大佐の体験:その2 |
ここ数日で私の住んでいるところの周辺の街路樹が一斉に落葉をはじめまして、歩道は足の踏み場もないくらい黄色い落ち葉で埋め尽くされております。
さて、大佐の話のつづきを。
====
●「火星からきた男」と「金星からきた女」のように、とにかく完全に相手の意図はわからない。
●とにかくこのようにして達成するのが不可能なものが存在するのだが、これをなるべく可能にしようとして我々はさらに階層を作ったり人を投入しようとするのだ。
●たとえばアライド・フォース作戦が終了した78日後には、1400人の飛行機乗りが空軍が行う「エア・タスキング・オーダー」にたずさわっていた。
●ところが私がターゲットを選ぶ作業にあたっていた「ストラテジー・セル」(strategy cell)にはたった十二人しかおらず、ここで上の二つの階層レベル(将軍/大統領)にアドバイスなどを与えていた。
●しかし問題なのは、その上のレベルの人間はわれわれエアマンが受けてきたような訓練を全く受けていないわけで(クラーク将軍は陸軍出身)、作戦に対する理解のレベルも低い。
●それでも彼らが政治を動かすわけなので、彼らに従うしかない。
●アライド・フォース作戦でひとつテクノロジー面で新しいことが導入された。ビデオ会議というやつだ。
●作戦の間、われわれは毎日朝九時に政権のトップレベルと会議を行ったわけだが、それを行った部屋は長方形の長いテーブルがあって、その向こう側にモニターがあり、アメリカ側にも長い長方形のテーブルがあって、そこに大統領や国防長官、それに安全保障アドバイザーなどが映っていた。
●ここでいつも問題が発生した。ウェスリー・クラーク将軍のそばにはすべての部隊情報などを表示したモニターがところ狭しと並べられており、会議の際にこれを見ながら下の細かい動きにまで一々注文をつけてくるのだ。
●しかし彼が「このヘリをここに移動しろ」と指示しても、それを行うには我々が計画を無理矢理変えて、それから約1週間くらいの時間がかかるのだ。
●「いや、それはちょっと・・・」と言っても、彼は「やれ、いますぐやれ」と言ってゆずらない。
●つまりこれは新しいテクノロジーによって、将軍が下の細かい部隊の動きまでマイクロ・マネージできるようになった、ということなのだ。
●一番困ったのは、彼が空爆のターゲットを選定している我々のところまできて、明らかに航空作戦については知らないのに、我々に色々と口出しをしてくることだった。
●この作戦当時、NATOには19カ国の空軍が参加していたのだが、参加国の中でも「攻撃目標」について統一した定義はなかった。これは現在でも問題として残っている。
●そして攻撃目標を選ぶ時には「副次的破壊」などが発生する可能性があるために、国際法に詳しい法律家が絡んでくることがある。
●ところがここでまた問題なのは、当たり前だが、法律家が空軍のターゲット策定などについて無知であることだ。
●こうなるとまた「摩擦」が発生してくるのだ。
●これを克服するためにどうすればいいのかというと、このシステムを逆に利用してしまえばいいのだ。
●たとえば私がユニットレベル(戦術レベル)の作戦を練っていて、絶対に攻撃したい目標があったとした場合は、攻撃できるようなアドバイスを自分が作って戦術アドバイスとして上に申請するのだ。
●つまり、自分が受けたい命令を受けられるように、意図的にアドバイスを作るのだ。具体的には「こうしたほうが作戦がスムーズに行きます」と進言するということだ。
●現在のイラクでもアフガニスタンでも実はまったくこれと同じことが起こっていて、部下は上司に受けたい命令が下されるように、色々と工作をしているのだ。
●ここで興味深いことが起こる。どの階層でも、部下が上司に受けたい命令をつくるために必死に働いている、という姿だ。
●これはまさに「官僚的な問題」なのだ。
====
ここまで書いて時間切れです。続きはまた明日。