今日の横浜北部は蒸し暑くて雲が多めでした。
さて、オフショア・バランシングという戦略的なオプションに批判的な立場について一言。
昨日も述べたように、オフショア・バランシングというのは、
「19世紀のイギリスのやり方を真似すればいい!」
とする、主にアメリカのリアリスト系の学者たち(OB論者たち)によって提唱されてきたことを説明しました。
彼らは島国であるアメリカが、そもそもユーラシア大陸の三大戦略地域において軍を前方展開させておくことに懐疑的な立場。
そして当然このような考え方は、
「すでに得てきた同盟国たちや、拠点としての米軍基地をないがしろにしていいのか!」
という観点から批判されます。
ところがトランプ政権の誕生でもおわかりのように、アメリカ国内の保守派の中では、アメリカがわざわざ海外に出ていって余計な戦争を戦うよりは、
「軍を撤退させ、ユーラシアにおける軍事的なプレゼンスと政治的なコミットメントを減らして、地域の管理のコストを減らすほうが得だ」
という意見が根強いのです。
その一例として挙げられるのが、トランプ政権の元側近であるスティーブ・バノンが3月に来日したときの
証言です。
彼は2016年8月からトランプ政権の選対本部に参加したわけですが、そこでトランプ候補を当選させるために、主に3つのメッセージだけを繰り返し有権者に訴えたと言っております。それは、
1,移民の流入を制限すること
2、中国から雇用を取り戻すこと
3,中東での戦争から撤退すること
この3つ目の中東での戦争というのは、すでに述べたように、アメリカの想定する「世界三大戦略地域」の一つで行われている軍事介入のこと。
バノン自身はもちろんOB論者ではないのですが、彼はトランプ候補の選挙運動を展開するにあたり、2001年の10月から20年近く続けられている
「アメリカの中東への軍事関与の負担を減らすべきである」
というメッセージが、有権者たちにはとても有効だと判断したわけです。
ちなみに前のオバマ大統領も、初当選した2008年の大統領選挙では、「中東における戦争からの撤退」を主張しておりました。
つまり私が何を言いたいのかというと、アメリカの有権者たちの中には、
「とにかく長期的にダラダラと続くイラク・アフガニスタンにおける米軍の介入を早く止めて欲しい」
という雰囲気があるということです。
もちろん彼らはOB論者たちと同じように、
「米軍が撤退すれば、地域の国々が潜在覇権国を自分たちで抑え込んでくれる」
とは考えておりません。
むしろ単純に
「ムダだから早く本土にわれわれの兵士たちを戻してやりたい」
と思っているだけ。とにかく彼らの中にあるのは
「他国で俺たちの息子の血を流させるな!無駄な税金は使うな!」
という感情論だけで、そこにロジカルな考え方は存在しないのです。
と、ここまで書いて時間切れです。続きはまた明日。
(プリウスのある風景)