マハンのテーゼ |
さて、ひとつ調べものをしていたら再確認したマハンのテーゼを。
アルフレッド・セイヤー・マハンといえば、泣く子も黙る「シーパワー理論」の提唱者として古典地政学では有名ですが、彼が述べたとされるテーゼとして、
「大陸国家であることと海洋国家であることは両立し得ない」
というものがあります。ところがその出典であるとされる『海上権力史論』を読んでみても、そのような箇所は見当たりません。
ということは、この「テーゼ」はどこから来たのか?!と疑わしくなってしまいますが、実はマハンはこのテーゼを別の言葉で言い換えております。
その証拠が、最も有名な「第一章」の中の、六つのシーパワーの構成要素(地理的位置、海岸線の形態、領土範囲、人口、国民性、政府の性格)を説明する際の、なんと最初の要素である「地理的位置」について論じる際に、
1,なぜイギリスは海洋国として有利だったのか
2,なぜオランダと
3,そしてフランスは、富(国力)を増大できなかったのか
という三つの例を挙げつつ、それぞれの国が地理的な位置のおかげで歴史的に海軍力へと国家資源を集中できる度合いが左右されてきたということを述べております。
つまりこれは地理的な事情から、どの国も陸軍力か海軍力の両方に資源を投入させることは不可能だという意味になり、であるがゆえに「大陸国家であることと海洋国家であることは両立し得ない」というテーゼに至るわけです。
マハンは直接このテーゼを書いているわけではないんですが、イギリス、オランダ、そしてフランスの三国の例を比べながらこのテーゼを暗示している、という方が本当は正確かもしれません。
現在の「マハン的」な国家といえば、もちろんお隣の中国ですが、果たしてこのテーゼの意味することについてどこまで自覚していることやら・・・。
ということで明日は初めて熊本に出張してきます。