戦略についてのある論文:その13 |
このような尊重すべき確率というのは、成功した後では大きく見えるし、失敗した後だとかなり少ないように見える。
しかしその確率があらかじめ計算できるものであったとしても、三〇パーセントの確率の中で勝った戦略家と、四〇パーセントの確率があったのに負けた戦略家についてはどのように考えればよいのだろうか?われわれは前者を「賢い戦略家」、後者を「愚かな戦略家」と呼べばよいのだろうか?それとも両方とも「愚か」、もしくは「正しい」のだろうか?われわれは一体どのような基準を使って、ある成功しなかった戦略の選択を「それでも合理的であった」と判断したり、「ひどい計算間違いだ」としたり、「天才的だ」としたり、「単なる幸運だ」と判断すればよいのだろうか?
軍事に実際に関わる人間や、それを分析する人間の間では、「どれくらいのリスクまでが許容範囲なのか」という完全に根本的な疑問について、全員が納得できるような答えは何も出されていないのだ。