考まで。
Commented by アラスカ at 2009-05-03 12:17 x
戦略は戦争以外を説明できる、という良い例ですね。
Commented by 愚人 at 2009-05-03 17:55 x
これって、色々応用できそうですね。
例えば、私の属するIT業界ですと、

1、いかなる防止手段が講じられようとも、プロジェクトは失敗する。
2、プロジェクトマネジメントの目的は「ダメージのコントロール」にある。
3、プロジェクトは我々の計画通りに進むことはなく、予測不可能である。
4、失敗のダメージを最終的に抑制するのは、現場に立つSEやプログラマである。

是非、コンサルタントにころころ騙される日本の大企業役員にも見ていただきたいですが。
Commented by カカ at 2009-05-03 20:01 x
今回の豚インフルエンザは、やはり陰謀論ですか?
たしか、アメリカにとって最大の問題は、中東問題ではなく、隣接するメキシコとの移民問題や領土問題なんですよね。
これは、日本における在日韓国人の問題に似たようなものがある。
しかし、今の時代、目に見える形で、戦争するのは、なかなか不可能だ。
だから、メキシコからの移民という静かなる侵略を防ぐことが出来ない。
そんなの時に、生物兵器テロのような特定が困難な攻撃は、一番、利に適っていると。
あと、カリフォルニア州では、シュワちゃん知事の横に、軍の関係者が並んでいましたよね。こういう非常事態になって、はじめて軍による統制の大義名分ができる。
そういえば、日本でも、阪神大地震や北朝鮮の不審船騒動のたびに、徐々に自衛隊が復権してきた。
Commented by アラスカ at 2009-05-03 20:15 x
気になる事があるのですが。
ワイリーは「いかなる防止手段が講じられようとも、戦争は起こる」と主張する一方で、ナイは「戦争は不可避であるという信念は、自己実現効果を持つ」とも主張しているんですよね。
この二つを考えるとジレンマを抱えてしまいます。ワイリーとナイの言葉はどちらも本質を言い当てていますので、どちらかが間違いだとは言えないんです。
ジレンマを解消できるような、二つが矛盾しないと言えるような、何かうまい「説明」や「解釈」や「理論」は無いでしょうか?
Commented by masa_the_man at 2009-05-03 23:32
アラスカさんへ

>戦略は戦争以外を説明できる、という良い例ですね。

その通りです。

>この二つを考えるとジレンマを抱えてしまいます。

この二人の見ている現実は違う、ということでどうですか?

>ジレンマを解消できるような、二つが矛盾しないと言えるような、何かうまい「説明」や「解釈」や「理論」は無いでしょうか?

ないと思います(苦笑)二人は違う人間なので、そのフォーカスも違いますから。そこは割り切って考えてもいいんじゃないですか?コメントありがとうございました
Commented by masa_the_man at 2009-05-03 23:34
愚人さんへ

>これって、色々応用できそうですね。

そうなんですよ。考え方によってはかなり応用がききます。

>いかなる防止手段が講じられようとも、プロジェクトは失敗する。

なんだか悲観的ですなぁ(笑

>プロジェクトは我々の計画通りに進むことはなく、予測不可能である。

なるほど(笑

>4、失敗のダメージを最終的に抑制するのは、現場に立つSEやプログラマである。

うまいっ。

>是非、コンサルタントにころころ騙される日本の大企業役員にも見ていただきたいですが。

そうかも知れません。このIT向けのやつも面白いですね。コメントありがとうございました
Commented by masa_the_man at 2009-05-03 23:37
カカ さんへ

>今回の豚インフルエンザは、やはり陰謀論ですか?

うーん、人工のウィルスだという話は完全にないと思いますが、騒ぎ過ぎというのはちょっと気になりますね。

>たしか、アメリカにとって最大の問題は、中東問題ではなく、隣接するメキシコとの移民問題や領土問題なんですよね。

それに貿易摩擦の最大の相手はカナダですし(笑

>そんなの時に、生物兵器テロのような特定が困難な攻撃は、一番、利に適っていると。

まあ生物テロかどうかは私は判断しかねますが。

>シュワちゃん知事の横に、軍の関係者が並んでいましたよね。こういう非常事態になって、はじめて軍による統制の大義名分ができる。

まあアメリカは軍への信頼が絶大ですからね。

>そういえば、日本でも、阪神大地震や北朝鮮の不審船騒動のたびに、徐々に自衛隊が復権してきた。

あるかも知れません。それは結局のところ「サプライズによる影響」ですからね。コメントありがとうございました
Commented by アラスカ at 2009-05-04 17:47 x
>>この二人の見ている現実は違う、ということでどうですか?

「戦争は起こるものと想定せよ」と考えて戦略を立てると、その戦略は「戦争は不可避であるという信念は、自己実現効果を持つ」という問題を抱えててしまうんですよ。
このジレンマを解消する最も手っ取り早い方法はどちらかが間違っているとする事ですが、この場合どちらも歴史で証明されているので、経験から導き出される原則としてどちらも正しいことになってしまう、というわけです。

>>割り切って考えてもいいんじゃないですか?

そうですね。二つのセオリーを同時に使うのは難しいのでしょうか?
場所や時間によって、使うのに適切なセオリーというのがあるのかも知れませんね。
Commented by 柴崎力栄 at 2009-05-04 21:29 x
2年前に原書が出て、英語で読んだつもりになっていた Richard J. Samuelsの"Securing Japan: Tokyo's Grand Strategy and the Future of East Asia"が翻訳されて、リチャード・J・サミュエルズ『日本防衛の大戦略: 富国強兵からゴルディロックス・コンセンサスまで』として日本経済新聞社から上梓されました。梅田の紀伊国屋に平積みになっていた。Kent CalderのPacific Defense(原著1996年)が同年に『アジア危機の構図』として出たのも、やはり日経からだったなと思い出しました。タイトルの付け方のセンスが少し変なのも、共通しているかも。
Commented by elmoiy at 2009-05-04 21:48 x
>日本防衛の大戦略: 富国強兵からゴルディロックス・コンセンサスまで

日本は無条件に強国に乗っかるという戦略を選んできたと考えている欧米人が多いみたいですね。

チャルマーズ・ジョンソン、サミュエル・ハンチントン、カレル・ヴァン・ウォルフレンもみな著書の中でそう述べています(苦笑
Commented by masa_the_man at 2009-05-04 22:49
アラスカさんへ

>「戦争は不可避であるという信念は、自己実現効果を持つ」

まあこの「効果を持つ」というのは必ずしもそうなるわけではないですから・・・

>「戦争は起こるものと想定せよ」

これも「想定」だけですし。

>二つのセオリーを同時に使うのは難しいのでしょうか?

別に同時に使わなくてもいいんじゃないですか?それにセオリーといういうのは基本的に「ウソ」ですし。

>場所や時間によって、使うのに適切なセオリーというのがあるのかも知れませんね。

いいんじゃないでしょうか。コメントありがとうございました
Commented by masa_the_man at 2009-05-04 22:51
柴崎さんへ

>リチャード・J・サミュエルズ『日本防衛の大戦略: 富国強兵からゴルディロックス・コンセンサスまで』

私も新聞広告で見ました。私も原著で読みましたねぇ。ミアシャイマーが推薦文書いているんですよ。買わないと。

>『アジア危機の構図』として出たのも、やはり日経から

そういえば彼の基地問題を扱った新しい本も話題になってますねぇ。おそらく訳書も出そうですが。

>タイトルの付け方のセンスが少し変なのも、共通しているかも。

わははは。たしかに平凡な感じになってしまってますよね。コメントありがとうございました
Commented by masa_the_man at 2009-05-04 22:52
elmoiy さんへ

>無条件に強国に乗っかるという戦略を選んできたと考えている欧米人が多いみたいですね。

まあ彼らの目から見るとそういう風に見えるからしょうがないんでしょうが。

>チャルマーズ・ジョンソン、サミュエル・ハンチントン、カレル・ヴァン・ウォルフレンもみな著書の中でそう述べています

そういえば日本は「ヘッジング」ですからね。コメントありがとうございました
Commented by 愚人 at 2009-05-05 01:49 x
masaさんへ

>なんだか悲観的ですなぁ(笑
大規模プロジェクトで予算、期間、品質、機能すべてを満たしたプロジェクトは無いといわれています。
一方、最近流行のPMBOKという、米国のプロジェクトのガイドラインのようなものの定義によれば、「利害関係者全員の期待を上回れば成功。」という条件になっています。この基準だと、日本ではよほどのことがない限りは「利害関係者」が口裏を合わせてすべて成功ということにしていますので、逆に失敗は殆ど無いことになります。(利害関係者も「失敗」ということになれば何らかの責任が問われることがありますので。)

戦争では差し詰め、「戦争指導者の期待を上回る成果であれば勝利」と言うことになるのでしょうか?
この基準で勝った勝ったと言い続けて大変な目にあった国がどこかにあったような。
Commented by masa_the_man at 2009-05-05 10:09
愚人さんへ

>大規模プロジェクトで予算、期間、品質、機能すべてを満たしたプロジェクトは無いといわれています。

そうなんですか。

>日本ではよほどのことがない限りは「利害関係者」が口裏を合わせてすべて成功ということにしています

主観的な基準ですな(苦笑

>戦争では差し詰め、「戦争指導者の期待を上回る成果であれば勝利」と言うことになるのでしょうか?

これはどうだかわかりませんが、とりあえずクラウゼヴィッツ的に言えば「敵の意志を屈服せしめた時」ということになるでしょうか。ワイリー的には「敵をコントロールできた時」ということでしょうね。

>この基準で勝った勝ったと言い続けて大変な目にあった国がどこかにあったような。

なるほど(苦笑)参考になる意見をありがとうございました
Commented by 柴崎力栄 at 2009-05-05 12:28 x
奥山さん:
>>私も新聞広告で見ました。私も原著で読みましたねぇ。
この本は、注を見るのがとても楽しい。あの研究、この人の発言が、そういう文脈から論及されるのか、と、読んでいて楽しい。芸の極致です。
Commented by Oink at 2009-05-05 15:54 x
日高義樹の最新の本でも〆で「アメリカが弱体化しオバマ政権が
アジアを見捨てても日中同盟に走るのは愚かな行為」と書いていました。

核兵器に通常兵器で対抗するのは、ナンセンスですしねぇ。
アメリカとの集団的自衛権なんて踏み込んでいいのかしら?

同盟を入れ替えるのが得意だなんて欧州列強には言われたくないです
日英同盟の顛末や日露戦争後のロシアとの関係。
第二次世界大戦後にアメリカの世界戦略に組み込まれたこと。
あとは、ニクソン訪中後の、日本の日中国交回復あたりですか?
毛沢東・周恩来がいる時代じゃなきゃ、そんなことはできなかったでしょうに。ああ、それが嫌というか不気味なのか?独ソ不可侵条約みたいで。

気になっているのは、豪州海軍増強かとかいうニュースです。
そのちょっと前に、中国海軍は海上自衛隊の足元にも及ばないみたいな
記事を2chで読んだので、こちらを巻き込むなよといいたくなりました。

海軍増強計画は、中国の第二列島線構想に備えて。
人口が10倍強いるインドネシア向け。
南半球での米中の海軍バランスに影響を与えるパワーを持ち
豪州の利益を守りたい。ここらへんですか?
Commented by masa_the_man at 2009-05-05 22:32
柴崎さんへ

>この本は、注を見るのがとても楽しい。あの研究、この人の発言が、そういう文脈から論及されるのか、と、読んでいて楽しい。芸の極致です。

というか、向こうの優秀な論文ってほとんどこういう感じなんですよね。私の先生の本も、かなり他の人と読む本が違ってて面白いです。註を読むだけでも勉強になりますよね。コメントありがとうございました
Commented by masa_the_man at 2009-05-05 22:38
Oinkさんへ

>同盟を入れ替えるのが得意だなんて欧州列強には言われたくないです

わははは、たしかに(苦笑

>豪州海軍増強かとかいうニュースです。

私も新聞でこの記事を切り抜いておりました。

>海軍増強計画は、中国の第二列島線構想に備えて。人口が10倍強いるインドネシア向け。

ですよね。あそこは豪州の影響圏ですな。少なくとも彼らはそう思ってます。

>南半球での米中の海軍バランスに影響を与えるパワーを持ち豪州の利益を守りたい。ここらへんですか?

そうなりますね。コメントありがとうございました
by masa_the_man | 2009-05-03 09:26 | 日記 | Comments(19)