テクノロジー:スピード vs. コスト |
さて、地政学の理論で最近気になっていることを一つ。
地政学の祖であるマッキンダーは、テクノロジーの変化が世界の歴史(戦略史)に大きな影響を与えたということを、地政学に関する主な三つの著作(一九〇四年、一九一九年、一九四三年)の中で展開しており、これを理論の柱として論じたわけです。
そして最近の私が気になっているのは、このテクノロジーの部分であるのは本ブログをご覧のみなさんもすでにご存知の通りですが、特に気になっているのは、このマッキンダーのテクノロジーの概念のところで、
①武器
②運搬手段
という二つの側面がある、という点です(この二つの側面については『進化する地政学』のスローンの論文を参照)。
このテクノロジーの二つの要素なんですが、これは両方ともいわゆる「〜パワー」を支えるものでして、たとえばランドパワーの「前コロンブス時代」では、「馬」という武器(騎馬兵)と物資の運搬手段ということになります。
そしてシーパワーの「コロンブス時代」では、「船」という武器(戦艦/戦列艦)と物資の運送手段(輸送船/貿易船)ということになるわけですが、これが二十世紀になって飛行機やミサイル(エアパワー)の時代になったかといえば、必ずしもそういうわけではなく、国家として繁栄しているのはなぜからシーパワー系の国々。
これはつまり「ランドパワー/エアパワーは否定されたじゃないか」ということにもなりそうなんですが、ここで重要なのはこの「パワー」というテクノロジーによって構成されているものを、二つの側面から見ることが大切なのではないか、ということです。
つまり今まで我々は「〜パワー」というものを、「武器」という、いわば「スピード」が全てのような側面だけで見てきたのではないか、ということ。
ところが「〜パワー」にはもう一つの側面があります。それは「運搬手段」という面であり、ここでは「スピード」よりも「コスト」という要素がクローズアップされてくるわけです。
たとえば91年の湾岸戦争は、確かに前例のない「エアパワーによる勝利」と宣伝されましたし、空中輸送機などを使って「武器」が素早く戦場まで運ばれたのは間違いないのですが、問題はこの時に輸送された物資の全体の実に9割以上が海上輸送によって運ばれたという事実です(詳しくは『山・動く―湾岸戦争に学ぶ経営戦略: WG パゴニス』)
しかも現在の米軍のアフガニスタンへの軍の展開を見てもお分かりのとおり、アフガニスタン内の道路状況の悪さが兵站の非効率さにつながっており、そのおかげで苦戦を強いられているという点も否定できません。
そうなると、今度は「スピード」よりも「コスト」という要素が大事になってくるわけです。
時間がないので続きはまたあとで。