ランチミーティングで発表 |
さて、今日のランチミーティングの様子を。
すでにご存知の通り、今週は私の発表の番でして、ワイリーの戦略理論を紹介することになりました。
具体的には『戦略論の原点』の第三章の「順次戦略」と「累積戦略」の違いについて説明したわけですが、これを元にして東西の戦略文化の違いのようなものを簡単に論じてみました。
もともと持ち時間は10分程度なので、あまり深く説明はできないことは承知だったのですが、こういう場合には理論そのものを説明するよりも、やはり具体的な例を使うほうが効果的。
ということで私はワイリーが使っている太平洋戦争におけるアメリカ側の洋上艦隊の進攻(順次戦略)と潜水艦戦(累積戦略)の例の他に、もう一つの例として、その場にいた若いアメリカ人の先生(W先生)を殺す場合に二つのやり方(?)がある、という感じで説明してみました。
一つ目のやり方は「順次戦略」であり、どういうものかというと、まず学校のオフィスに連絡して、このW先生の住所をつきとめます。
その次に先生の家まで行き、ドアをノックし、出てきたところを銃やナイフなどで殺す、という単純なもの。
この方法の特徴としては、そのプロセスがわかりやすく、順番を追って目に見えるものであり、しかも短期決戦型です。
ところがその反対のやり方があります。これが累積戦略です。
累積戦略の場合はもっとスマートで、具体的どうやるのかというと、まずこのW先生と仲良くなります。
で、仲良くなって毎日学校帰りに一緒に近所のパブに飲みに行くようにします。しかもこの時にはかならず彼にビールをおごるわけです。
しかもこのビールをとりに行っているスキにビールに少量の毒をまぜたりするとなお効果的(笑
そして毎日仲良く飲みにいき、しかも大量に飲ませるようにすると、ある日彼が原因不明の病気になったり、もしくは肝臓を壊して入院し、最終的には死んでしまいます。
これが累積戦略ですね。
ここで問題なのは、このやり方だとW先生がどの時点で病気になって死ぬのかがあまり予測つかない、ということ。つまりプロセスの進行状況が「見えにくい」わけです。
しかも毒や酒による体へのダメージは、一つ一つの少ない効果によってジワジワと効果を発揮するもので、しかもどのタイミングで決定的な効果が出るのかわからないために、どちらかというと長期戦になる場合が多い、ということですな。
ところがこの戦略を行う点で有利なのは、W先生やその周囲にそれほど感情的に大きなダメージを与えない、ということ。
その逆に順次戦略を使っていきなり殺したら、誰がみても「あいつが殺した!」となるわけですが、累積戦略を使った場合はむしろ自分が殺そうとしていることを知られないわけですから、W先生やその家族に「一緒に飲みに行ってくれてありがとう」と感謝されたりする場合もあるわけです(笑
私はこのような例を使って、(ビクター・デービス・ハンソンの説明に見られるような)西洋の戦略には順次戦略系のものが多く、逆に東洋の戦略は累積戦略系のものが多い、と説明しました。
このようなことをだいたい10分ほどで簡単にすませたのですが、ここで意外な人物から反論がありました。
コースメイトのイギリスとギリシャの空軍のオフィサーたちです。
つづく