ジレンマに陥る「帝国」のアメリカ |
そういえば大学院時代のインド系のアメリカ人のフラットメートから連絡がありまして、同じフラットに住んでいた中国人の女の子と結婚すると言ってきました。これでインド・中国・アメリカというものすごいコネクションがひとつ誕生します(笑
まさかこの二人が結婚するとは思わなかったのですが、それにしても驚きです。同じ留学組の中から結婚するやつらがでるとは。
さて、アメリカではアフガニスタンの今後の戦略についての会合が繰り返し行われておりますが、今日はちょっとそれに関したネタを。
ローバート・カプランと言えば日本では注目は少ないものの、本ブログや私の本では繰り返し紹介してきたアトランティック誌の安全保障分野の特派員記者です。
彼は地政学関連でもものすごく良い記事を書くのですが(この間の奴はインド洋の地政学でしたが)、今回はアフガニスタンの紛争をちょっと大きな視点で見ております。
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Beijing’s Afghan Gamble
By ROBERT D. KAPLAN
Published: October 6, 2009
●ここアフガニスタンのカブールのすぐ南にあるロガール省では、アジアの地政学の未来の姿が見えてきた。
●それは米軍が中国の公社が開発しているアイナク銅山に安全を提供しているからだ。
●NATO諸国はなるべくアフガニスタンの紛争にはかかわり合いたくないと考えているが、その間に中国は世界で最も危険なアフガニスタンに眠る銅、鉄、金、ウラン、宝石などを開発しようと狙っている。
●アフガニスタンでは米中の思惑は一致する。なぜなら中国がアフガニスタンで鉱山開発をすることにより、アフガニスタンの人々に仕事を与えることになり、これがアフガン政府を税収の増益によって支えることになるからだ。
●しかもアフガニスタンがある程度安定してくれば、インド洋などから道やパイプラインなどを通じて資源を引っ張ってくることができるのだ。
●よってアメリカがタリバンを打ち負かしてくれれば、中国にとっても利益になる。
●中国はアメリカの敵になる必要がないということを考えれば、これは不思議なことではない。アフガニスタンの安定化は米中関係を進展させることになる。
●しかし問題なのは、アメリカが血の代償を支払っている間に、中国がその利益にタダ乗りするという点だ。
●アメリカは出口戦略を考えている最中だが、中国側の狙いはアフガニスタンに居座って利益を挙げることを考えているのだ。
●もしアメリカが主戦場をアフガニスタンからパキスタンとの国境付近に移して反テロ戦略だけに集中したら、カブールやその他の地域ではタリバンが支配することになり、中国もここにいられなくなる。
●また、アフガン政府を安定化してから撤退しないとインドにとっても大問題だ。裏庭に広大なイスラム圏が出来るからだ。そうなるとインドは特に海軍力の面で中国に対抗できなくなる。
●結果として、中国はアメリカがアフガニスタンでどうなろうとも、必ず利益を得ることになる。
●しかもアメリカがさらに増派しようとすれば、利益を得ることは間違いない。
●同じことはロシアにも言える。ロシアも自国の南側でイスラム勢力に敏感になっており、アメリカが上手くやってくれればありがたいからだ(ただしアメリカがアフガンから撤退したら自分たちの二の舞を踏んだと嬉しがるとは思うが)。
●また、結果として我々がアフガニスタンで成功したとしても、結局利益を得るのはアメリカ以外の国である。
●その利益を得るのは、アジアの大国である中国、インド、ロシアなのであり、地理的にアフガニスタンに近いためにここが安定すれば言うことはない。
●「アメリカは帝国ではない」という人は多いが、我々の行動は結果的にローマや19世紀のイギリスとそっくりだ。つまり世界の片隅まで行って復讐をしているのであり、反乱の火の手を沈め、文明的な秩序を回復しようとしているのだ。
●その間に他の大国は、忍耐強く待ち、我々が提供する公共サービスにタダ乗りをしている。
●帝国が衰退するプロセスというのはまさにこのようなものであり、帝国が苦労していることに乗じて他の大国は有利に立とうとするのだ。
●もちろんアメリカがアフガニスタンから撤退すれば、軍隊の士気が下がり、同盟国に不信感を与えることになり、これのほうがかえってアメリカの衰退につながるということも言えるはずだ。
●だからこそ我々はアフガニスタンに増派するしかないし、戦い続けるしかない。
●アメリカがいくら反暴動にうまくなっても、結果的には海軍や空軍を使って遠い距離から海外に介入(=オフショア・バランシング)するほうが、我々の立場を簡単に維持できることになりそうだ。
●アフガニスタンに基地を作っておせっかいを焼き、イスラム同士の紛争に巻き込まれ、中国やその他の国々の戦略的野望をわざわざ助けるようなことしているが、これはアメリカが一番やってはいけないことである。
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バルカンについて書いた本や記事でもそうでしたが、アメリカがユーラシア大陸に介入するジレンマをこの人は一貫して警告してますね。
そして最後はリアリストらしく「オフショア・バランシグ」的な戦略を提唱しております。