過剰サービスと英米の文化の違い |
さて、イギリスの友人との会話で出てきた話を。
修士時代の元コースメイトのイギリス人女子二人と、先日久しぶりにメシを食いに言った時に聞いた話が面白かったのですが、これは以前の本ブログのエントリーでも出てきた「イギリスとアメリカの文化の違い」についてのものとソックリ。
この二人は私とは違って、修士をとった後にさっさとロンドンの金融系の会社に就職しており、働き出してから七年くらいたっているらしいのですが、最近そのうちのひとりの方が、海外にコールセンターを外注して設置し、そこの人々(フィリピンやインド)にイギリスのカスタマー向けの対応ができるように教育をする仕事を任されたとか。
そこで彼女が気付いたのは、外注した先のカスタマーセンターの人たちのしゃべり方が、やたらと丁寧すぎるという点。
まずは「お電話いただきありがとうございます」から始まり「ご機嫌はいかがですか?」と念押しされ、さらには用件が終わると「本日はお電話いただきありがとうございます」と繰り返し言われるというもの。
まあ日本のコールセンターの対応なんかはこれくらいが普通では、ということなのですが、この二人のイギリス人に言わせると、「丁寧すぎて会話がやたらと長くなり、時間がもったいない」とのこと。
とくにひとりのほうは、
「やたらと人のキゲンを聞いてくるじゃない?!あれってほんとアメリカ式の対応よね!イギリス人なんか自分のキゲンがどうだかなんて全然気にしないし、下手に何回も御礼言われるよりは、早く切ってもらってさっさと次の仕事したいって思っちゃうわよ!」
とのこと。では実際に周りはそのような対応をどう思っているのかというと、彼女の部署の人たちが試用期間中にコールセンターに電話してみたところの対応の感想は、なんと六割以上が「丁寧すぎるし時間を長くとられるから無駄」と答えたとか。
「自分のキゲン(well-being)がどうかなんて、イギリス人は全然気にしてないわよ。アメリカ人ってハッピーかどうかという点にやけに固執するのよね!」
とバッサリ。
そこで、先ほど紹介したエントリーの記事の内容を簡単に説明してみると、二人はその内容に大賛成。
ここから出てくる教訓は二つあるかと。
一つは、アメリカの「幸福追求文化」というのは、世界的に見ても特殊であるという点。アメリカン・スタンダードは決して他の国にとって心地よいものというわけではないということですね。
そしてもう一つは、世界でも誇るべきレベルにあると信じられている日本のサービスも、潜在的には「やりすぎで無駄だ」と思われてしまう可能性を秘めているということです。
ようするに日本人が思っているほどは、日本のサービスの優秀さというのは世界の誰にでも受け入れられるものではないのかも、ということです。
そういう意味で、日本のサービスを世界に広めようとする場合、やはり相手国との「文化」の違いを意識するのは重要なのだとあらためて感じたわけです。