エジプトの成功の確率は? |
さて、エジプトではとうとうムバラク大統領が政権を追われ、カイロから逃走するという地政学的激震に発展する可能性のある事態が発生したという大ニュースが飛び込んで参りましたが、それにやや関連したコラムニストの意見記事の要約をまた。
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40%の国
byデービッド・ブルックス
●1990年代に世界中で民主化革命の嵐が吹き荒れていた時、このプロセスの中で一番難しいと思われていたのは、独裁者を取り除くという部分であり、これさえ実現できれば民主化への道は開かれると思われていた。
●ところが2002年のトマス・キャロザースの記念碑的な論文では、独裁者を排除しても必ずしもそれが民主化につながるわけではないことが論証されている。
●なぜならこの頃に独裁者を排除した国々の多くは、民主化というよりも曖昧な政体へと変化したからだ。
●それ以降の多くの研究でわかっているのは、民主化に成功するのは比較的強力な統治システムを持っていた国であるということだ。
●そのため、学者の中にはいくつかの独立した党組織をもつ制度機関や、横のつながりのある社会システムを持つことのほうが民主化を成功させるためには重要だと論じている人もいる。
●よって私はエジプトの社会制度などについて国連や世銀がどういう報告をまとめているのかを見てみたのだが、これらではエジプトの民衆が非効率で硬直化した官僚組織に社会改革のチャンスを阻まれていることが浮かび上がってくる。
●たとえばエジプトの就学率は高いのだが、教育システムの質そのものは世界でも最低レベルである。
●政府機関などの効率や法の支配については中程度であり、一番の問題は責任の所在が明確でないことや、プロセスの透明性が全くないことだ。この点において、エジプト政府の機関は世界最低レベルである。
●経済面での改革では改善も見られており、以前よりも起業しやすくなったのは事実だ。
●ところが腐敗は世界の平均と同じくらいのレベルで頻発しており、国有化されたビジネスは政権にとって旨味のある腐敗の温床なのだ。
●たとえば映画を配給しているのは、政権の一族の経営によるたった2社だけなのだ。
●エジプトの国際競争力は世界でも平凡なレベルにあり、短期的な決定は得意だが、長期的なプロジェクトの計画については不得意であることがわかっている。
●たとえば頭脳流出の問題は世界でも最も深刻だ。
●社会的にも、例えば非政府組織の数は他国と比べても少なく、存在してても政府にかなり制限を受けているものや、直接的に介入を受けているものもばかりだ。
●一番問題なのはムスリム同胞団を除いて、野党というものが存在していない点にある。これについては海外の国々も支援すべきだ。
●それでもエジプトはサダム政権下のイラクやハマス政権前のガザ地区の状態よりマシだ。
●エジプトは世界のランキングでは40%の位置にあるわけで、平均以下の国なのだ。一週間前までの彼らは、世界でも自分たちの国の将来に最も悲観的な意見を持っていたという調査もある。
●ところがこの状況は変わりつつある。社会・政治制度などはあまり強くなく、劇的な民主化は難しいかも知れないが、それでもなんとかなりそうな社会基盤を彼らは持っているのだ。
●そしてなんとかうまく統治が成功すれば、彼らが世界の民主国会の仲間入りを果たすチャンスはあるのだ。