大佐の体験:その4 |
さて、今日もまた大佐の話のつづきを。
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●ダグラス・マクレガーという人物は”Breaking the Phalanx” という本を書いた陸軍の軍人で、この当時は現役の大佐だった。
●この時の彼の意見はものすごく楽観的で、「クウェートにおいてある機甲部隊を使えば、たった36時間でバグダッドに到着できる」というものだった。
●ところがこちらは空軍のしかもスペースパワーの担当なので、イラクとクウェートの間には何十カ所も橋があることなど、宇宙から撮影された映像を見ており、その提言がむちゃくちゃであることをわかっていた。
(ここでアメリカ人の若い先生が、「それに車両のためのガソリンとかどうするんだよなぁ」と間の手を入れて一同爆笑)
●そこで私は戦略家がする典型的な質問を彼にした。つまり、「それでどうするんだ?」(So What?)である。
●どうやらマクレガー自身は戦車がバグダッドに入って来たら、市民が花束を投げかけて、道行く女の子たちがキスしてくれるものと勘違いしているらしい。
●ところが後にマクレガーがCNNに軍事解説者として出演しており、解説していたのを見て驚いた。なんと彼は「私はイラク戦争を支持したことはない」としゃあしゃあとぬかしていたのだ!
●私は彼が将軍にアドバイスを与えるのを目の前で見ていたのにこのザマである。
●彼が戦争を始めた時のアドバイスと、それを終了させる時のアドバイスは全く違うのだ。
●ここで話を戻すが、とにかくこのような「どこに部隊を配置するのか」とか「どうするのか」などに関する議論というのは、すべてオペレーショナル・レベルで行われているのだ。
●つまりオペレーショナル・レベルとは陸・海・空の各軍(コンポーネンツ)のそれぞれの動きや配置などを決めるレベルのことだ。
●そして戦略レベルというのは、大体においてそれらの軍を統括するレベルで行われるのであり、具体的には将軍が大統領や首相などに進言するところだ。
●ところがここでイギリスの空軍士官が2001年の10月の時点であることに気がついた。それは「軍事的に勝利した後にはどうするの?」という疑問だった。
●これはつまり、軍隊が破壊したあとにそれをどうやって直すか、という切実な問題だったのだ。
●そこで彼らは国務省などの組織・団体を含む、joint inter-agency task force をワシントンとロンドンに設立することを提案したわけで、これによって戦後の復興事業について議論をすることになった。
●これは開始されたのだが、すぐに挫折した。なぜならそれぞれの組織・団体が官僚的な主張をはじめたからだ。
●そこで結局は米軍がリードして復興事業をやることになった。そこで出てきたのがハリバートンをはじめとする民間軍事会社であり、彼らがインフラ事業などを受け持つようになったのだ。
●ただし彼らのような民間の会社に米軍が警備をしたりすると不公平になるので、ブラック・ウォーターのような警備会社が登場したのだ。
●そしてここから法律家たちが大量に関与してくることになり、米軍はあまり効果的な活動を行えなくなってしまったのだ。
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ここまで書いて時間切れです。続きはまた明日。