一人の時間を大切にしよう |
さて、ある本を読んでいて面白い記述があったので、その紹介を。
これはマルコム・グラッドウェルの本にも出ている有名な実験なんですが、1990年代のはじめにアンダース・エリクソンという心理学者が、西ベルリンのエリート向けの音楽院での調査を行った時のこと。
エリクソン教授の調査チームは、この学校の教授たちに、ヴァイオリン専攻の学生を三つのグループにわけて教えて下さいとお願い。その分類法は以下の通り。
①完全にプロレベル(上級)
②まあまあいけるレベル(中級)
③バイオリンの先生になれるレベル(下級)
そしてこの調査チームは彼ら全員をインタビューして、詳細な日記をつけることをお願いした。
その結果として判明したのは、このグループの間の時間の使い方の大きな違い。
もちろん彼らは同じクラスを受けているわけですから、授業の時間割りなどはほとんど同じ。それでもその技量に大きな差が出たのはなぜか?
それは彼らの練習に使う時間の使いかた。もっといえば、どれだけ「個人練習」に時間を裂いているか、という点。
その証拠に、上級と中級の二つのグループは、一週間に24・3時間、一日に直すと平均3・5時間を独りで練習していたのだが、下級のグループは週に9・3時間、一日平均1・3時間しか個人練習に時間を使っていないことが判明。
しかもグループで活動している一流の音楽家たちも、みんなで練習するときというのは単なる「お遊び」であって、本当の練習は個人でやるものであるという認識を持っている人が多いとか。
エリクソンは他の分野、たとえばチェスのプレイヤーなどでも同じような傾向を発見しており、「個人練習が本当の練習である」と結論づけております。
最近の世の中の一般的な傾向として、なんでも「チームやグループでやりましょう」というのがあります。
しかし上記の結果からも示唆されているように、われわれは自分たちのパフォーマンスを向上させたいと本気で思うのなら、このような「一人の時間」というものをもっと大切にするべきではないでしょうか?
この忙しい「気が散る時代」に生きているからこそ、なおさら貴重な時間の過ごし方になってくるのかと。