ルトワック『クーデター入門』の初版まえがき |
久々の更新です。ここ数ヶ月間、ちょっと野暮用が重なっておりましたが、そろそろブログの方も本格的に復帰したいと考えております。
さて、すでにご存知の方もいらっしゃると思いますが、おかげさまでルトワックの講演会が予約完売しました。
申し込み予約開始からたった11日間で400席が埋まりまして、あらためてルトワック人気を感じた次第ですが(おかげで彼に出版の申し込みが殺到しているらしいですが)、実は現在、私の周辺では、ルトワックの秋の来日に合わせて一つのプロジェクトが立ち上がっております。
それは、ルトワックのデビュー作であり、ある映画の元にもなった『クーデター入門』(1968年刊)の改訂版(2016年)の翻訳出版です。
この衝撃のデビュー作の改訂版、今回は私が「監訳者」となっております。すでに下訳はできあがっているのですが、現段階ではようやく私がそれに手を入れ始めた段階です。
来日に合わせられるかどうかは微妙ですが、まずみなさんにはそのさわりの部分だけでもご紹介しようと思い、初版のまえがきの部分だけ公開します。
すでに日本では昭和40年代にこの本の初版が翻訳されているのですが、絶版してから久しく、アマゾンなどでは品薄状態で非常に高値で取引されている「幻の本」となっております。
今回はその改訂版にあたる2016年版を私が監訳しているわけですが、旧版にある不正確・不明確な訳をかなり改善した形で出版するつもりです。
とにかくデビュー作が「クーデターのハウツー本」というのもかなりぶっ飛んでおりますが(笑)、ルトワックの既存の枠にはまらない、戦略思考の自由さを味わえるという意味で、みなさんの参考になるかもしれません。
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初版まえがき
これはハンドブックである。したがって、クーデターの理論的な分析ではなく、実際に国家権力を握るために活用できるような、クーデターのテクニックを紹介することを目的としている。
やる気と材料があれば素人にでもできるという意味で、料理の本に似ている。本書はそのための知識を提供するものである。
ただしいくつか注意して欲しいことがある。まず、クーデターを成功させるためには、それなりの条件がなければならないという点だ。ブイヤベースをつくるには、しかるべき魚がなくては始まらないのと同じである。
次に、クーデターで失敗したら、そこから受ける咎めは料理の失敗よりもはるかに大きい、ということである。これは、料理に失敗しても代わりに缶詰を食べることで許される、といったレベルの話ではないのだ。
だが、成功すれば手に入るものも大きい。
また、こんなものを書いて読者を誤った道に導き、危険な目に合わせることにはならないか、さらにはクーデターの有効な手引きであるために、これが動乱や暴動につながりかねないのでは、といった反対の声があるかもしれない。
それに対する私の答えはこうである。
クーデターはすでにいたるところで起きている。この本を読んで、より多くの人々がクーデターのやり方を学んだら、それはただ単に「クーデターの民主化」への一歩であり、すべてのリベラルな心の持ち主が賞賛すべきこととなるだろう。
最後に、本書で示されたテクニックは政治的に中立な立場に立って論じられたものであり、国家の権力を奪うという目的のためだけに書いたものであって、その後の政策をどのようにすべきかという点については、まったく関与するものではない。
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短いですが、非常にインパクトのある文章ですね(笑
ということで10月までに完成するかわかりませんが、ぜひご期待ください。
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