テクノロジーが無駄な作業を増やす? |
さて、本当に久々にブログにエントリーを。要約なんですが、これはテクノロジーが社会を不便にしているという負の面を強調した興味深いものかと。
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GPSが救助信号を頻発させる
by ディヴィッド・ロバーツ
●携帯やGPS関連機器が普及したおかげで、アメリカの山岳地帯などでは不必要な救助を求める行為が増えており、結果として救助を行う際の救助隊員の命をリスクにさらすことになってきている。
●アメリカ中の救助隊たちは「誤った警報」や、新しい機器のおかげで安全を担保されていると勘違いして無理をしてしまった初心者たちに直面しているのだ。
●多くの人々が個人用捜索救助システム(PLB)を使い始めたおかげで、山岳地帯のような自然あふれる過疎地でボタンを押して、救助信号を出して救助できるようになったのだ。
●ところが問題は、PLBは救助を求めていることは教えてくれるが、その具体的な内容までは教えてくれないことだ。
●救助隊員たちはPLBのことを「お坊ちゃんたちの110番信号」と呼んでおり、「そもそもいっちゃ行けないようなところにいくアホのために政府のカネを使う装置だ」と皮肉を言う人もある。
●また別の人物は、本当の問題が「このような機器に頼ろうとする人間側にあるのです。彼らはまるで近所のパトカーか消防車を呼ぶような感覚で呼ぶわけですから困ったものです」と言っている。
●2009年にグランドキャニオンで起こった例では、四人のハイカーたちがSPOTと呼ばれる救助信号機器でヘリの助けを呼んだのだが、救助されることは断っている。理由は「水が少なくなったから心配になって呼んだ」とのこと。
●ところが次の日に彼らはまた救助信号を出し、別の救助チームがヘリで駆けつけると、ハイカーたちから聞いたのは「持っていた水がしょっぱい」という不満だった。
●三日目に三回目の救助信号が押された時、救助チームは堪え兼ねて三人をヘリで町まで連れ戻すことにしたのだ。理由はハイカーのグループのリーダーが執行妨害である。
●もちろんこのような極端な例は少ないのだが、それでも「誤った警報」は増加している。
●たとえば2010年にグランドティートン国立公園では、ハイカーたちが山を降りるためにヘリを要請したのだが、一人は「温かいココアを持ってきてくれ」と頼んでいる。
●2011年の10月にはヨセミテ国立公園で山頂まで雷雨の中で登っていたハイカーたちがヘリで救助を求めているが、救助隊は悪天候ではヘリを飛ばせないと断っている。ハイカーたちは「そんなにやばい状況だとは思わなかった」と言っていた。
●ヨーロッパのいくつかの国では救助を呼ぶための安い保険があるのだが、それでも誤って救助を呼んで悪質だった場合には「自腹」になることもある。
●ところがアメリカではこのような違反者が罪を追求されるようなケースはほとんどない。
●ロッキー山脈の救助隊の広報を担当している人物によれば、「無理して救助を呼ばないで深刻なトラブルに巻き込まれるよりは、呼んでもらうほうがいいですよ」と言っている。
●たとえそれが「お坊ちゃんたちの110番信号」であったとしても、PLBはたしかに多くの人命を救ってきた面はある。
●たとえばテクノロジーの発展は、それに伴う問題を自ら解消することがある。PLBの場合も単なる信号だけではなく、それにメール機能もつけることができたからだ。
●ところが長年山登りなどに携わっている私としては、今後の展開に悲観的だ。
●問題の原因はこのような機器そのものにあるわけではなく、そのような機器が我々の中で「冒険」という概念を根本的に変化させてしまったことにあるからだ。
●ハイカーやスキーヤーやボーダーたちは、ボタンを押すことによってすぐさま安全を求めることができるようになっただけでなく、このような贅沢を「奪うことのできない権利である」と考えてしまっているのだ。
●2010年の1月にあるスキーヤーがグランドタージーのスキ―場でエリアから外れて迷ってしまい、携帯から救助を求めたが低体温症で死んでしまった事故があった。
●もちろん救助隊は命がけてこのスキーヤーを探したのだが発見できず、後に遺族は救助隊に対して5億円近い損害賠償を請求する訴訟を起こしている。
●最近の傾向として問題なのは、自然に親しむ際に最低限のサバイバル・スキルを持たずに楽しもうという人々が増えているということだ。
●とくにそのような人々の多くが、通信機器などのガジェットを自動的に救出してくれるカードであるかのように勘違いしているパターンが見受けられる。
●つまりこのような人々の多くは、自分たちのスキルのなさのおかげで救助を受けることになる。
●そしてさらに、彼らを助けるために多くの救助隊員が、ケガをしたり命を落としたりするケースが増えるのだ。
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通信関連のガジェットは、命を助けてくれるという一面はあるにせよ、一番の問題はアホな入門者を増やしてしまうことにあるという点は面白い指摘かと。
ちなみにテクノロジーと「世界観」の関係についてはこちらの本の第二章を読めば、手に取るようにわかります!