今日の横浜北部は午後から打って変わって晴れました。昼までの嵐はすごかったですね。
さて、これを更新している現在もカルロス・ゴーン元日産社長の会見が行われておりますが、海外のメディアの気になる見解として英エコノミスト誌の最新号の記事を要約しましたのでご覧ください。
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2020-1/2
カルロス・ゴーン案件で得した人間は誰もいない
コストカッターは逃亡中
「カルロス」と呼ばれていた人間が国際的な指名手配犯としてレバノンに潜伏していたことがあるが、それは1975年のことである。彼の名は「カルロス・ザ・ジャッカル」(
フォーサイスの小説に由来)であり、ベイルートに隠れていた。
今日では同じ「カルロス」がレバノンに潜伏しているが、彼はテロリストではなく、実は熱狂的なコストカッターとして知られる大企業の有名社長である。ルノー・ニッサンの元ボスであり、2018年11月に金融商品取引法違反の疑いで逮捕されたカルロス・ゴーンは、保釈中の身であるにもかかわらず、2019年の大晦日の日にレバノンへ逃亡した。
彼はレバノンで青年期を過ごしたことがことがあり、この国は日本と犯罪人引渡し条約を締結していない。ゴーン氏は日本の司法制度の「不公正と政治的迫害」の犠牲者だと述べている。一方で、日本の検察側は彼のことを「司法から逃れた犯罪者」だとみなしている。
実際のところ、この一件は単純な道徳劇からは程遠い話だ。この件に絡んでいる3人の主人公、つまりルノー・ニッサン社、日本の当局、そしてゴーン氏自身は、それぞれ難問に答えなければならない状況にある。
ゴーン氏は2001年にニッサンの社長となり、2005年にはルノーの社長にも就任している。このフランスの車会社は日本の相手の株式の43%を所有しており、三菱を加えると合計の販売台数では世界最大の車会社を形成している。これは一見すると素晴らしいものだが、切れ味鋭いゴーン氏でさえ、このややこしい関係にある大会社をスムーズに運営することには苦労していた。
彼はルノーとニッサンをさらに統合する計画であったが、「ニッサンの独立性を維持したいと思っていた民族主義的な日本側の幹部や役員たちが、自分を逮捕に追い込むことによってこの計画を阻止した」と主張している。
ゴーン氏は自分を「殉教者」と見ていて、何も悪いことはしていないと主張している。ところが彼の行動は捜査に値するものだ。
2019年の9月にアメリカのの証券取引委員会は、彼ともう一人の同僚が、秘密の契約や文書の日付書き換え、虚偽記載などを通じて1億4000万ドルの役員報酬を隠していたと主張した。ニッサンとゴーン氏とその同僚は、これに対して課徴金を支払うことで和解しているが、その罪に関しては認否を示さなかった。結果としてゴーン氏は今後10年にわたって、アメリカの上場企業の取締役などへの就任が禁止された。
その他にもニッサンとその元ボスの間で、自分の資金と自分が経営している会社との資金を混同していたと見れるような複雑な取引があったという報道もある。
このようなことについて、日本の司法システムは素速く公平に答えを出してくれるものとわれわれは思いがちであるが、自白の使用によって有罪率99%以上を確保するそのやり方は、容疑者に対する厳しい取り扱いがあることを示している。
ゴーン氏は逮捕され、釈放され、再逮捕され、それから保釈されている。彼は弁護士もつけられずに尋問を受けていた。彼の弁護団は、重要な文書に目を通すこともできず、自分も保釈中にも関わらず妻に会えず、インターネットへのアクセスも制限されていたと述べている。
13ヶ月の取り調べの後でも裁判そのものはまだ始まっていなかった。さらに加えて、日本の社会では給与開示に関する腐敗は日常的なことだ。
ゴーン氏の一件で状況が悪化する中で、30万人以上の従業員を抱えるルノーとニッサンの足元はぐらついている。両社は単一の会社としての効率性を享受できないため、業績も上がっているとは言い難い。その証拠に、総計の自己資本利益率は、2019年には5%以下にまで下がっていると見られている。今回のスキャンダルによって動きが止まってしまったため、両社とも販売と利益率が縮小しているのだ。
ルノーは5月にフィアット・クライスラーと合併し、ヨーロッパ最大の車産業になることによってこの流れを変えようとしたが、トップの優柔不断さとフランス政府の横槍によって、この合併案は流れてしまった(フィアットの会長はエコノミスト誌の親会社の取締役会のメンバーである)。フィアットは代わりに別のフランスの車会社であるPSAと合併中だ。
今後はどうなるのだろうか?ルノーとニッサンはさらに合併するか、さもなくば株式の持ち合いを解消して行くしかない。両社とも経営立て直しのためにはコストをカットする必要に迫られている。
日本政府はゴーン氏がどのように持ち逃げしたのかを説明すべきであり、迫害を受けたとする彼の主張に対処しなければならない。
その一方で、社長から逃亡者となったゴーン氏は、自分の汚名を晴らすと公約している。だが彼の立場は尋常ではない。彼はお尋ね者であり、ニュージャージー州の半分の規模しかない国で潜伏している。彼は車産業の王様だったのに、いまは後部座席の毛布の下に隠れて残りの人生をやりすごすはめに直面しているのだ。
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番組では何度も触れておりますが、日本にいるわれわれが認識しておかなければならないのは、このような人物の持っている
日本人との価値観の違い。
先ほどまで会見の生中継を見ておりましたが、彼には「自分の非を認める」という感覚がまったくないことを感じた方も多いかと思います。
「いや〜、ゴーンのような中身の無い言いゴタゴタとした訳は全く信じられない」
と言いたくなる気持ちもわかりますが、ゴーンのようなグローバル企業で切った張ったをしている人物たちは、すでに幼いころから日本人が受けている
「まず謝ろう」
という姿勢を善なるものとして教えられていない、という点にわれわれが気づかなければならないのです。
ゴーンの会見を日本で見ているわれわれ日本人は、やはり「日本人の感覚」から、ゴーンの態度を評価しております。
ところがそのような評価基準は、少なくともゴーン自身やその周辺、さらには日本以外の国のメディアや国民たちには共有されていないのです、残念ながら。
つまりゴーンの行動を理解するためには、彼が背景として持っている価値観、もしくは「
世界観 」について、われわれが持っているものとは完全に異なるということを、それが良いか悪いか、快か不快かは別として、とりあえずは知っておかなければならないわけです。
「めんどくせぇなぁ」
と言いたくなる気持ちもわかりますが、日本が世界と付き合っていくときには、このような
価値観や行動規範を持っている人々を相手に、いかに対処していくのかを常に磨いて行かなければならないんですよね。
※告知です:今週の金曜の朝のラジオ番組、ニッポン放送の「
飯田浩司のOK!Cozy Up!」(06:00-08:00)にゲストコメンテーターとして出演させていただきます。お時間のある方はぜひ。
(ゴルゴ13: ゴーン案件とは関係ありません)
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▼〜あなたは本当の北京の工作の手口を知らなかった〜