今日の横浜北部は一瞬梅雨が開けたような空が広がりましたのが、すぐにくもり空に逆戻りです。
さて、昨日に引き続き米空軍の睡眠対策について。
前回のエントリーのエピソードでもおわかりのように、有人航空機を使った長時間にわたる任務では、乗員に高い集中力を要求することになるために、その疲れ対策が喫緊の課題として研究されておりました。
もちろんイスを買ってきて「戦略的昼寝」をさせるという対策も有効なのですが、それでも限界はあります。
そうなると、健康的には負担があるのですが、どうしても外的な刺激物、つまりコーヒーやお茶、さらには内服薬のような形で、軽度な薬物が使われることになります。
たとえばパイロットの間では、神経系に刺激を与えて覚醒するものとして"go-pills”、その反対に神経が高ぶって眠れない時のものとして"no-go pills""という錠剤を服用するという伝統がありました。
その"go-pills"の中でも米空軍でポピュラーだったのは、1930年代に開発されたデキセドリン(アンフェタミン)。
これは1980年代末までは空軍内で問題なく使われておりましたが、湾岸戦争の直後に米空軍参謀総長のメリル・マクピーク将軍が
「(スターウォーズの)ジェダイはクスリを使わないぞ」
という理由で、デキセドリンのような”go-pills”の服用を禁止しております。
つまり表向きは「湾岸戦争も終わって戦時の緊張を強いられることがなくなったから」という理由だったらしいのですが、どうも実際に空軍が禁止した理由は、
①必要以上に服用したがるパイロットが多かった
②このようなクスリの使用をメディアが問題視する傾向が強まった
であると言われております。
ただし危険な任務でのデキセドリン等の使用は、現場のパイロットたちから「危機管理上必要だ」という面から禁止解除の要求が強かったようです。
コソボ紛争の勃発にともなって、1996年には米空軍参謀総長であったジョン・ジャンパー将軍が服用禁止を撤廃し、2001年には空軍全体として「長距離フライトのような特殊な場合には条件付きで使用してもよい」ということになったそうです。
まあアメリカの場合は、日本よりも全般的に
「錠剤を飲む」
ということに抵抗が薄い文化があるようですし、向こうでテレビなどを見ても医薬品のCMが大量に流されていることに気づきます。
そういう意味で、日本ではほぼ覚醒剤扱いの薬でもアメリカでは手に入りやすい環境があるようで、生産性を上げるためとはいえ、何か不健全なものを私は感じてしまいます。
願わくばこのような薬に頼らないで生産性を上げたいところです。
あ、そうなるとやはり「戦略的昼寝」が一番ということになりますな。
(くもり空の下の白い家)