米中政府高官たちは互いをどう見ている? |
やはりこの記事は再録するだけの価値があると思ったので、以下の通りもう一度。
以下は米中関係に関するものなのですが、両国の政府高官たちが互いをどのように見ているのかという「世界観」に関するものです。
この記事はもっと注目されてもいいと思うんですが。
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中国のリーダーたちはアメリカの国力に「衰え」を感じている?
●ある中国の分析家によれば、最近中国政府の高官たちは、米中の競争を段々と「ゼロサム・ゲーム」の関係として見るようになっているらしい。
●しかもアメリカの経済と国内体制がうまくいかなくなれば、長期的には中国に有利になると考えているという。
●中国政府のエリートたちはアメリカを衰退しつつあると見ているが、同時にアメリカは中国が経済・軍事面で世界一の立場に発展しないように、陰に陽に色々と仕掛けてきていると見ているという。
●このレポートはブルッキングス研究所で発表された"Addressing U.S.-China Strategic Distrust"というものであり、北京大学国際関係学院・院長の王緝思(Wang Jisi)とブルッキングスの中国研究所所長であるケネス・リーバーサル(Kenneth G. Lieberthal)の共著である。
●中国政府の公式なアドバイザーである王氏は中国の対米政策を、そしてリーバーサル氏はクリントン政権で国家安全保障アドバイザーをつとめており、いずれも両政府を内部から覗いた経験あり。
●この報告書の中で、王氏は「中国政府の高官たちは、アメリカをもう圧倒的な羨望すべき/信頼できる国だとは見ていない」と書いている。
●それとは対照的に、中国は経済・軍事面で大きな自信をつけつつあり、とくにそのような傾向は二〇〇三年のイラク戦争以降から顕著に見られるようになったという。
●この当時のアメリカと中国のGDPの差は8倍もあったが、今日ではその差が3倍にまで縮まっているからだ。
●この王氏の発言は驚きだ。なぜなら彼は米中両国で大きな影響力を持っているからであり、しかも彼自身は冷静な分析をすることで知られた人物だからだ。
●この報告書を書いた両者とも共通して述べているのが、米中両国の間にある、表面下に横たわった強い不信感である。
●王氏によれば、北京政府の高官たちは、世界政治における自分たちの時代がいよいよ到来したと感じているという。そして鄧小平が主張した「目立たないように行動する」という政策を使う時期はもう過ぎ去ったと感じているというのだ。
●王氏によれば、近年のグローバル経済から影響を受けてきたアメリカの例を踏まえ、「中国政府高官たちは、中国経済がアメリカ経済にとって変わって世界最大になるのはあと何年ー―何十年ではありませんー―かかるかという時間の問題だと感じている」とのこと。
●王氏はアメリカのもつ最先端の兵器については何も触れていないが、中国のリーダーたちが取り組んできた宇宙開発や兵器開発の目標は達成できてきたとしている。
●王氏は、「アメリカはこの中国側の動きに対抗するために、領海や国境付近で偵察機や調査船による偵察を行っており、これが特に人民解放軍を怒らせているという。
●また、アメリカのNPOによる人権促進活動も「西洋化」の策略だと見ており、これは共産党政府を弱体化させる工作だと見ているという。
●逆にリーバーサル氏はアメリカの諜報機関から得た中国内部の情報を引用しつつ、北京政府の高官たちは米中関係を「ゼロサム的なアプローチ」から見ていることを指摘している。
●この報告書の内容は、米政府の関係者によれば「かなり中国政府の本音を教えてくれている」と評判になっている。
●米国側は「最近の中国からのサイバー攻撃は、単なるハッカーや犯罪というだけでなく、米国政府内部の情報を取りたいという北京政府の意向を受けたものである」と感じているという。
●両著者たちは共著の結論部分で、「米中両国の不信感のレベルはかなり高まっており、衝突が表面化する危険が出てきていると両者が考え始めている」と記している。
●これはつまり両国が互いを抑止するためにますます軍備を増強するようになるということを示しており、「最悪の場合は(互いに憎しみ合っていないにも関わらず)武力衝突にまで行くシナリオも考えられる」とリーバーサル氏はインタビューで答えている。
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これを「米中冷戦」という構造と見ることもできますが、私はどちらかと言えば「ブロック化」として見ております。
しかし中国側はアメリカを本当に追い落としたいわけですね。
あまり大きな声では言えませんが、この背後には人種的な問題があるというのも間違いありません。