戦略や地政学の視点から国際政治や社会の動きを分析中
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2014年 03月 29日

ロバート・カプラン新刊:南シナ海レポート

今日の横浜北部は朝から晴れましたが、午後は少し曇りました。

さて、久々に本の紹介を。私が翻訳したことのあるロバート・カプランが、またまた新刊を発売しました。

今回のテーマは、なんと南シナ海。これは私が二年前に国際会議に出た時にあるBBCの記者に「カプランが書いている最中らしいぜ」と聞いたものです。

Asia's Cauldron: The South China Sea and the End of a Stable Pacific
by Robert D. Kaplan
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タイトルを直訳すると、「アジアの大釜」ということになりますが、Youtubeに上がっている出版記念講演会の話からすると、南シナ海が20世紀におけるミッテルオイローパ(中欧)のようなもので、ここが21世紀の地政学的な問題の中心地になる、というものです。

本は冒頭から本人が現地を旅した様子から始まり、これはまさに『インド洋圏が、世界を動かす』の書き方とそっくりでありまして、違うのは扱っている国と地域。

今回はベトナム、フィリピン、マレーシア、それに台湾や中国までが中心です。

これは見方を変えれば、私が翻訳した本の続編という形で見てもよろしいかと。

まさその時と同じように、現地に行って、政治家などに直撃インタビューなどをかましたり、現地でボートを借りて人々の生活から地域の歴史について思いをはせたり。

個人的にはスパイクマンの理論や、ミアシャイマーのような理論家の文献まで丁寧に引用している部分や「日本海」としっかり表記していることに好感(笑)がもてましたが、意外に中国に甘い見方をしているところが気になるところ。

ということで、南シナ海は「アジアの地中海」であり、「海の環境」であるために第一次大戦のような紛争にはならない、という予測など、なかなか知的刺激にあふれる、しかしながら適度にバランスのとれた興味深い分析をしております。

やや詩的な表現を多用しておりますが、本編は200頁弱なので、英語が読めるかたはぜひ挑戦なさってみては。おすすめです。

余談ですが、上の動画は本当に面白いですな。カプランが現地に行った時の取材の仕方の秘訣などについて語っております。

「印象に残ったことはすぐにノートにとれ」ということであり、「何度も長期滞在してみろ」、「現地の人に何も語られない中に真実がある」というのがその秘訣らしいです。


プロパカンダ&セルフプロパカンダCD

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by masa_the_man | 2014-03-29 22:18 | おススメの本 | Comments(0)
2014年 01月 20日

日本史の謎は「地形」で解ける

今日の横浜北部もよく晴れて寒かったです。さすが「大寒」だけありましたな。

さて、久しぶりに本の紹介というか、正確には「紹介された本の紹介」です。

日本史の謎は「地形」で解ける (PHP文庫)
by 竹村 公太郎

この本、先日行った地政学研究所での講義で参加者の方に教えてもらったもの。まだ到着したばかりなので中身まで詳しくは読み込めていないのですが、簡単にいうと、

●元国交省の官僚さんが「インフラ屋」としての誇りを胸に、日本史の常識を地理の知識を使って徹底的に洗いなおす

というもの。いわば古典地政学でいうところの三位一体のうちの一つである「物理的地理」を軸に、既存の日本史の定説にたいする新しい解釈を加えていくというものなのですが、象徴的なのは著者の以下の記述。

●明治以前は、食糧とエネルギーを自足できるかどうかが、その土地の発展を決した。もちろん、主要な食糧は米と薪(まき)であった。

●この米と薪に共通して必要なものは河川である。河川の沖積平野と水が米を与えてくれ、川の上流域の森林がエネルギーの薪と炭を与えてくれた。

●都市が繁栄するための食糧とエネルギーの確保、それを言い換えると、「大きな川があるかどうか」であったのだ。(p.346)

というもの。まさに徹頭徹尾「物理的地理」という観点から政治地理学を分析しているという特徴がよく出ております。

もちろんあまりにも地形という「下部構造」のみを重視しているために、逆に上の「地理観」のようなものへの言及が少なく、それによってやや強引ともいえる結論付けが見受けられるところは多々ありますが、それでもそれを余りあるほどの魅力的な説明(遷都の理由など)をいくつも展開しております。

ということで、まださらっと読んだだけでもかなり興味深い記述がいくつも発見できる面白そうな本であります。

本ブログをお読みのかたはぜひ一冊。


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by masa_the_man | 2014-01-20 22:41 | おススメの本 | Comments(2)
2013年 09月 11日

サイバースペースにおける紛争の歴史

今日の横浜北部は朝方曇っておりましたが、昼前から晴れてきました。朝は涼しかったですね。

さて、シリア情勢がロシアの口出しのおかげでなんとなく落ち着いてきた(といっても内戦は続いていますが)感がありますが、今日は久々に本の紹介を。
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A Fierce Domain: Conflict in Cyberspace, 1986 to 2012
by Jason Healey

題名を直訳すると「獰猛な領域:サイバースペースにおける紛争、1986〜2012年」という感じでしょうか。出版元はワシントンのシンクタンクで、主に世界各国の首脳と強いコネを持つことで有名な「大西洋評議会」(Atlantic Council)。

本の体裁の質はやや劣るものの、オススメの言葉がジョセフ・ナイやエストニアの大統領から出ているなど、その「コネ度」の高さは注目すべき本であることがよくわかります。

内容はサイバー紛争にかんする歴史について書かれた論文をまとめた「論文集」ということなんですが、前半のほとんどは編著者で米空軍の将校であるヒーリーが書いたもの。

この本の前提にあるのは、「そもそも過去から得られたサイバー紛争の教訓は全く活かされていない」というもの。その理由として、サイバー領域を研究する人間は、新しい現象ばかりに目が行き過ぎてしまい、過去とほとんど同じようなパターンがあることに気づかないからということ。

しかも新しくそれを研究しはじめた人間たちは、「これが全く新しい分野だ!」として過去を振り返る作業を完全に怠っており、これはアメリカ政府のセイバー研究部門でも全く同じで、たとえば「2007年以前の歴史はほとんど存在しない」としている点だとか。

そして本書は今までの25年間のサイバー紛争を3つの時期に分割し、

1,80年代半ばからの実現化(Realization)の時代
2,1998年以降の「飛躍」(Take-off)の時代
3,2003年以降の「軍事化」(Militarization)の時代

としており、この25年間のうちに起こった大事件として、

①モーリス・ワーム、②エリジブル・レシーバー演習&ソーラー・サンライズ事件、③ムーンライト・メイズ(ロシア)、④中国のスパイ、⑤エストニア/グルジア、⑥バックショットヤンキー作戦、⑦スタックスネット

の7つの例を挙げております。

細かい話は飛ばしますが、彼は最終的に三つの結論として、

1:サイバー紛争は時間を経過してもあまり形は変わっていない。よって、過去のケース(無視されることが多いが)は現在でも非常に多くの示唆を与えてくれる

2:サイバー紛争の可能性やその損害の大きさは過大視されることが多いが、実際に起こった事件のインパクトについては常に理解が不足している。

3サイバー紛争が戦略レベルに近づけば近づくほど、陸上や海上や空で行われる実際の戦闘に似てくることになる。

私の結論ですが、ケースが豊富(日本の例もあり)でよくまとまっており、国別にどの国がどの国に攻撃されているかなどの表もあるくらいで、たとえば日本は中・韓・北に攻撃されているが、日本が攻撃を与えているのは韓国であることなど、意外な事実についても書かれております。

また、サイバーが核抑止に似ていることや、メディアで喧伝されていることと実際はどのように違うのかなど、その興味深い実態を教えてくれるという意味で資料的価値も高いものであると感じました。

サイバー紛争に興味ある人にとっては今後は必読書になっていくくらいの影響力の大きい本になると思います。超オススメ。


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by masa_the_man | 2013-09-11 22:23 | おススメの本 | Comments(0)
2013年 08月 10日

偉大な本

今日の横浜北部はいよいよ暖房かかってました。

本日は所属する学会の編集委員会があったので参加してきましたが、なんと旧仮名遣いで投稿してきた論文があったので会議が大揉め。

投稿規定には「原則として日本語で」と書いてあるわけですが、旧仮名遣いとは完全にサプライズでした。

さて、先日実家のほうに行ってきたときに見つけてきた昔の本をご紹介します。

Great Books: My Adventures with Homer, Rousseau, Woolf, and Other Indestructible Writers of the Western World
by David Denby

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カナダ時代に向こうで買った本なのですが、内容は48歳のベテランの映画評論家が、何を思ったのか突然コロンビア大学の人文学の西洋の基本文献を網羅するコアコースに入り直して、若い奴らと一緒に受けた授業をレポートするというもの。

もちろん生徒たちは20前後の若い奴らで、しかも西洋文明の古い文献の素晴らしさなどは理解していないようなのばっかりなわけで、片方は人生経験を積んだオッサンが、これまた批判的な目で自分と同じような年の教授たちから授業を受けるわけですから、その認識のギャップなどがこれまた面白い。

読まされるのはホメロス、プラトン、アリストテレスから聖書、ロック、それにシェークスピアからヴァージニア・ウルフまで幅広く、これを授業ごとにならべて詳細なレポートにしております。

今になって考えてみると、この本は自分がこのブログを始めるきっかけにもなったという意味で大変貴重なものなのですが、とにかくこの授業を受けている風景と、宿題で読まされている文献についての独特な見方がとても興味深い。

とくに私はこの本が出たのと同じ時期に同じような授業を受けていたので、かなり親近感を持って読んだ記憶があります。

印象的だったのは、聖書の授業でユダヤ人の女の子が大騒ぎし始めたことや、あとは最初の授業で「人文学の授業はWASPや死んだ白人男性(DWM)、それに西洋文明(WC)によって書かれたものだと批判されてきたが、それは全部ウソだ」と教授が宣言した部分などでしょうか。

かなり分厚い本(460頁以上)ですが、英語が読める方だったら、その読みやすさと授業中のエピソードの面白さに引き込まれてしまうこと請け合いです。


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by masa_the_man | 2013-08-10 22:19 | おススメの本 | Comments(2)
2013年 08月 02日

対暴動(COIN)は効いてない?

今日の横浜は曇りがちながら朝からけっこう日が出ておりまして、段々と蒸し暑くなっております。

さて、最近読んだ本の中でもとくに面白かったものがあったのでご紹介です。

Wrong Turn: America's Deadly Embrace of Counterinsurgency
by Gian Gentile

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著者のジアン・ジェンティルは米陸軍の元大佐でありまして、イラク戦におけるペトレイアス将軍の功績である「サージ」(陸上兵力の増強による暴動の平定)は実は効かなかったという記事を2008年に書いて話題になった人物です。

彼については本ブログでもだいぶ前に紹介しましたが、米陸軍を中心に行われていた「大議論」である、アメリカは軍備をすべてCOIN(対暴動)向けのものに変えてしまうのかどうかという、いわゆる「保守派」と「十字軍派」の対立がありまして、彼はその一方の側の強烈な論者でありました。

ジェンティルの立場はコリン・グレイと同じで、「いまの重要な任務がCOINだからと言って、その全てをCOIN向けにしてしまうと、将来の脅威に対応できなくなってしまう」という「保守派」です。

それとは逆なのが「十字軍派」であるジョン・ネーグルやデーヴィッド・キルカレン、それにこの間不倫騒ぎでCIA長官を引責辞任したペトレイアス将軍たちなわけでありますが、そもそも彼らが米軍内で力をつけた理由は、2007年にイラクで行った戦術転換である「サージ」を成功させたからというもの。

ところが本書のジェンティルは、いままでCOINでいわれていた原則である「国家建設して国民を味方につけ、反乱軍を市民から隔離する」という方針は、FM3-34(2006年12月発表)のようなドクトリンの前から、アメリカの地上部隊は「武装国家建設」という方針で同じようなことをやっていたということ。

そして意外なことに、ジェンティルは「ペトレイアスへのリーダーシップの交代は、米陸軍の現場の作戦レベルにおいては全く変化を及ぼしていない」と断言します。ところが2008年からイラク内で戦闘やテロによる死者が激減してきたのは事実。

では何がCOINを「成功」させた(ように見せた)のか?

ジェンティルはその理由を三つ挙げておりまして、イラクの場合は

1,アンバー省におけるスンニ派が、アルカイダに徐々に対抗しはじめたから
2,シーア派がスンニ派との内戦をやめようと武闘派を抑えはじめたから
3,バグダッド内で宗派ごとに居住地域を分離したから

と言っており、ペトレイアスのCOINへの変換は全く関係ないと答えております。

実際に彼は現場で戦っていて、その実情を知っておりますし、それを裏付けるような冷静な研究も続々出てきているという点で、かなりの説得力を持っていると言えるでしょう。

ところが現場を知らないメディアや知識人たちは、暴力レベルが下がったという現象だけを拡大解釈して、いわゆる「COINナレティブ」を使ってペトレイアスを神格化している、というわけです。そしてその「神格化勢力」が、フレッド・ケーガンやマイケル・オハンロンなどです。

それに加えて、彼は現在のシリアへの介入を考えている政府にたいしても非常に警戒しております。

本書は短いながらもイギリスのマレー鎮圧やベトナム、それにイラクとアフガニスタンにおけるそれぞれのCOINの事例を振り返りつつ、実はあまりこの作戦は効いていないということを論証しております。

実際に彼が目撃したエピソードから歴史的な例の検証まで、本が薄い(本文はたった140ページ)わりには現在のアメリカの戦略文化の肝の部分を教えてくれるという意味で、中身の濃い優れた本です。オススメ。


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by masa_the_man | 2013-08-02 18:00 | おススメの本 | Comments(0)
2013年 05月 19日

新しい「オフショア・バランシング論」?

さて、久々に本の紹介をします。

いわゆる「オフショア・バランシング」論と少しだけ関係のある学術書なのですが、テーマはいかにもアメリカという感じです。

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Cutting the Fuse: The Explosion of Global Suicide Terrorism and How to Stop It
by Robert Anthony Pape & James K. Feldman

題名を直訳すると『導火線の切断』という感じになるのかもしれませんが、表紙の写真からもわかるように、これは自爆テロに関係したものです。

日本の場合だと、どうしても安全保障の関心は中国を中心とした「国家対国家」という形の、いわば伝統的な脅威に関心が集まっておりますが、常に戦争継続中のアメリカの関心は(一時期から多少減ったとはいえ)やはり(自爆)テロというところにあります。

それがなぜ「オフショア・バランシング」と関係しているのかといえば、この著者の一人であるロバート・ペイプが、この本の最後に提案としてこの大戦略を採用すべきだと提案しているからです。

このペイプという人物は、『大国政治の悲劇』のミアシャイマーの弟子で、現在もシカゴ大学で教授をやっているわけですが、戦略学の分野ではなんといっても戦略爆撃(strategic bombing の研究の第一人者として非常に有名。

とくに『勝利のための空爆』(Bombing to Win)は、社会科学的な手法を駆使しながら「戦略爆撃って、実はあまり効果がない」ということを実証した(といっても結論は議論されてますが)すぐれもの。

ところがペイプ自身は2001年の9月11日から研究分野を「自爆テロ」に一気に変えまして、その数年後には『勝利のための死』(Dying to Win)という似た題名で、これまた膨大なデーターを社会科学的に分析しながら自爆テロの実態(とくにナショナリズムという原因)に迫っております。

そして今回ご紹介する『導火線の切断』ですが、これは『勝利のための死』のアップデート版とも言える内容です。

結論としては、「アメリカに対する自爆テロが起こる場所というは、米軍が占領している場所と深い相関関係がある」というすごく単純なことになるわけですが、特徴としてはそれを詳細なデータを使って示していることや、この現象を「肺がん」とかなり似たような部分があること、そしてそれを防ぐにはどうしたら良いのかというところまで踏み込んでおります。

最後の解決法として出てくるのが「オフショア・バランシング」なわけですが、たしかに自分たちが直接手を下すよりも、その地域の同盟国に押さえつけてもらったほうが(アメリカとしては)合理的だ、ということに。

そういうわけで、「オフショア・バランシング」は本書ではメインの議論ではなく、あくまでも「おまけ」のような扱いなわけですが、それでも別の安全保障上の懸念から一つの大戦略の考え方として採用を呼びかけられているという意味では面白いかと。

300頁以上ありますので気軽に読める本ではないですが、その扱っている事象の広さや文の読みやすさなどは、この分野の主著的な扱いという意味で貴重です。
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by masa_the_man | 2013-05-19 07:00 | おススメの本 | Comments(3)