ゲイツ長官と米国防省の予算 |
さて、金融危機に端を発する財政危機に苦しむアメリカですが、「オフショア・バランシング」を加速させる一つの指標となるのがペンタゴンの予算。
これについてNYタイムズが数日前に書いていたので、いつものようにポイントフォームで。
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May 16, 2010
Mr. Gates and the Pentagon Budget
●9/11連続テロ事件以降の米国防省の予算は乱発状態だ。司令官たちや産業界のロビーイストたちの要求は、それがどんなものでもーー兵器開発費やプログラムがいくらかかろうとも、それに冷戦後の世界ではもう必要のないようなものでも――そのほとんどが議会で承認されてきた。
●過去十年間で年間の国防費はそれまでのほぼ二倍にあたる5490億ドルにまで増えたのであり、これには別予算でとなるイラクやアフガニスタンの戦費である1590億ドルは含まれていないのだ。
●米国防省長官のロバート・ゲイツは、さすがにこれを変えなければならないとわかっており、最近の二つのスピーチでは「このような国防費の垂れ流し状態はもう続けられないし、節約状態は少なくともしばらくは続けなければならない」と言っている。た、彼は現在のすべてのプログラムや、これからの予算の要求には「手厳しい」検査がなされると述べている。
●しかしゲイツ氏は予算削減を言っているわけではない。彼はインフレを除いた2〜3%のGDPの成長を、2000年から2009年の4%の成長率と比較しているだけなのだ。つまりアメリカの金融危機を差し引いても、国防省の予算はかなり大きいままだ。
●オバマ政権はすでにいくつかの大きなプログラムを削除(たとえばロビーイストや議会の反発を受けながらもF-22戦闘機をカット)している。ところが無人機のような新しい兵器への開発投資は行われており、「四年ごとの国防見直し」(QDR)ではまだあまり厳しい決断はなされていないとはいえ、「将来における妥協」がなされなければならないと論じている。
●ゲイツ氏はあまりにも肥大しすぎた民間・軍の官僚(増えすぎた提督や将軍など)の数を縮小したいと言っており、これによって100億ドルから150億ドル節約できるとしている。また、兵器への支出をさらに行いたいとしており、たしかにこの対象となるシステムの名前を挙げたことは彼の手柄といえる。
●彼はメリーランド州の海軍関係の展示会で、「なぜ他国の海軍は空母を1隻以上もっていないのに、米海軍には1隻110億ドルもする空母をこの先30年間にわたって11隻も必要なのだろう?」と言っている。
●また彼は海兵隊の(対艦システムの進化によって脆弱になった)強襲揚陸船EFVや、1隻70億ドルする海軍の弾頭ミサイル潜水艦の必要性について疑問を呈している。
●もちろんわれわれは議会や弁護士・ロビーイストたちが怒っていることは知っている。しかしここで注目しなければならないのは、ゲーツ氏はこれらのうちのどのシステムを、どれだけ削減するのかを一言も言っていないということだ。
●おそらくもっとも政治的に難しい問題は、軍隊における健康保険にかかるコストであり、これはこの十年で190億ドルから500億ドルにまで跳ね上がっているのだ。
●もちろん現役の軍関係者たちやその家族たちは健康保険をはらわなくてもよいのは分かる。しかし退役軍人たちが一家族単位で払う460ドルという価格は、過去十五年間そのままなのだ。
●ゲイツ氏は「多くの退役軍人たちは、年金の他に現役の時と同じ給料をもらい、しかも保険の費用は雇い主が払っている」と言っている。もちろんわれわれの軍人たちは一流の健康保険を得るだけの資格はあるが、しかし現在はみんなで一緒に負担を分担しなければならない時なのだ。
●もしゲイツ氏が本気で他の予算削減に取り組み始めたとしても、予算の専門家たちによれば、兵士にかかるコスト(給料、健康保険、住居費、年金など)の上昇は新しい兵器の開発をカットしたとしても支えきれないという。
●イラクとアフガニスタンでの戦争が終結すれば、ワシントン政府はおそらく海軍と空軍の兵力の削減を考えなければならなくなるはずだ。
●ゲイツ氏はワシントンのベテランであり、彼はこの戦いに正面から挑むことになるはずだ。それでも下院の軍事小委員会は、先週彼にひとつのことを思い起こさせることになった。なぜならこの委員会では2011年度の防衛概算要求にミサイル防衛システムのための4億ドルの追加予算を要求したからだ。
●しかもこの予算にはゲーツ氏が去年キャンセルしたプログラムであり、専門家が失敗するという見解で一致している、5千万ドルの空中レーザーが含まれているのだ。
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実質的にあまり減らしていないんじゃないの?という軽いツッコミです。