橋下市長や小泉元首相も使った戦略/戦術 |
さて、最近戦略そのものについて少し調べているので、そこで気付いたことなどを少し。
戦略系の本を読んでいると、意外と個人レベルで「戦略的だ」と言われている人々が意識的・無意識的にやっている、戦略や戦術に気付かされることがあります。その代表的なものが、今回ご紹介するもの。
私は名前をどうつければいいのかわからないのですが、「白黒はっきりさせる」というか「極端化する」というもの。とりあえずここでは「明確化戦略」としておきましょうか。
具体的にはどうするのかというと、敵と味方をハッキリと区別し、それを大々的に宣言するというものです。これが非常に上手かったのが小泉元首相であり、現在でもこれを活用して活躍されているのが大阪市長の橋下氏。
たとえば小泉氏の場合は、郵政民営化のときに「抵抗勢力」として敵の存在を無理やり明確にしており、他党だけでなく、自民党の中の敵まであぶり出すことによって、自分がこれから戦いを挑む相手を明確にし、その勢力にたいして旗印を明確にして、「正義の戦い」を仕掛けていったわけです。
橋下市長の場合も、朝日新聞や週刊朝日が「敵」であり、相手を明確化することによって自分に錦の御旗を引き寄せ、それによって注目を集めながらものごとを推し進めております。
外国でいえば、ブッシュ大統領が911のテロ事件の後に、世界にたいして「アメリカの敵か味方か」と迫ったわけですが、これも今回紹介している「明確化戦略」の典型的な例。
もちろんこれは日本人の一般的な感覚として、「そんなにものごとを黒白ハッキリしようとしなくてもいいのに」という感想をもってしまうわけですが、このやり方には(善悪は別としても)意外な効能もあることは間違いないわけです。
まず敵を明確化することは、個人レベルで考えれば、逆に自分がこれから何をしていくべきなのかという方向性が定まりますし、そのために集中すべきエネルギーが湧いてくる、という効果があります。
これをポジティブな例で考えれば、たとえば「自分にとってのライバルを心の中で設定する」というのも、この明確化戦略の一例でしょう。
こうすることによって、「あいつは今頃勉強している。オレもがんばらなきゃ」という形で自分のやる気を引き出せるからです。昭和の大横綱である大鵬と柏戸のライバル関係などはその典型的な例ですな。
もちろんこれはあまり個人レベルでは使わないほうがいいのかもしれませんが(苦笑)、それでも人間の性質として、曖昧さを残さずに「敵」を明確化する作業というのは有益になることが多いわけです。
エドワード・ルトワックは、先頃来日して講演した際に、「君たちは中国が台頭してくれてよかったよねぇ」と笑いながら日米の国防関係者を前に堂々と言い放ったらしいのですが(苦笑)たしかに中国はわれわれの明確な「敵」になって日本の「普通」の安全保障意識を高めてくれるいう意味で、本当にありがたい存在なのかもしれません。
日本人は「敵をつくるな」と教わってきたわけですが、場合によってはあえて積極的に敵をつくることも大切なのでは。