アフガニスタンを通るパイプライン |
今日は東京に「出張」してきまして、ネオコンの知性派の代表であるロバート・ケーガンの講演を聞きに行ってきました。
会場にはけっこう知り合いがおりまして、その方々とお会いできたのもけっこううれしかったです。私もいつものように質問をしたのですが、その内容などについては明日ここに書きます。
さて、今日はかなり以前の地政学絡みの意見記事の紹介を。
著者はギャフニーなんかのアドバイザーをやったことのある、カスピ海の利権がらみの人です。
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A pipeline to prosperity in Afghanistan
Rob Sobhani
Published: January 11 2010 12:39 | Last updated: January 11 2010 12:39
●去年の12月のことだが、中国―トルクメニスタン間に1833キロの長さの天然ガスのパイプラインの竣工式が行われた。
●このパイプラインはトルクメニスタンのスマンディープ・ガス田から中国中央部を通っている。
●これはトルクメニスタンにとっては地政学的クーデターだ。なぜならそれはロシアの支配するアシュカバッドを通らずに中央アジアから出てくるルートを通るからだ。
●「カスピ海からロシアを通らずに出てくるルートをいくつも確保する」というのはバクー・トビリシ・ジェイハン石油パイプラインの基本理念でもあり、モスクワの支配状態からアゼルバイジャンを解放することが狙われている。
●オバマ大統領はアフガニスタンの政策で、第二のトルクメニスタンのガス・パイプラインを建設することを盛り込むことができる。タピ・パイプラインは76億ドルの1680キロの長さをほこるものであり、トルクメニスタンからアフガニスタンを通ってパキスタンに至り、それが最後にはインドまで届くというものだ。
●このような大規模な計画には、その国に雇用を生み出し、長期的にわたって通行料をとることができるために国内の安定をうながす作用があるので、アフガニスタンの生活水準を上げる効果がある。それにうまくいけば、アフガニスタンの戦闘員たちも巻き込んで同じ目的のために働くことができるかもしれないのだ。
●もちろんそれに批判的な人々の目からみれば、このパイプライン計画は「地獄から地獄へと続いている」ということになる。
●ところがトルクメニスタン―中国間のものや、その他のパイプラインは、石油/ガスのパイプラインが、それに関わる国々にとって地政学的資産になることを示している。
●パイプラインに参加する利害関係者をなるべく多くつくることで、この地域におおきな安定を及ぼす可能性があるのだ。その証拠に、アフガニスタン横断パイプラインは南アジアのエネルギー不足の経済を、中央アジアのエネルギーの豊富な地域につなげる役割を果たすかもしれないのだ。
●このパイプラインはトルクメニスタンのダウレタバッド・ガス田からアフガニスタンに流れることになる。そこからヘラットからカンダハルへ至る高速道路の脇を通り、それからクエッタからパキスタンのムルタンへ流れるのだ。最終目的地はインドのファジルカで、これはパキスタンとインドの間の国境に近い。
●このパイプラインはすぐにでも建設を開始すれば、2013年に操業を開始できる。
●このプロジェクトが成功するかどうかはタリバンが多数派である他のパシュトゥン全員に圧力をかけてパイプラインの建設を守ることができるか、という点にかかっている。
●この計画は意外と古く、1998年(ユノカルが率いていたコンソーシアムが成立してタリバンと計画に合意し、クリントン政権に代表を送って話し合った)の時点までさかのぼる。しかしアフガニスタンの不安定な状態はコンソーシアムの中の主要企業の撤退につながった。
●それから12年がたったが、ガスの必要性はますます高まるばかりであり、これが参加者全員に及ぼす利益も高まって来ている。
●このパイプラインの実現にはリーダーシップが必要である。オバマ大統領にはそれをリードするチャンスがあるのであり、これは軍事的にパイプラインをまもり、コンソーシアムに対してファイナンスをして、外交的にすべての利害関係者(これにはタリバンや部族の長などを含む)を集めるのだ。
●もちろんこの計画にはリスクがあるが、致命的なものではなく、この地域の計画にはつきものである。バクー・トビリシ・ジェイハン石油パイプラインはこういう意味で見習うところの多い例だ。これと同じように、パイプラインは地下に埋めれば大丈夫だ。そして同じように、ワシントン政府はファイナンスの面で主導することができるのだ。これによってアメリカの会社に仕事が入るし、アメリカ国内にも雇用が創出できる。
●バクー・トビリシ・ジェイハン石油パイプラインが成功したのは、アメリカのリーダーシップと外交によるところが大きい。ビル・クリントン大統領は個人的にアゼルバイジャンやトルコ、そしてグルジアのリーダーたちに働きかけたのであり、ゴア副大統領もこのプロジェクトの行方を監視していた。
●だからオバマ大統領もトルクメニスタン、アフガニスタン、インド、パキスタンのリーダーたちをホワイトハウスに呼び、この計画を成し遂げる熱意を示さなければならないのだ。
●アメリカがアフガニスタン横断パイプラインの建設を主導することは、地政学面や戦略面、そして経済面でも利益が大きい。たとえばパイプラインはアフガニスタンを支配する人間(それが誰であろうとも)にとって国家の収入源になるし、将来のカブールの政権も利益を受けることができるのであり、また長期的な利害関係者もつくることになる。
●たとえばパキスタンとインドはガスの流れを止めないように考えはじめるためにアフガニスタンについて争うことを止めるのだ。
●その他にも、これはアフガニスタンの人々に対して「西洋諸国が国家建設の長期的パートナーである」ということを知らせることにもなる。これは彼らの心をつかむという心理的な面でのインパクトは極めて大きい。なぜならアフガニスタンには76億ドルのうちのほぼ半額が投資されることになるはずだからだ。
●アフガニスタンでの戦争は、いまやオバマ大統領の戦争になった。彼はアフガニスタンを横断するパイプラインを戦略に付け加えることによって戦争に勝つチャンスを増やすことができるかもしれない。
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うーん、世界は「show by ショーバイ」という感じですね(笑
これは経済的な結びつきから地域の安定を目指すという、ある意味でEUモデルに近いような部分もありますが、それにしても通るところが火種ばっかり(苦笑